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» 2019年05月15日 11時00分 公開

DC-DCコンバーター活用講座(27):DC-DCコンバーターの安全性(2)保護手段 (1/3)

前回に引き続き、DC-DCコンバーターの安全性に関して説明します。今回は、DC-DCコンバーターの「保護手段」を取り上げます。

[Steve Roberts(RECOM),EDN Japan]

危険エネルギーの定義と保護手段

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 IEC/UL60950における危険な電気エネルギーの定義は、「電位差2V以上で、利用可能な電力レベル240VA以上60秒以上、または20J以上(例:コンデンサー1個以上から)の蓄積エネルギーレベル」です。これらのレベルは、このようなエネルギーの放出で損失したエネルギー(例えば短絡または電圧を印加した部品への接触により)が損傷や発火を生じるだけの大きさであることから決定されています。

 リスクマネジメントについては次回以降に説明しますが、危険エネルギーによる損傷または発火の可能性を低減する主な方法は以下のとおりです。

  • 物理的保護(筐体、シールドコネクター、カプセル封入など)
  • エネルギー消費(コンデンサー放電回路など)
  • スパーク抑制(スナバ・ネットワークなど)
  • 本質安全(設計によりエネルギーを制限)
  • 過電流制限(ヒューズなど)

 これらの保護手段は、組み合わせて安全性を高めることができます。例えば、砂充填ヒューズは故障状態のとき電源を切断するように設計されており、さらに、溶断した高温のヒューズ線が発火源とならないように物理的措置(砂)を取ります。

ヒューズ

 危険エネルギーの遮断は、ヒューズまたはサーキットブレーカーを電源経路に挿入して、短絡または過電流(OC)状態でのエネルギー伝達を制限するために行います。OC保護デバイスの遮断定格は電流と電圧の両方で規定されます。これは、故障が解消されるまでに反応時間があり、それが電流と電圧の両方に依存しているためです。

 ヒューズの場合、この反応時間は次式で得られます。

  tclear=tmelt+tquench

 ここで、tmeltは溶断積分I2t、周囲温度、定常負荷、ヒューズの構造によって決まる溶断時間であり、tquenchはヒューズ両端の電圧とヒューズの構造によって決まるアーク放電時間です。遮断時間、tclearの間も、電流はヒューズを流れます。ヒューズ線溶断後のこの電流の流れは、エネルギーの通過として知られています。

 重要なのは、ヒューズの定格電圧を超えないようにすることです。定格電圧を超えると、アークエネルギーをヒューズ本体内に安全に封じ込むことができないことから、温度が急上昇してヒューズが破裂する、またはそれ自体が発火源となる可能性があるためです。遮断容量(ヒューズを安全に遮断できる最大電流。定格電流と混同しない)は、電源から得られる最大電流(予想短絡電流と呼ばれることがある)を上回らなければなりません。

 ヒューズの定格電流として最適な値の選択は、ヒューズが使用されるアプリケーションと環境に大きく依存します。ヒューズ線が大きなエネルギーを受けて溶断すると、電流が遮断される仕組みになっています。周囲温度が高いためにヒューズ線が既に熱くなっていて、うまく冷却できないか、ヒューズを流れる定常電流が大きくなった場合、溶断時間はヒューズ線が冷たい場合より短くなります。

 ヒューズの定格電流は、通常、周囲温度25℃で規定されます。ヒューズ構造の種類に応じて、周囲温度85℃で定格電流を5〜40%低減する必要があります(図1

図1:さまざまなヒューズタイプの温度ディレーティング曲線。Aは筒型ヒューズ、Bはヒューズ線、CはPPTCリセッタブルヒューズ(クリックで拡大)出典:RECOM

実用的ヒント

  定格電流は標高にも依存しています。標高が高いほど空気が薄くなり、定常電流によりヒューズ内で生成される熱があまり循環しなくなります。ヒューズの定格電流は、標高が2000mを超えると、100m高くなるごとにさらに0.5%ディレーティングする必要があります。例えば、海抜0mで1.5Aのヒューズ定格は、4000mでは1.35Aにディレーティングします。

  また、高周波数電流では、ヒューズ線のインダクタンスによりリアクタンスが大きくなり、ヒューズ線の熱損失も大きくなります。電流リップルの周波数が1kHzを超えたら、ヒューズの電流定格をディレーティングします。

図2: 標準的なヒューズの周波数ディレーティング曲線 (クリックで拡大)出典:RECOM

 最後に、ヒューズには誤溶断や早期故障の原因となる経年劣化が生じます。これらの経年劣化のほとんどは、アプリケーションの電源オン/オフにより、ヒューズエレメントが熱膨張と熱収縮を起こすことで生じます。このため、常時オンのアプリケーションでは、日中のみオンにするアプリケーションに比べ、経年劣化が原因のヒューズの早期故障は多くはありません。

 オン/オフを繰り返し行うアプリケーションの場合、熱サイクル/ストレスにより、ヒューズの材料に加工硬化や微小割れが生じ、内部の接触不良を招いたり、ヒューズとヒューズキャリア間の機械的接合強度が低下して電気的接触不良を起こしたりします。

実用的ヒント

 これほどディレーティング要因が多いと、測定された定常電流よりも大幅に大きい定格電流を選択して、厄介なヒューズの溶断を回避したい気持ちになります。しかし、ヒューズが危険量のエネルギーを初期段階で通過させることなく、故障状態に対応することが重要です。実際には、突入電流や負荷電流ステップに対応するために、定格電流が定常電流のワーストケースの1.3〜1.5倍の、スローブローヒューズを使用するのが妥当な方法です。

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