メディア

ESDによる不具合発生メカニズムと対策のヒントマイコン講座 ESD対策編(1)(4/4 ページ)

» 2018年01月31日 11時00分 公開
前のページへ 1|2|3|4       

(2)製造装置が帯電する場合

 マイコンをプリント基板に実装する工程は、人が直接作業を行うケースはほとんどなく、オートハンドラーと呼ばれる自動装置で行われる。この装置で使用されている部品や材料に、帯電する素材を使用していると、そこに静電気がたまり、マイコンに放電する。この場合も数百ボルトから数千ボルトになるので、マイコンにとっては相当な衝撃になる(図3(b))。

 通常、マイコンを取り扱う製造装置には、電荷が帯電しない材質(導電性)のものを使用するが、それでも見落としがあり、静電気が帯電する素材を使っていた場合がある。過去の不具合事例を2つ紹介しよう(図5参照)。

図5:ESDを受けやすい配線パターン例 (クリックで拡大)

 1つは、装置内部で使っているベルトのゴムに絶縁性の材質を使ってしまい、そこに静電気が帯電してESDでマイコンを破壊してしまった例だ。ある特定のオートハンドラーで処理すると、数パーセント以下の確率ではあるが、マイコンが破壊されるという事象が確認された。本体は金属なので問題にならないが、可動部にはゴムなどが使われている。通常は導電性のゴムが使われるが、再チェックの結果、最初の素材チェックで見落としがあり、絶縁性のゴムが使われていることが分かった。対策として、導電性のゴムに取り替えたところ、マイコンの破壊は全くなくなった。

 もう1つは、塗料に絶縁性の材質を使っていた例だ。通常塗料は絶縁性なので、半導体を扱う装置では、特別に導電性の塗料を使うようにしている。ところが、これも素材のチェックで見落としがあり、絶縁性の素材が使われて、マイコンを破壊してしまったという例だ。どちらの例も、歩留まり低下率は非常に小さいが、未対策のまま生産を継続していたら、累積損害額は大きくなるところだった。

(3)マイコン本体が帯電する場合

 マイコンの本体は絶縁性の素材でできているので、ここにも静電気は溜まる。すなわち、マイコン自身も帯電する。マイコンに帯電した電荷が、すぐ近くにある端子に放電されると、これもESDになる(図3(c))。マイコン本体への帯電を防ぐには、プリント基板への実装工程などで、周辺から帯電する経路を作らないことがポイントだ。マイコン自体ではないが、完成したプリント基板を保管収納するケースや保管する棚、作業用机が絶縁素材を使っていると、それも帯電しESDは発生するので、マイコンの保管環境の素材にも配慮する必要がある。

筆者プロフィール

菅井 賢(すがい まさる)
(STマイクロエレクトロニクス マイクロコントローラ製品部 アプリケーション・マネージャー)

 日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までARM Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。ARMマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。


連載「マイコン講座」記事一覧はこちら

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.