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小型バッテリー駆動機器を“完全な眠り”にいざなうロードスイッチIC電源オフ時の消費電流を実質ゼロに

左右独立型の完全ワイヤレスイヤフォンなど、小型のバッテリー駆動機器が増えている中で、電源オフ時の消費電流削減が課題になっている。電源をオフしても、次の電源投入に備え、マイコンと電源ICが動作し、わずかながら電流を消費し続け、数カ月も放置すれば、小容量の電池を空っぽにしてしまう。そうした中で、電源オフ時にマイコンと電源ICへの電源供給を遮断し、プッシュボタンの押下でシステムを起動させることのできるロードスイッチICが登場した。

» 2017年11月30日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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購入直後の電池切れ……

 バッテリー駆動の機器を購入して、すぐに使用しようとすると、バッテリーの残量が少なくてガッカリした……。長い間使わずにいた機器の電源を久しぶりに入れたら、動かない……。こういった経験をしたことは、一度はあるだろう。電源を切った状態で機器は保管しているはずなのに――。そもそも、なぜ、このような事が起こるのだろうか。

 実は、電源を切ってもバッテリーの残量は減り続ける。十分な充電を行っていたとしても、長い時間、保管されれば、おのずとバッテリーの残量はなくなっていくのだ。

 電源を切っても、バッテリー残量が減り続ける原因は、主に2つある。1つはバッテリーの自然放電だ。化学反応を利用する多くの電池、バッテリーは、その度合いに違いはあるが、必ず自然放電が起こり、時間が経てば経つほど、蓄えた電気は失われていく。

電源オフ時のマイコンと電源ICの電力消費

 もう1つの原因が、マイコンと電源ICによる電力消費だ。「電源をオフしているのに、なぜ電力消費?」と思うかもしれないが、機器を制御するマイコンは、電源がオフの状態でも、次に電源がオンされることを待ち続けている。もちろん「ディープスリープモード」など最小限に消費電力を抑える工夫が多くのマイコンに備わっており、その電力消費量はごくわずかになっているが、それでも、微量ながら電力を消費し続けているのだ。そして、そのわずかな電力を供給するために、電源ICも動作を続け、電力を消費している。こうした電源オフ時の消費電流は一般に、マイコンと電源IC(LDOないしDC-DCコンバーター)合わせて数マイクロアンペアとされる。

 数マイクロアンペアという消費電流は、ほんのわずかだ。スマートフォンなどに搭載される容量2000mAhクラスのバッテリーであれば、自然放電を無視すれば20年以上、バッテリー残量はゼロにならない計算だ。

 しかし、バッテリー容量が変わってくれば、この数マイクロアンペアという消費電流は、無視できないものになる。

コードがない完全独立型のイヤフォン。小さく小型バッテリーで駆動する。操作用のボタン数も少ない。

 例えば、最近、普及著しい完全ワイヤレスイヤフォン(トゥルーワイヤレスイヤフォン)は、イヤフォン部に搭載される電池容量は50mAh程度だ。スマートフォンの電池に比べ、40分の1程度の容量しかなく、自然放電を無視したとしても、半年から1年程度でバッテリー残量は尽きてしまう。自然放電を加味すると、電源オフ状態でも3カ月程度しか、バッテリーは持たない。

電源をオフにしていても、マイコンと電源ICは数マイクロアンペアの電流を消費し続ける

 小型のバッテリーを搭載する機器にとって大きな課題である“電源オフ時の消費電力”を解消するICが2017年11月に登場した。トレックス・セミコンダクターのプッシュボタンロードスイッチIC「XC6192シリーズ」(以下、XC6192)だ。

システム全体の消費電力をゼロにするIC

 XC6192は、マイコンに代わって、電源スイッチ(プッシュボタン)が押されたことを検知するIC。プッシュボタンが押されれば、バッテリーと電源ICをつなぐロードスイッチをオンし、電源IC、そしてマイコンへの電力供給を開始し、システムを起動する。そのため、電源オフ時には、電源IC、マイコンへの電力供給を完全に遮断し、電源IC、マイコンの消費電流をゼロにできる。

