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FAN(2) ―― クロスフローファンの原理と特性中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(20)(3/3 ページ)

» 2018年06月26日 12時50分 公開
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クロスフローファンの使い方

 クロスフローファンは広い幅で一様流が得られるのでエアコンの室内機などに用いられていますがその原理はここで説明したように、流路抵抗の差を巧妙に利用したものです。
 これらの原理から同一風量のシロッコファンと比較すると、クロスフローファンでは最大静圧は10分の1程度にしかならず、最大静圧が出ずに流路抵抗に弱くなります。

 このような背景を考えると、密集した電子部品の間を空気で強制冷却する用途には向いておらず、流路抵抗の低い、空気だけを動かすサーキュレーターの用途などに向いていると言えます。
 それでも流路上にあるフィルターが埃(ほこり)などで目詰まりすると、前提条件である流路抵抗のバランスが崩れますので風量が著しく低下します。この点は設計上の使い方と言うよりはメンテナンスの問題と言えると思います。つまりフィルター交換や点検のしやすさを考慮することがクロスフローファンの使い方のキーポイントになります。

 上記の背景を踏まえて分かりやすい説明を考えたのですが、どうしても空気の振る舞いを考慮しないとクロスフローファンンの特性をうまく説明できませんでした。逆にいえば、それぐらい繊細(微妙)なファンと言えます。次回はファン一般の使い方と注意事項について説明したいと思います。

【注1】航空機の場合には翼の左右端で発生する、翼下面から上方への渦(翼端渦)によって図3の循環渦が発生しますので図4の時計方向の循環流が流れる状態は存在しません。この翼端渦による悪影響を避けるため、最近の航空機ではウィングレットを翼端に設け翼端渦を上方へ逃がして影響を軽減しています。
【注2】「非対称翼では空気は後縁で同着しなければならない(?)から上層流が速くなる……」という揚力の説明は正しいとは言えません。非対称翼の効果は対象翼が迎え角を持った場合に相当します。
【注3】「気体がぶつかった反力で上向き……」の揚力の説明は板に水をかけた現象からの類推です。この理論では翼上面の形状は考慮されず、失速も考慮されません。気体において反力が支配的になるのは分子個々が独立した分子として振る舞う成層圏などの希薄領域です。曲がった管の流れの衝突による圧力差からの説明も同様です。


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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