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白物家電でのモーター駆動の新課題と対処技術規制の厳格化と消費者の期待に応えるために(1/3 ページ)

白物家電メーカーは困難な時代に直面しています。メーカーは激しい競争が続く市場において、消費者にとって自社製品をより魅力的なものにする必要があります。同時に、ますます厳しくなる環境ガイドライン(北米における「ENERGY STAR」や欧州連合の「92/75/EC」など)に従う必要もあります。その結果、動作音が小さく動作寿命の長い、高集積度/高エネルギー効率の機器を開発することが強く求められています。本稿では、白物家電の設計におけるモータードライバーICおよびインテリジェントパワーモジュール(IPM)技術の最新動向について説明します。

» 2016年06月28日 11時30分 公開

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現在の状況

 アジア、アフリカ、南米地域における継続的な経済発展に伴う急激な人口増加のために、世界の総エネルギー消費量が増大しており、国際エネルギー機関(IEA)は世界のエネルギー需要が今後2040年までに37%成長すると予測しています。このようなエネルギー需要の増加は、「化石燃料の埋蔵量の減少」「炭素排出の生態系への影響に関するかつてないほどの懸念」「再生可能エネルギー源で非常に大規模な代替エネルギーがなおも不在」といった問題をはらんでいると捉える必要があります。

 世界各国の政府は、エネルギーコストの上昇、特定産油国の政情不安や環境への回復不能な被害の可能性を考慮して、エネルギー消費を抑制するための法的措置を実施しています。米国エネルギー省(DOE)は、2014年9月に冷蔵庫や冷凍庫のエネルギー効率を改善するための基準を設定しており、それによって以降に製造された新モデルの消費電力が20%減少しました。

 今後30年間にわたって、約4.84quad(4.84×1015BTU)の累積エネルギー(現在、米国の家庭で冷蔵製品だけで毎年使用される総エネルギーの3倍に相当)が節約されるものと推定されます。米国政府は現在、ルームエアコンと洗濯機を対象に、さらに厳しい基準を導入することを提案しています。場合によって35%の効率改善を命じるものです。自然エネルギーの資源に乏しく、最近エネルギー発生量が減少した(福島原発災害の余波により)日本では、消費電力を削減するために大変な努力が払われています。広範囲の領域に及ぶ日本のトップランナー制度(白物家電だけでなく、調理器具、給湯器、PC、エアコン、自動販売機、ホームオフィス機器などが対象)は、制度発足以来、メーカーにガイドラインへの準拠を奨励し、準拠しないメーカーは「会社名を公表する」方法をとることによって、エネルギー効率の大幅な改善を達成しました。

消費者からの圧力

 消費者の観点から、白物家電をより魅力的なものにする要因は多数あります。メーカーは競合他社の製品と自社製品を差別化するために、それらを認識しておく必要があります。最も注目すべき点は以下の通りです。

  1. 家庭用品の購入に関して、今日の消費者は賢明です。消費者は、製品の価格が魅力的であっても、ランニングコストが著しく高くなると、購入時の節約分がすぐに帳消しになる可能性があることを認識しています。継続的に高いエネルギー効率を発揮し、家庭の電気代が上がらない製品は、小売価格が若干高くても賢明な消費者に受け入れられます。
  2. 高信頼性で動作することは基本的に当然のことです。製品がこれを提供できない場合は、メーカーのブランドが危機に陥ります。
  3. 消費者が製品を評価するもう1つのポイントは、内容積の大きさです。内容積が大きいデザインの冷蔵庫や洗濯容量が大きい洗濯機は、消費者の関心を引く可能性が高くなります。
  4. メーカーは、優れた使用体験が得られる設計を施した白物家電を製品化するよう圧力を受けています。例えば、冷蔵庫から出るブーンという音はコンプレッサーモーターが原因です。この音は常に消費者のイライラの原因となっているため、可能な限りこのノイズを抑えるよう全力で取り組む必要があります。

克服すべき技術的問題

 白物家電の設計は急激に変化しつつあります。これらの変化は、消費者と前述した法的規制の動向によって拍車が掛かっています。従来のかさばる機器は、より洗練された、スペース効率が高い設計コンセプトに置き換える必要があります。家電製品の小型化がますます重要なセールスポイントになってきているため、基礎を成す構成要素のサイズ、特に使用するモーターは、小型化という設計コンセプトを反映しなければなりません。

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