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» 2017年01月31日 11時00分 公開

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(4):フェライト(4) ―― 使用上の注意点 (2/4)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

ディレーティング基準

 フェライトを使う場合、条件を間違えなければディレーティングが必要な項目は限られます。表1の設計裕度を参考とし、必要に応じて各自で基準を作成ください。
 ただし、基本は焼結性セラミックであり、高温で使えるからと言って空中に浮かして使うわけではありませんので周辺(接触)部品は温度制限を受けます。

表1:ディレーティング一覧
項目 内容
ワニス含浸 使用しないことが前提
接着 ・E型の場合、両脚のみとし、3本の脚全てを接着しない
・ボビン〜コア間の接着は片面に限定
引っ張り応力 引っ張り強度<0.1×M強度下限値(破壊現象のため10倍裕度で使用)
Bm <90%×Bms(最高実使用温度にて)
ピーク電流(Ip) <90%×Isat(最高実使用温度にて)注)
温度(表面温度)注) 安全規格上注)の制限温度以下
注)
・温度測定には10K程度の測定誤差(セット、熱電対貼り付けなど)を見込んでください。
・P-S間に使用するトランスの場合、温度の測定法やマージンのとり方は安全規格の指定の条件を順守してください。
・電気・磁気的項目ではフェライトにダメージは残りませんが、周辺の半導体のストレスを管理するという面から90%で判定しています。
・Isatはコイルの飽和電流です。テストコイルでのL値が10%減少する点のN・Isatから計算した電流値を推奨しますが、メーカー値は△20%点が多いようです。実績を踏まえて基準を統一してください。
・この他にも積層型チップインダクターではメタリコン電極の耐パルス電流性が低いので起動時などのインラッシュ電流に対するディレーティングも必要です。

 例えばチョークやトランスに使われるボビンや導(銅)線皮膜などは有機材料ですから安全規格や信頼性からの面で温度マージンは必要ですし、コイル部品としての寿命にも影響します。

使用上の注意点

 主としてコアに注目した注意点です。トランスなどの完成品についての注意点は製品や安全規格によって異なりますので各自でご配慮下さい。

表2:コアの取扱注意点
項目 内容
研磨面 コアの研磨面は面取りがありませんので角が鋭利であり、微小なバリが付いている時もあります。銅線や人体への傷に注意してください。
コアの研磨面に異物が付着するとインダクタンスが低下し、ウナリなどの異音の原因になります。
消磁 周囲の強力な磁界で磁化されるとコアの磁気特性が正常値から変動します。磁化された場合は消磁してください。
衝撃 ハンドリングによる衝撃やストレスによって磁気特性が変化することがありますので、これらの外力がコアに印加されないように工程を設定してください。
(コア同士、あるいはコアと治具の衝突、近くの磁界の断続によるコアの吸着などの衝撃)
フェライトコアは衝突や落下などの衝撃に弱く、内部クラックや欠けが発生する恐れがあります。クラックが生じると、特性変動や発熱などの原因になりますので落下したコアなどは再使用しないようにしてください。
絶縁 フェライトコアは安全規格上では導体として扱われます。コアを介して距離が不足しないようにしてください。
熱衝撃 熱応力によってクラックや欠けが発生する恐れがありますので、最悪条件で実機評価をしてください。
ストレス 固定や周辺との絶縁のためにケースに入れたり金具でコアを固定したりする場合は、コアに必要以上のストレスが加わらないようにしてください。クラック、欠けが発生したり、応力によって特性が変動したりすることがあります。
研削 加工によるクラック、欠けなどを防ぐために次の点に注意してください。
 【1】コアの特性に応じ、最適な特性の砥石(ツールチップ)を選ぶ。
 【2】加工条件の最適化(冷却剤及びその量・温度・性質など)。
 【3】加工量が多い場合、精度維持ができる範囲で複数回に分けて加工する。
なお、加工設備には飛散防止のカバーや保護具などを付けてください。
線膨張係数 樹脂モールドなどを行う場合は、樹脂〜コア間の熱応力により磁気特性の変動、コアクラック、欠けが発生することがあります。使用材料はこの特性を加味して選択してください。
保管・輸送 フェライトコアは比重が5前後ですので見かけより重量があります。包装箱の積み重ねによって箱の破壊や倒壊することがありますので積み重ねる段数・重量を制限してください。
コア単体およびトランスは一般電子部品と同様に急激な温度変化・腐食性ガス・粉じん・湿気のある雰囲気を避けて保管・輸送をしてください。特に急激な温度変化は一般電子部品以上に敏感ですので注意が必要です。

 また、ニッケル系コアでコアに直接、巻き線を行うときには次のような注意も必要になります。

  • コアのパーティングラインには微小なバリが発生しますのでバリ取り、塗装などを施してください。
    (銅線に傷が付き、短絡の原因となります)
  • 過大なテンションによってクラック、欠けが発生することがあります。コアの肉厚や形状に応じた適切なテンション管理が必要です。
  • また、キンクの発生や、修正用に使用する治具、ハサミなど通常の巻線管理も必要です。

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