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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

Threadネットワーク内のバッテリー駆動デバイスIoT時代の無線規格を知る【Thread編】(10)(1/2 ページ)

ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。最終回となる今回は、バッテリー駆動デバイスの基本動作とパフォーマンスの比較を紹介する。

» 2017年02月14日 12時00分 公開

Threadネットワーク内のバッテリー駆動デバイス

 あらゆるデバイスやセンサーがつながる「IoT(モノのインターネット)」時代を迎え、ホームネットワーク向けに注目を集める無線規格「Thread」。本連載は、Thread Groupが発行するホワイトペーパーから、Threadの詳細を解説している。

Thread Groupが公開するホワイトペーパー
1. Thread Overview
2. 6LoWPAN
3. Security & Commissioning
4. Boarder Routers
5. Battery Operated Devices

 前回は、Threadネットワーク内のノードと外部ネットワークにある他のデバイスとの接続を行う役割を持つ「ボーダールーター」のオペレーションと任務実行の例を紹介した。最終回となる今回は、バッテリー駆動デバイスについて解説していく。

 Thread Groupの目標は、家中のデバイス間の無線通信を、高信頼で価格競争力があり、かつ低消費で実現するオープンな技術標準を策定することである。これら目標の中で、低消費電力についてはバッテリー駆動のデバイスで達成される。Threadネットワークは、常に電源供給を受ける親機のルーターと、メッセージの経路確保やスリープ時の保持を行ってもらうバッテリー駆動デバイスで構成されている。今回は、これらバッテリー駆動デバイスの基本動作とパフォーマンスの比較を紹介する。

 バッテリー駆動デバイスの動作は、スリープから復帰時に親機へPollしてメッセージを確認に行くか、復帰時にデータを送るかとなる。これらの動作効率がエネルギー消費に影響し、そのデバイスのバッテリー寿命への重要項目ともなる。デバイスの適切なバッテリー寿命を保つために、これらの基本動作を最適化することが必要である。

IEEE 802.15.4を使ったエンドデバイス動作

 バッテリー駆動デバイスは、2つの基本動作を行う。データ送信のためにスリープから復帰するか、自分宛のデータを受信するためにスリープから復帰する。スリープ中のデバイスに直接データを送ることはできないので、そのデバイスの親機がデータを保持し、スリープ中のデバイスからのデータ要求を待つ。

 送信の場合はシンプルで、スリープから復帰後、適切なデータでパケットを構成し、親機へ送る。親機はThreadネットワークを通じて、目的デバイスまで転送を行う義務を負う。単純な具体例として、窓センサーが動作した割り込み信号によりプロセッサが復帰し、窓が開いたことをメッセージで通知するケースがある。

 受信の場合はIEEE 8015.4-2006にて、バッテリー駆動のデバイスが親機にデータを要求することができると定められている。親機はAckフレームにて、フレームペンディングビットをデータがある場合は「1」を、無い場合は「0」を設定して応答する。

 このやりとりの簡単な具体例として、ユーザーがスリープ中のドアセンサーの構成パラメータを変更する場合がある。より頻繁に復帰し、状態と電池残量のレポートを送るように変更する場合などである。この場合、メッセージはスリープ中のデバイスの親機に送られ、エンドデバイスが復帰し、メッセージのPollを行うまで保持される。

スリープと復帰のサイクルの構造

 図2は一般的なスリープと復帰のサイクルを示す。

図2:典型的なスリープと復帰のサイクル

 無線機とマイコンが、以下のステップを繰り返す。

  1. ディープスリープからの復帰
  2. プログラムと水晶発振器のスタートアップシーケンスを完了
  3. 無線機の初期化
  4. 受信モードに入り、他の無線信号を確認(CCA:Clear Channel Assessment)
  5. 送信モードに切り替え
  6. パケットを送信
  7. 受信側からのAck送信を待ち受け
  8. ディープスリープへ戻る

 実際には、このスリープと復帰のサイクルにて、消費電力に影響をもたらす幾つかの要素がある。それらのうち重要となる項目は、

  • デバイスがディープスリープからの復帰に要する時間と無線機が準備完了になるまでの時間(デバイスの実装依存)
  • 無線パケットの送信時間(パケットサイズ)
  • Ackパケットの待ち時間(IEEE 802.15.4仕様で定義されている)
  • アクティブ時のさまざまなデバイス状態における消費電流(デバイスの実装依存)

 いくつかの項目は実装するエンジニアにより最適化できるが、無線機とマイコンの機能/能力がタイミングと消費電力に影響する。無線送信の時間とAckを待つ時間は、パケットのサイズとIEEEE 802.15.4仕様で決められているので実装による違いは生じない。

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