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消費電流がマイクロアンペア台と少ないタイマー回路Design Ideas アナログ機能回路

今回はマイクロプロセッサ、液晶ディスプレイ、32.768kHz水晶振動子を各1個とわずかな部品で簡単に構成したカウントダウン・タイマーを紹介する。電池を注意深く選択し、マイクロプロセッサの低電力モードを入念に開発することで消費電力を最小にし、電池寿命を最大にすることができる。

» 2015年10月28日 11時30分 公開

 図1に示したのは、マイクロプロセッサ、液晶ディスプレイ(以下、LCD)、32.768kHz水晶振動子を各1個とわずかな部品で簡単に構成したカウントダウン・タイマーである。入手しやすいCR2032リチウム・ボタン電池で動作する。

 この回路の消費電流の計算値から、想定動作寿命の10年間にわたって電池の交換が不要であることになる。電池を注意深く選択し、マイクロプロセッサの低電力モードを入念に開発することで消費電力を最小にし、電池寿命を最大にすることができる。

図1:消費電流が極めて少ないカウントダウン・タイマー (クリックで拡大)

 ボタン電池は小型かつ扁平なので、ポータブル・システムの小型化に貢献する。しかも、リチウム電池は時間に対してフラットな放電電圧特性を示すため、LCDを直接駆動して、補償回路なしで高コントラストを得ることができる。

 CR2032は、標準値で約200mAhの定格エネルギー容量を持っている。連続動作10年間という設計目標を達成するためには、システムの平均消費電流は2.28μAを超えてはならない。この値は電池のエネルギー容量をシステムの動作寿命で割って計算でき、200mAh/10年/365日/24時間=2.28μAとなる。

 Texas Instrumentsのマイクロプロセッサ「MSP430ファミリ」の所要スタンバイ電流はわずか0.8μAと少ない。これには、水晶発振器、内蔵LCDドライバ、割り込み駆動ウェークアップ・タイマーによる電流が含まれている。3.5桁表示のLCDはVaritronixの「モデルVI-302-DP」で、1μAを消費する。したがって、カウントダウン・タイマーの能動部品の全スタンバイ消費電流は、1.80μAとなる。

 通常のスタンバイ動作時には、マイクロプロセッサの32kHz外部水晶振動子のクロックが内部カウンタを駆動し、毎秒1回、割り込み信号を発生する。割り込み信号はプロセッサをウェークアップして、アクティブになったメイン・ソフトウエア・ループを実行し、BCD(2進化10進)減算によってカウントダウン・レジスタをデクリメントする。

 カウントダウン・レジスタに99(10進)を加え、左端の桁を捨てることにより、右端の1桁目から1を差し引く。例えば、21+99=120で、100の位の1を捨てると20という値が得られる。この方法にはまた、カウントダウン・レジスタの内容をLCDに直接表示し、電流消費の大きい2進法からBCDへの変換は不要というメリットもある。

 最後のステップとして、メインループはカウントダウン・レジスタの内容をゼロと比較し、あらかじめプログラミングしたタイム・インターバルが終了したか否かを判断する。終了していれば、ディスプレイが点滅してタイムアウトを知らせる。メインループはCPUとそのオンチップ高速発振器を起動する。その消費電流は250μAである。

 クロック・サイクルが100以下になるようにソフトウエアを設定すれば、実行時間はCPUのデフォルト・クロック周波数1MHzでは100μsとなるので、消費電流を減らせる。このような短いアクティブ期間では、メインループの消費電流は事実上、無視できる。

 つまり、250μA×(100/1000000)=0.025μAになる。したがって、デジタル・カウントダウン・タイマーの全消費電流は、スタンバイ電流とメインループ電流の和=1.8+0.025=約1.8μAになる。

 このように、平均消費電流が約1.8μAなので、設計目標の2.28μAに容易に適合し、10年を超える連続動作を保証できる。デバイスの消費電流を少なくすれば、この回路を電池と一緒にパッケージして電池交換を不要にし、コストを低減することが可能だ。マイクロプロセッサの機能とI/Oピンの多くは使われないので、別の機能に利用することができる。なお、カウンタのファームウエアのコードサイズは250バイトとコンパクトである。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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