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今さら聞けない5G入門、要件実現に向けた新技術計測器メーカーから見た5G(1)(1/3 ページ)

2020年の一部商用化に向け、2017年より実証実験が日本でも開始される見通しの5G(第5世代移動通信)。通信事業者や大学、計測器メーカーがその要件実現に向けて精力的に研究開発に取り組む。本連載では、計測器メーカーであるローデ・シュワルツの視点から5Gの動向をお届けする。

» 2016年06月16日 11時30分 公開

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5Gの実現に向けて

画像はイメージです

 2020年の一部商用化に向け、2017年より実証実験が日本でも開始される見通しの5G(第5世代移動通信)。超高速通信速度、大容量、低遅延などの要件実現に向け、世界各地で5Gの推進団体が誕生し、研究開発、標準化の議論が活発に進められている。

 5Gは、超高速通信速度、低遅延などの要件を満たすために今までの移動体通信では利用されていなかった新たな周波数帯を広帯域での利用、新しいエアインタフェースの選択、Massive MIMO(大規模MIMO)やビームフォーミングなどの技術利用が検討されている。通信事業者や通信機器メーカー、大学、研究機関、そして、計測器メーカーが要件の実現に向けて精力的に研究開発に取り組んでいる真っただ中だ。

 本連載では、5Gの要件実現に向けた技術動向に焦点を当て、計測器メーカーであるRohde & Schwarz(ローデ・シュワルツ)の視点から5Gの動向をお届けする。第1回となる今回は、「5G」の要件実現に向けた新たな技術を取り上げる。

「LTE」から「5G」

 スマートフォンの利用者数の増加や、動画をはじめとする大容量コンテンツの利用増加、サービスの高度化などにより近年の移動体通信トラフィックは急増し、2020年には2010年と比較してデータ通信量が30倍以上になることが予想されている。また、IoT/M2M機器の普及も見込まれるため、ネットワークに接続する新たな端末の急激な増加が予想されている。こうした状況を解決するために、5Gでは「超高速伝送」「大容量化」「低遅延」「同時接続数の増加」などの要件が盛り込まれている。

 具体的には、10Gビット/秒の通信速度や1ミリ秒以下の低遅延などの要件があげられている。このような要件を実現することで、3.6Gバイトの2時間映画を約3秒でダウンロード可能になる(4Gの場合は約30秒)。また、同時接続数が増えることで災害時など接続しづらい環境を改善できるようになると考えられている。

5Gが実現する新しいサービスやアプリケーション (クリックで拡大) 出典:Rohde & Schwarz

 5Gでは「4G」にはない通信容量や低遅延が可能になることで、自動車、産業機器、IoT分野など、これまでの産業領域とは異なる幅広い分野に渡った複合的な利用が期待され、これまでにない新たなサービスやアプリケーションの誕生が予想されている。

 例えば、自動運転がまさにそうだ。自動運転では、リアルタイムに位置情報や周囲の歩行者、障害物、併走する他車などの周囲の情報を取得することが重要である。こうした多くの情報をリアルタイムに処理し続けるためには、低遅延で信頼性の高い高速伝送がダウンリンクのみでなく、アップリンクにも求められる。5Gを活用することで、リアルタイムに自動運転に必要な情報を処理できるようになるかもしれない。

 実際に、韓国では2018年の冬季オリンピック、日本では2020年の夏季オリンピックでの一部商用化に向けた研究開発が盛んに進められ、標準化に向けた動きだけでなく、要件実現のための新たな技術やサービスの提案が、展示会などを通して行われている。

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