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絶縁型DC-DCコンバーターによる電力安定化DC-DCコンバーター活用講座(5) 電力安定化(5)(2/4 ページ)

» 2017年09月05日 11時00分 公開

フライバックDC-DCコンバーター

 フライバックコンバーターは、スイッチがオンの間にトランスのコアにエネルギーを蓄積し、スイッチがオフの間にこのエネルギーを2次側に伝送することにより、入力電圧を安定化出力電圧に変換します。図1に簡略回路図、図2に関連する電圧および電流の波形をそれぞれ示します。

図1:絶縁型フライバックコンバーターの簡略回路図 出典:RECOM(クリックで拡大)
図2:絶縁型フライバックコンバーターの特性出典:RECOM(クリックで拡大)

 スイッチS1が閉じているとき、インダクタンスがLPのトランスT1の1次巻線を通って増加率VIN/LPの電流IS1が流れます。この間、2次巻線LSを通って負荷に流れる電流はありません。このとき、負荷電流はコンデンサーC1によって供給されます。

 S1が開くと、トランス内の磁場の崩壊により、1次巻線と2次巻線の電圧の極性が変わります。今度は1次巻線に蓄えられたエネルギーが2次巻線に伝送されます。2次側の電圧が急上昇し、パルス電流がVOUT/LSのレートで減少しながら負荷とC1に流れこみます。ダイオードD1はピーク整流器として機能します。

適用されるエネルギー式は以下の通りです。

実用的ヒント

 従って、絶縁型フライバックコンバーターの伝達関数が昇降圧コンバーターと異なる点は、巻数比の係数が1/Nであることだけです。フライバックトランス設計の長所は、短いデューティサイクルで出力電圧を大きく増加させることが可能なことで、高出力電圧電源に最適な点です。

 もう1つの長所は、複数の2次巻線を追加することで(必要であれば極性の異なる)複数の出力を容易に実装できることです。部品数も非常に少ないので、このトポロジーは低コスト設計に適しています。

 出力電圧または出力電流をモニターし、通常はオプトカプラを介した絶縁型帰還経路を設けることにより、安定した安定化出力を生成することができます。ただし、フライバックコンバーターは、1次巻線の波形をモニターして、ニーポイントを使って2次側電流がゼロになる時点を検出することにより、1次側で安定化することもできます。この方法ではオプトカプラが不要なので、部品数をさらに減らすことができます。

 短所は、トランスのコアを慎重に選択する必要があることです。たとえ平均的な正のDC電流がトランスを流れているとしても、空隙のあるコアは飽和してはならないので、磁気ヒステリシスが大きい場合は効率が低下することがあります。また、ピーク電流が大きいために、巻線の渦電流損失が問題になる可能性もあります。

 この2つの影響により、このトポロジーの実際の動作周波数範囲が制限されます。また、S1がオフになると1次巻線に大きな誘導スパイクが生じるため、スイッチングFETに大きな電圧ストレスがかかります。


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