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マイコンに搭載されたA-Dコンバーターの測定精度を上げる方法【原因と対策】ハイレベルマイコン講座【ADC測定精度編】(1)(4/5 ページ)

» 2018年08月29日 11時00分 公開

ノイズ対策

[1]ハードウェア対策

 前述の実験より、電源端子にデカップリングコンデンサーをつなげると、有効なノイズ対策になることが分かった。これは、ノイズの主成分が交流成分であることから、交流成分に対しインピーダンスが低いコンデンサーの特性を利用して、ノイズをGNDに逃がす対策である。マイコンの入り口にコンデンサーをつなげれば、外部から来たノイズをマイコンに入る前にGNDに逃がすことができると同時に、マイコン内部で発生したノイズも外へ逃がせる。

 理論的には、ノイズの周波数成分に共振するデカップリングコンデンサーをつなげれば、最も効率的にノイズを除去できるのだが、実際のノイズは複雑な波形なので、無限の周波数成分を含んでいる。数種類のコンデンサーを使えば、ある程度ノイズは除去されるが、完全には取り除くことはできない。

 STM32L15xでは、データシートに容量の異なる複数のデカップリングコンデンサーの推奨値を記載しているが、ノイズの特性はユーザーのマイコンの使用環境に依存するため、最終的にはユーザーが決めるべきである。

 チョークコイルについては、データシートに記載されていない。これは通常の使い方であれば、デカップリングコンデンサーだけで、データシートに記載のA-Dコンバーターの精度を得られると考えられる。次回に解説する実測もデカップリングコンデンサーのみの回路で行う。

[2]ソフトウェア対策

 デカップリングコンデンサーを付けても、ある程度のノイズは乗るので、乗ってしまったノイズをソフトウェアで除去する方法を解説する。

 一般的に知られている方法は平均化だ。複数回測定し、平均を取るとノイズの影響を減らすことができる。子供の頃に、サイコロの目が出る確率を勉強した際、複数回サイコロを振って確率を計算すると、試行回数が多ければ多いほど理想値の6分の1に近づくことを学んだと思う。それと同じ原理である。

 複数回測定し累算して、その回数で割る一般的な「単純平均」に加え、「移動平均」(図6参照)という考え方もある。「移動平均」の方が単純平均より、滑らかな平均結果が求まるので、ノイズ成分の除去効果が高いといえる。

図6:移動平均

 本記事では「移動平均」は行わないが、一般的にはデルタシグマ(ΔΣ)型A-Dコンバーターのデジタルフィルターなどでは「移動平均」が用いられていて、ノイズ除去の効果が認められている。

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