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TECHNO-FRONTIER 2019(テクノフロンティア2019)特集

絶縁シートの熱履歴が物語る、電源の不良原因Wired, Weird(3/3 ページ)

» 2019年03月07日 11時00分 公開
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コンデンサーを交換し、動作を確認

 不良のコンデンサーを外し、手持ちの電解コンデンサー(450V、150μF品)を基板に取り付けた。図5に示す。

図5:電解コンデンサーを取り換えた後の基板

 修理した電源が正常に動作できるかAC200Vを通電し、無負荷と40W相当の抵抗負荷での出力電圧を確認した。図6に示す。

図6:動作チェックの様子。左側が無負荷時、右側が負荷40W時。どちらも、出力電圧は、ほぼ12Vで安定した

 図6左は無負荷で出力電圧は12.04V。右は40W相当の負荷で出力電圧は12.03Vであり、出力の負荷が大きくなっても出力電圧は安定し、正常に動作していることが分かる。

 この修理品のように、一次側の電解コンデンサーの容量がゼロに近くなったスイッチング電源の修理依頼品は非常に珍しい。おそらくこの電解コンデンサーは10年以上の間、装置に内蔵された電源基板の中で黙々と働いていたと思われる。しかし電解コンデンサーはいつかは容量が低下し、出力電圧の低下や変動が発生する。そのため、そのまま放置されてしまうと容量がなくなってしまい、チョークコイルには高周波のスイッチング電流が流れて、チョークコイルが発熱して過熱されて、チョークコイルの下のプラスチック板が変色する。プラスティック板が変色するには、この板の温度は120℃程度の温度に上がり、少し離れたチョークコイルの温度は、おそらく150℃程度まで上がったと思われる。

スイッチング電源を通電しっぱなしだと起こる現象

 今回の修理例は熱履歴で不具合原因が特定できた非常に分かりやすい事例だった。このようにスイッチング電源を通電しっぱなしにすると、このような現象が発生する。しかし同じ現象は家庭用に使用されている家電でも起こりうるだろう。家電にもスイッチング電源回路が使用されており10年以上通電して使用すると、電解コンデンサーの容量が低下して今回と同様の故障が出る可能性がある。

 なお家庭では『わたほこり』に注意が必要だ。それはいろいろな繊維が絡まり、空間があるので低温で引火することがあるからだ。家庭用の機器では『わたほこり』が電源回路に入り込みやすくチョークコイルが過熱すると『わたほこり』に引火し発煙や火災になることもある。テレビの背面や内部に溜まった『わたほこり』を年に1度は掃除機で吸い出して、清掃した方が良いだろう。

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