メディア

DC-DCコンバーターの安全性(2)保護手段DC-DCコンバーター活用講座(27)(2/3 ページ)

» 2019年05月15日 11時00分 公開

ヒューズの反応時間と突入電流

 ヒューズの反応時間は構造によって決まります。突入電流、負荷電流ステップ、またはパルス負荷による厄介なヒューズの溶断を避けるには、一時的な過電流状態に耐えることが 望ましい場合があります。トランスの磁界形成と入力フィルター、コンデンサーの充電が同時に行われることから、コンバーターには非常に大きい起動電流が流れるので、これはDC-DCコンバーターにとって特に重要です。低出力DC-DCコンバーターでさえ、突入電流が数アンペアになることがあります。

 この例では、公称入力電圧で全負荷時に定常出力80mAの2WDC-DCコンバーターのピーク突入電流は7.9Aです。したがって、ワーストケースの公称入力電流が100mAのコンバーターを安全に保護するのに加え、時間はわずか8マイクロ秒でも、この値の80倍のピーク突入電流にも対応できるヒューズ特性が必要です。

 約8Aの電流は過度に大きいように思えますが、短時間なので溶断積分(I2t)はわずか0.000512A2秒になります。ヒューズの定格電流が100mAでも、このエネルギーではヒューズ線を溶断することはできません。さらに、ヒューズ線、ヒューズキャリア、トラックに浮遊インダクタンスがあると、ヒューズを流れるピーク電流が大幅に減ります。このアプリケーション例の場合、信頼性を考慮して、定格電流が150mAのスローブローヒューズが推奨されます。

 一部のスローブローヒューズでは、自己インダクタンスを大きくすることで、定常状態の遮断電流を減らすことなく突入電流の抑制度合を高めるために、らせん状のヒューズ線が使われています。ヒューズの反応時間を長くするために、ヒートシンクとして機能する球状の金属をヒューズ線に追加した、構造の異なるものもあります(図3参照)

図3:高速溶断型、標準型、遅延型ヒューズの電流と時間の関係(クリックで拡大)出典:RECOM

実用的ヒント

 一般に、定格電流が最大入力電流 (最小入力電圧および全負荷で測定)の約150%であるスローブロー型の入力ヒューズが推奨されます。DC-DCコンバーターの出力は、ほとんどが電流制限され、短絡保護機能を備えているため、DC-DCコンバーターに出力ヒューズを取り付けるのは一般的ではありません。ただし、出力ヒューズが必要な理由があるアプリケーションがあります。その理由の1つは、DC-DCコンバーターの1つの出力から多数の回路に電力が供給される場合で、どれか1つの回路が故障状態になって過電流が流れても、コンバーターの出力がシャットダウンするレベルにならない可能性があります。個々にヒューズを入れることで、各回路への電流制限を選択的に実行可能です。また、故障時に主にコンバーター内部の出力フィルター/コンデンサーに蓄積されたエネルギーが出力に供給され、この電力が危険エネルギーの制限値を超えてしまう場合には出力ヒューズが必要になります。

  上記のような出力ヒューズを必要とするアプリケーションの場合、負荷の種類(主に抵抗性、主に誘導性、主に容量性のいずれか)、エネルギーが静的か動的か、あるいは所定のアプリケーションにおける危険エネルギーの定義に応じて、ヒューズの選択はさまざまです。起動時、スイッチングサイクルごとのエネルギー/パケットがDC-DCコンバーターの入力から出力に伝達されると、コンバーターの出力電圧は比較的ゆっくりと上昇します。詳しく調べると、出力電圧が上昇する個々の段階をオシロスコープで観察できる場合があります。徐々に上昇する電圧が生成する「アウトラッシュ」(噴出)電流は通常の最大突入電流よりはるかに小さいので、危険エネルギーからの保護に速断タイプのヒューズの方が適している場合があります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.