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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

「Thread」における6LowPANの活用(前編)IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(4)(2/3 ページ)

» 2016年08月16日 11時30分 公開

802.15.4概要

 IEEE802.15.4は、IEEEが発行する物理層とMAC(Media Access Control)層を定義する無線通信標準規格である。低消費電力を主眼に設計されているため、ネットワークに多数の複数年の電池駆動を求めるノードなどに最適な無線通信プロトコルである。

 低消費電力の必要性から、低消費電力とトレードオフとなるBER(Bit Error Ratio)性能は制限されるため、BER性能を補うために小さいパケットサイズが無線空間で用いられ、最大127バイトが物理層でサポートされる。MAC層のペイロードは、セキュリティオプションやアドレス型式によるが、図2に示すように88バイトまで小さくなり得る。

図2:IEEE802.15.4の物理層とMAC層のペイロード (クリックで拡大)

6LoWPAN

 802.15.4を通じて効率良くIPv6パケットを送るため、低消費電力向けに設計された802.15.4の物理層とMAC層をIPv6に適合させる必要がある。つまり、通信パケットの信頼性が高くはなく、ペイロードサイズが小さいという制限への対処が求められる。

 6LoWPANはIPv6 Over Low Power Wireless Personal Networksの略である。802.15.4リンク越しにIPv6パケットを送受信する際に生じる制限に対処するように設計されている。まず、無線空間で送信できる802.15.4の最大のフレームサイズの調停をしなくはならない。

 イーサネット通信では、1つのパケットでIPv6 MTUサイズ(1280バイト)を通信リンクの1フレームとして容易に収めることができる。しかし、802.15.4では、IPv6ネットワーク層と802.15.4リンク層の間に位置するアダプテーション層である6LoWPANが、IPv6パケットを送信時には断片化し、受信時は再構築することでIPv6の通信の問題を解決する。また、6LoWPANは通信のオーバーヘッドを減らすため、圧縮メカニズムを使い、無線通信上で送られるIPv6ヘッダーのサイズを減らす。これは、より少ないデータビットの送信を可能とし、デバイスでのより少ないエネルギー消費につながる。Threadは、これらのメカニズムをフルに活用して802.15.4ネットワーク越しに効率よくパケット通信を行う。断片化とヘッダー圧縮がどのようにして成し遂げられるのか、詳細な方法はRFC4944RFC6282で記述されている。

画像はイメージです

 もう1つの6LoWPAN層の重要な機能は、リンク層でパケット中継ができることである。この機能は、メッシュネットワーク内でのマルチホップパケット転送のためのオーバーヘッドが小さく、非常に効率が良いメカニズムを提供している。Threadは、リンク層のパケット転送とIP層のルーティングを使用している。

 6LoWPANを使うことで、パケット転送時にパケットをネットワーク層に上げずに、リンク層の転送機能を活用している。Threadは、パケット転送時の無線通信に必要なデータビット数をさらに減らすため、MAC層の持つ効率的なショートアドレス(16ビット長)をベースとしたアドレッシングをフル活用する。これにより、プロセスサイクルを低減でき、IPベースのルーティングプロトコルを使用しながら電力消費を改善する。

 OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルをみると、MAC層は第2層であり、IPv6ネットワーク層は第3層であることに気が付く。アダプテーション層としての6LoWPANは、この2つの層の間に位置して、必要な機能と相互接続に必要なインタフェースをもたらす。まとめると、6LoWPANアダプテーション層は下記の機能を持つ。

  • IPv6パケットカプセル化
  • IPv6ヘッダー圧縮
  • IPv6パケット断片化と再構築
  • リンク層パケット転送

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