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» 2019年01月28日 11時00分 公開

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(27):リレー(2)――その他の構造のリレー (3/3)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]
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ラッチングリレー

 一般的なリレーはコイルへの通電と接点の動作が1:1で対応していますが、ラッチングリレーはコイルへの連続通電の必要はなくパルス的に通電するだけでリレー自体が動作状態を記憶します。この記憶機能はラッチングリレーの磁気回路を構成する磁心などを着磁、減磁(=逆極性着磁)することで実現しています。そのため電源OFF時でも状態が記憶され、記憶を電源に依存するフリップフロップなどとは動作が異なります。
 励磁の仕方によって1個の着磁コイルの通電極性を反転させる1コイル型と、独立した2個のコイルを持つ2コイル型の2つのタイプがあります。

ラッチングリレーの動作

 一般に磁性材料は保磁力Hcの値によって分類されています。大まかですが0〜800A/mのものが軟質(ソフト)、800〜1600A/mのものが半硬質(セミハード)、1600A/m以上のものが硬質(ハード)の磁性体と呼ばれています。
 ラッチングリレー用磁性材料にはこの中でも比較的少ないエネルギーで着磁、減磁ができる半硬質磁性材料が用いられ、保磁力Hcが小さく残留磁束密度Brが高いヒステリシス曲線を持つ焼入硬化鋼*2)が主に用いられます。
 2コイル型の代表的なラッチングリレーの動作を表2に示します。表2の通り、磁性材料の開磁路と閉磁路のB-H特性を巧妙に使って記憶機能を実現していることが分かります。なお、表2(b)のラッチングリレーのB-H曲線は局所的に偏磁されたマイナーループを描きますので表2(a)の交流B-H曲線とは形状が異なります。

*2)半硬質磁性材料としての焼入硬化鋼は炭素鋼、Cr鋼、W鋼、Cr-Cp鋼などを永久磁石材料の場合より高温(500〜600°C)で焼き戻しを行ないます。

表2:ラッチングリレーの代表的な動作と状態図 (クリックで拡大)
図の出典:https://www.omron.co.jp/ecb/product-info/relay/principle-of-relay/explanation-of-operation-of-relay

 ラッチングリレーにはここで紹介したタイプ以外にも永久磁石を磁気回路に追加したタイプのものがあります。このタイプは磁気回路を±Bmsの飽和領域まで駆動し、さらに永久磁石によって内部磁束を+Bmsだけバイアスして0〜2Bmsまでの磁束を利用します。

ラッチングリレーの使用上の注意事項

【1】ラッチングリレーは磁性体の着磁、減磁を利用しています。リレーに過大な衝撃が加わり接極子が瞬間的に開閉すると磁気回路の様子が変わり状態の保持ができなくなる場合があります。装置(システム)の通電開始前に必ず装置の初期状態にセットしてください。

【2】ラッチングリレーは非通電時に外部磁界などによって接点の圧力が減少する場合があります。メーカーの指定期間以上に非通電の場合は接点への連続通電を避けてください。

【3】ラッチングリレーは有極性です。コイルは、それぞれのカタログの内部結線図に指定された極性通りに接続してください。

【4】印加パルス幅の範囲内で、コイルに定格電圧を印加してください。励磁電流が不足すると動作が不安定になります。
 またセットコイルとリセットコイルの同時に電圧を印加しないでください。

【5】2コイルタイプのセット、リセットコイルは電磁結合していますので駆動コイルのペアとなるコイルに逆極性の電圧が誘起されます。
 単純にセット、あるいはリセットコイルを並列に接続すると図3(a)に示すようにS2を閉じた時にペアコイルに誘起された電流が非通電側のリレーに流れ誤動作を引き起こします。複数個のラッチングリレーを並列に駆動する場合は図3(b)のようにそれぞれのコイルへ直列にダイオードを挿入してください。
 また励磁コイルと並列に誘導負荷(モーターやトランスなど)を接続すると、誘導負荷の遮断時に慣性電流(回生電流)が励磁コイルに流れ込みますので周辺回路に思わぬ動作を引き起こす可能性があります。

図3:2コイルタイプのラッチングリレーの並列接続

 今回はヒンジ型以外の構造のリレーの概要とその得失について説明しました。次回はリレーの接点構造や防塵(ぼうじん)構造について説明したいと思います。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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