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» 2018年10月15日 11時00分 公開

Wired, Weird:壊れていない基板の修理 (2/2)

[山平豊(ケイティーエス),EDN Japan]
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同じ顧客から同じ種類の基板の修理依頼

 同じ顧客から同じ種類の基板の修理依頼があった。前回と同様に全ての部品の動作を確認したが、やはり不具合は見つからない。不良部品がないので、前回と同様にプルアップ抵抗を追加するという対策を施して、依頼先へ返却した。しかし数日後、依頼先から『装置に実装したが動作しない。不良品と一緒に良品の基板も送るので再調査してほしい』との連絡が来た。非常に良心的な依頼先である。正常品と一緒に不良品を確認すれば本当の不具合の原因が分かるかもしれないと思い、再調査を引き受けた。送付された正常品と不良品の入力回路部分の比較の写真を図3に示す。

図3:不良品(=写真左)と正常品(=写真右)の入力回路部分比較

 基板を受け取ったら入力のセンサーラインの電流を制限する抵抗が不良品は3.3kΩ、正常品は1.5kΩと大きく違っている。使用されていたフォトカプラの電流伝達係数(CTR)をデータシートで確認したら不良基板は100〜600%で、正常基板は100〜300%だ。センサー側に流す電流値に問題がありそうだ。センサー入力回路に流れる電流を計算してみる。

<正常基板>
  フォトカプラの電流 IF=(24−2−1.1)/1.5KΩ=14mA
  出力電流      IC=5V/1KΩ      =5mA
            CTR=35.7%

 使用されているNEC2701LのCTRは100〜300%で、3倍近くのマージンで使用されている。

<不良基板>
  フォトカプラの電流 IF=(24−2−1.1)/3.3KΩ=6.4mA
  出力電流      IC=5V/1KΩ       =5mA
            CTR=78.1%

 不良基板で使用されているTLP181GBのCTRは100〜600%で部品ばらつきのマージンギリギリで使用されている。この基板にセンサーラインに接続されたセンサーの電圧低下や配線の抵抗での電圧Dropが大きいとIF基板が正常に動作できなくなる可能性がある。

 図3の正常基板の写真を見て読者も気づいたかと思うが、右側の1.5kΩのチップ抵抗のハンダの表面が少し怪しい。チップ抵抗の温度が高くなりハンダが緩くなっているようだ。このチップ抵抗は1/4Wと思われるが発熱を計算すると0.3W程度になる。この基板に接続されたセンサーが低い抵抗でオンするとチップ抵抗が発熱する。隣のチップ部品の温度も相まってチップ部品が過熱してハンダが溶けた可能性が高く、ハンダが緩くなったものと思われる。

入力抵抗を置き換える

 不良基板の対策として、入力抵抗を正常基板と同じ1.5kΩに変えた。なお抵抗の電力は14mA×21V=0.28Wなので、0.5Wの電力のディスクリート抵抗を使った。この抵抗はリードでも放熱するのでハンダが溶けることはないはずだ。改造した基板の写真を図4に示す。

図4:改造後の基板

 修理した基板を依頼先へ送って動作を確認してもらったら、依頼先から回答があり『正常に動作した』ということだった。センサーのオン抵抗が高いものがあり、フォトカプラのインタフェース回路が正常に動作できなかったことが不具合の原因と思われた。

なぜ、入力をオープンに? なぜ、CTRに十分なマージンがなかったのか?

 この基板では2つの設計上の疑問があった。1つはCMOS ICの入力をオープンにして他の基板と接続していること、2つ目はフォトカプラのCTRに十分なマージンがなかったことだ。

 恐らくこの基板は元々がTTLで設計されていたものをCMOS ICへ回路変更したものだろう。

 この事例と同様に、コネクターと接続するCMOSICの入力をオープンにしたり、フォトカプラのCTRを100%程度で部品のばらつきのマージンを考慮しないような回路設計を行ったりしていないだろうか?

 センサーなどを接続する基板ではセンサーとの接続の配線が長かったり、ノイズ源の近くに配線されノイズを受けやすかったりすることがある。またセンサーラインに流す電流が大きいとフォトカプラの使い方ではセンサーが劣化したり、フォトカプラの発光量が経年変化で低下したりすることがある。

 動作条件が悪くなってもシステムを確実に動作させるように、十分なマージンを持って設計しているか? ということを常々に点検した方が良いだろう。筆者の今までの経験ではLEDの電流を2mA程度に低くしフォトカプラのCTRは30%未満の回路設計を行ったが、10年以上経過してもトラブルは発生していない。LEDの電流が少なければ、CTRの経年劣化もなく、省電力のシステムにもつながると考えている。

⇒「Wired, Weird」連載バックナンバー一覧

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