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中国の最新市場動向から誘導モーターの高効率化について考えようめざせ高効率! モーター駆動入門講座(4)(2/3 ページ)

» 2017年02月01日 11時00分 公開

誘導モーターの構造と動作原理

 では、誘導モーターとはどのようなモーターなのか。構造と動作原理について見ていこう。誘導モーターの動作原理とその高効率駆動方法は、第1回から第3回まで述べてきた同期モーターとは異なり、意外と知られていない。

図2:モーターの種類(駆動方式別) 図2:モーターの種類(駆動方式別)

 同期モーターと誘導モーターの大きな違いは、磁石を使っているかどうかである。誘導モーターは、磁石を使わず誘導電流によってトルクを発生させている。一方、誘導モーターは2次銅板による損失が大きく、すべりを伴い回転するため、同期モーターと比較して10〜30%も効率が落ちる。図3に同期モーターと誘導モーターの比較表を示す。

図3:ACモーターの特徴比較 図3:ACモーターの特徴比較

 誘導モーターを解説する上で重要なキーワードとなるのが誘導電流(渦電流の合成成分)である。誘導電流の元となる渦電流は、磁界の移動により回転子内に発生する。磁界よるN極が近づく時と遠ざかる時でその渦電流の回転方向が異なる(図4)。

図4:渦電流による電磁誘導作用 図4:渦電流による電磁誘導作用

 回転磁界とこの固定子の銅板に発生する2つの渦電流の合成による誘導電流が、磁界の中で電磁力を発生させ、モータートルクとなる(図5)。

図5:渦電流によるトルクの発生 図5:渦電流によるトルクの発生

 ここで注目したいのが、導体の円盤は回転磁界より遅く回転するということだ。図5の円盤より速く回転する磁石(磁界)の前方では、磁力が増えることで左回りの渦電流が発生し、磁石の後方では、磁界が減ることで右回りの渦電流が発生する。その合成電流である誘導電流が発生することで電磁力が生まれる。つまり誘導モーターには、回転磁界と導体の円盤の回転数の差「すべり」が必要なのである。

 また、この回転子側には、同期モーターにはない銅板に対して渦電流が流れるため2次電流損が発生する。回転磁界に対してすべり(回転磁界と回転子の回転数差)が発生するため、効率も下がってしまう(このすべりがないと渦電流が発生しないため、トルクが生まれない)。一方、トルク特性としては、停止時でも回転磁界に対してトルクが発生するため、特別な起動補助装置なしに起動が可能である。この点では非常に使いやすいモーターと言える(図6)。

図6:すべりとトルク特性 図6:すべりとトルク特性

 回転子は、回転磁界の回転数に近づくにつれてトルクは上がっていき(=回転磁界の一次電流と固定子内の2次電流の位相差によって上がる)、最大トルクの発生回転数と回転磁界の回転数の間で負荷に応じて一定速度の回転数が決定する。無負荷に近い状態でも、トルク発生の元になるすべりが必要となるため、回転子は決して回転磁界と同じ回転になることはない。このように、誘導モーターは商用電源だけでも容易に使用でき、負荷の変化に対してもすべりを変えることで対応し、ほぼ一定の速度で回転できるという優れた特性を持っている。

 さらに、唯一の欠点であった効率についても、世界各国で高効率規制が進められ、モーターの容量ごとに基準効率が新たに制定されており、日本でも2015年以降高効率トップランナーモーター(プレミアム効率のIE3規制)として製造が義務付けられることになった(中国では2016年よりIE3規制)。誘導モーターの損失要因として、巻線抵抗による銅損や、固定子である鉄芯、回転子の鉄損(ヒステリシス損と渦電流損)が存在するが、巻線構造の改良や低損失の材料を使用することで、効率改善が進んでいる。

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