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リニアレギュレーターで電力を安定化するにはDC-DCコンバーター活用講座(1) 電力安定化(1)(2/3 ページ)

» 2017年08月07日 11時00分 公開

リニアレギュレーターのための実用的ヒント

実用的ヒント

 入力電圧と出力電圧の差は、パス・トランジスタが降下させます。例えば、入力電圧が12V(自動車のバッテリーなど)で安定化出力電圧が5Vのとき、7Vをトランジスタで降下させる必要があります。つまり、実際に負荷に供給される電力より大きい電力が消費されることになります(次のセクションの効率の計算に関する説明も参照してください)。

 ほとんどのリニアレギュレーターがヒートシンクを必要とするのはこのためです。明らかに、入力電圧が出力電圧より低い電圧まで下がると、リニアレギュレーターは電圧の安定化を維持できず、出力電圧は入力電圧に従って低下します。ただし、入力電圧が低下し過ぎると、エラーアンプとVREFへの内部電源がその影響を受けて、出力が不安定になったり発振し始めたりすることがあります。


 リニアレギュレーターはスタンバイ時にも性能が低下します。無負荷の場合でも、代表的な78xxシリーズのレギュレーターは、エラーアンプ回路とレファレンス電圧回路への給電に約5mAを必要とします。入力電圧が24Vの場合、この静止電流により無負荷時消費電力は120mWになります。

実用的ヒント

 リニアレギュレーターの長所は、低コスト、優れた制御特性、低ノイズ、低エミッション、優れた過渡応答です。短所は、静止消費電流が大きい、シングル出力のみ、入出力電圧差が大きい場合の効率が極めて低いことです。


リニアレギュレーターの効率

 リニアレギュレーターの効率ηは、供給される出力電力POUTの消費電力PINに対する比率により定義されます。

 IQは、無負荷状態でのリニアレギュレーターの静止電流です。上の式は次のように書き換え可能です。

 次の例は、入力電圧が10Vdc、出力電流が1A、静止電流が5mAである標準の5V3端子電圧レギュレーターの場合です。このとき、効率の計算は次のようになります。

 つまり、全体の効率は49%で、コンバーターの消費電力は負荷に供給される5Wを上回ります。入力電圧が最小値の7Vdcまで低下すると、効率は70%に上昇しますが、適切に制御するには約2Vのヘッドルームが必要なので、この70%が実際の最大効率になります。効率の式から、このタイプのレギュレーターの効率は入力電圧と負荷に直接依存しており、その効率が一定でないことがすぐに分かります。

 すなわち、最大入力電圧と最大出力電流というワーストケース条件で安全な動作を可能にするには、電圧レギュレーターに十分な大きさのヒートシンクを取り付けることが必要です。

リニアレギュレーターのその他の特性

 リニアレギュレーターには多数の長所がある一方で、応用時や使用時に特別な注意を要する短所もいくつかあります。

図3:リニアレギュレーターのドロップアウトの問題 出典:RECOM(クリックで拡大)

実用的ヒント

 前述の通り、入出力電圧差が必要なヘッドルーム(代表値2V)より小さい場合、制御ループは適切に機能できません。平滑化コンデンサーが小さ過ぎると、整流されたAC入力の電圧リップルが高く、アプリケーションによくある問題が生じます(図3)。入力電圧がハーフサイクルごとのドロップアウト電圧より低くなると、安定化出力にメイン周波数の2倍の周期で降下が現れます。

 このような瞬間的な電圧降下は、平均出力電圧を測定するだけのマルチメータには現れませんが、それでも回路に「原因不明」の問題が生じる可能性があります。この影響を排除するには、大きな平滑化コンデンサーを使用するか、またはトランスの巻数比を増やしますが、どちらの方法もコストが増加します。


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