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フェライト(3) ―― 電子部品としてのフェライト中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(3)(4/4 ページ)

» 2016年12月20日 11時00分 公開
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コア起工に当たって

 多くの設計者の方々はJISの標準コアを用いられるかと思いますが、時として必要に応じて自社でコア金型を起工される場合があります。その場合の注意事項について簡単に説明します。

1)コア・リッチ型と銅・リッチ型トランス

 トランスの形状バランスを表す言葉として「コア・リッチ型」、「銅・リッチ型」という言葉があります。表3のような特徴がありますのでコアを新規に設計する時の設計指針としてください。

表3 コアバランスの比較
 
① コア・リッチ型
② 銅・リッチ型
断面積Ae
広い
狭い
ギャップlg
インダクション係数AL
磁気特性
特徴 総巻回数が減少しますので巻回数の調整は困難になりますが窓面積は狭くすることができます。損失はコアロスの比率が大きくなります。 総巻回数が増加しますので巻回数の調整は容易になりますが窓面積は広くなります。損失は銅損の比率が大きくなります。

 このような特徴から同じピーク電力でコアを設計した場合、「コア・リッチ型」は連続出力が相対的に小さめになり、「銅・リッチ型」は相対的に大きめになります。用途に応じて使い分けてください。

2)縦押しコアと横押しコア

 表2でコアの製造工程の概要を説明しましたが、成形工程では金型の中に造粒されたフェライト粉末を充填し、加圧・成形します。 
充填後に金型を閉じて加圧・成型しますので成形後には無理なく金型が開かねばなりませんが、図4(a)の丸型コアを採用した場合は外脚の凹みが邪魔をしますので金型は脚方向にしか開閉できません。この方式を「縦押し」といいますが、そのために金型そのものが厚く、深くなりますので金型コストや成形サイクルの点で不利になります。

図4:コアの成形方向比較

 一方、同図(b)のようにコアの厚み方向に金型を開く横押しコアを採用した場合はそのようなことはなく、(a)の縦押しコアに対して金型コストや成形サイクルが改善されます。
 外接円との比較でも分かるように、8角形程度の多角形にすれば丸ボビンと大差ないコア占有率や巻線性が得られますし、金型の突き合わせを工夫することでバリや金型寿命の面も有利になります。

3)コーナーR

 機械的強度の項で説明したように、コアに加わった応力は脚部の付け根に集中します(図1(c))。いわゆる応力集中が発生する特異点になりますので少しの力でクラックが発生し、コアの強度が著しく低下します。
 このような現象を避けるため、中脚・外脚の各付け根の部分に0.1〜0.2mm程度のコーナーRか面取り加工を設けます。


 次回はフェライトコアの特性を表す用語や、材料としての仕様書上の管理点、使用上の注意点、などについて説明したいと思います。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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