 しかも、プッシュボタンを常時監視する必要のあるXC6192だが、XC6192自身も電力を消費しない。プッシュボタンが押されることによって、XC6192は起動し、内蔵カウンターでプッシュボタンが押された時間を検知し、一定時間を超えた場合にロードスイッチをオンする仕組みだ。「XC6192のスタンバイ時の消費電流は、極めて微量なリーク電流のみ。仕様としてはスタンバイ時消費電流0.01μAとしているが、測定限界が0.01μAであるためで、実質的にはほぼゼロ」とし、システム全体の消費電力をゼロに、すなわち“完全な眠り”につかせることができるのだ。

「XC6192」の使用例。電源オフ時の消費電流は「XC6192」の消費電流(0.01μA以下)だけ。従来よりも電源オフ時の消費電流を1000分の1以下にできる

 小型バッテリーを搭載する機器は、完全ワイヤレスイヤフォンのように小型サイズで実装面積に余裕がない。そうした中で、既存の回路にXC6192を追加しなければならないが、XC6192は2.0×2.0×0.33mmと超小型、超低背のUSP-8B06パッケージを採用。XC6192搭載により必要となる外付け部品もダイオード1個と抵抗器2個、コンデンサー1個程度。加えて、既存のプッシュボタンを流用でき、XC6192搭載のハードルは低くなっている。

 ワイヤレスイヤフォンのような小型バッテリー駆動機器は、サイズ制約から、1個のプッシュボタンにさまざまな機能を割り当てていることが多い。XC6192を使用すると、そうした複数機能割り当てに影響はないのだろうか。

長押しで強制オフも、1つのボタンにさまざまな機能の割り当て可能

 「XC6192は、ボタンが押された時間をカウントできるため、あらかじめ設定した時間以外では、スイッチは作動しないようになっている。そのため、さまざまな機能をプッシュボタンに持たせることができる」とする。

 ボタンが押されてからロードスイッチをオンするまでの遅延時間は、0.5秒、1秒、3秒、5秒から選択できる。

 また、XC6192シリーズのうち、XC6192Aシリーズは、プッシュボタンの長押しで強制的にロードスイッチをオフする「強制オフ機能」を備える。3秒、5秒、10秒、15秒から選択できる長押し時間を検知し、ロードスイッチをオフする。「システムがフリーズした場合の強制リセットを行いたいというニーズは多く、XC6192Aシリーズだけで実現できる」とする。なお、通常の電源オフについては、マイコンからシャットダウン信号をXC6192に入力し行う。

強制オフ機能ありの「XC6192Aシリーズ」と同機能なしの「XC6192Bシリーズ」の動作イメージ

 XC6192Aシリーズ、強制オフ機能なしのXC6192Bシリーズともに、入力電圧範囲は2.5〜6.0Vで、1セルリチウムイオン電池や乾電池などのバッテリーに対応。出力電流は最大400mA(入力電圧2.5V、Ta=25℃時)。突入電流防止、短絡保護、パワーグッド、出力コンデンサーディスチャージ機能を備えながら、動作時の消費電流は、0.45μAに抑えている。

「XC6192シリーズ」の概要

 「XC6192は、容量100mAh以下の小型バッテリーで動作する小型機器や、半年以上の長期保管が求められる乾電池駆動機器に最適なIC」とし、各種ウェアラブル/ヒアラブル端末の他、スマートカードや火災検知器などでの採用を見込む。「他にないコンセプトのロードスイッチであり、良い評価を得ている」とし、既に量産出荷も開始している。「今後、さらに入力電圧範囲が広く、消費電流を抑えた製品などを開発していく」とし、ラインアップを拡充していく予定だ。

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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月29日

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