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発振周波数が制御電圧に反比例するVCODesign Ideas アナログ機能回路(2/2 ページ)

» 2017年06月13日 11時00分 公開
[Mike IrwinEDN Japan]
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VIN→IABC→ヒステリシス

 以上のことから、VINを変化させるとIABCが変化し、IABCに応じて比較器のヒステリシスが変化することが分かる。比較器の入力オフセット電圧は立ち上がりと降下を決めるしきい値電圧のちょうど中心になる。このため、比較器の入力オフセット電圧は発振器の発振周波数にそれほど影響を与えない。

 比較器が出力する±15Vの電圧は、電圧振幅を減衰させる抵抗群を経由してOTAの非反転入力端子に到達する。プルアップ抵抗であるR4とR5、これに続くR6〜R9がそれだ。この結果、実際にOTAの非反転入力端子に印加する電圧は±70mVになる。

 積分器の入力電流は、R3の抵抗値と比較器の出力電圧ピーク値(±15V)で決まる。図2の回路では±20μAである。積分器が出力する三角波の立ち上がり/降下の傾きは±200V/sに固定した。三角波の電圧振幅は比較器のヒステリシスで変化する。図2の回路においてVINが0Vから10Vまで増えると、三角波の電圧振幅が約1mVppから最大20Vppまで増加する。この結果、VCOの発振周波数は50kHzから5Hzに下がる。

 積分器の出力電圧が比較器のしきい値電圧をまたいで遷移すると、比較器の出力電圧が反転する。このためOTAの出力電流の向きが逆になる。すなわち比較器のしきい値電圧が反転する。この結果、積分器の出力する三角波の傾きが立ち上がりから降下、もしくは降下から立ち上がりに転じ、次の半周期が始まる。

 発振器の発振周期は次式で計算できる。

 図2で使用した部品の値を代入すると、

 図2に示した回路の部品定数では、発振周期を200マイクロ秒から200ミリ秒まで変えられることが分かる。VINの変化に対する発振周期の直線性誤差は1%未満。発振周期を100マイクロ秒にすると直線性誤差が2%に増加する。積分器のコンデンサーを10nFにすると、発振周波数は約150kHz(発振周期6.7マイクロ秒)と高くなる。

 可変抵抗P1を調整すればVINを一定にしたときの発振周期を設定可能だ。可変抵抗P2を調整すればOTAの入力オフセット電圧をゼロにできるため、VINの電圧値が小さいときの性能を最適化できる。

 OTAに使った「CA3280」は入力オフセット電圧が小さい。このため回路の性能が高まっている。OTAに「CA3080」または「LM13600」などを用いると性能が悪化する。OTAへの電圧入力を減衰する回路にサーミスターを組み込めば、VCOの温度安定度を高められよう。比較器には「LM393」を使った。最大バイアス電流値が25nAと比較的小さいからである。積分器出力の電圧ピークに生じるリンギングを小さくするには、入力バイアス電流が少なく、応答速度が速いオペアンプを使う。積分器に使った「AD843」または「CA3140」はいずれもこれらの特性が良好である。積分器に使うコンデンサーはポリスチレンコンデンサーまたはポリプロピレンコンデンサーを推奨する。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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