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» 2019年09月11日 11時11分 公開

ダブルパルステスターで高精度なデバイスモデルを:SiC登場で不可避な電源回路シミュレーション、成功のカギは「正確な実測」 (1/5)

SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使ったパワーデバイスの実用化に伴い、電源設計においても回路シミュレーションを実施する必要性が高まっている。しかし、「実測値とシミュレーション結果が合わない」というケースが頻発している。なぜ、シミュレーションがうまく行かないのか。その理由と解決策を紹介してきたい。

[武田亮/橋本憲良(キーサイト・テクノロジー),EDN Japan]

 電源技術者にとって、回路シミュレーションはあまり馴染み深いものではないだろう。これまでは、電源回路を設計するときに考慮しなければならない周波数があまり高くなかったため、回路シミュレーションの必要性に迫られる機会がほとんどなかったからだ。設計に取り掛かる前にシミュレーションを実行して細部を詰めなくても、大きなトラブルが発生することはほとんどなかった。仮にトラブルが起きても、受動部品を載せ替えるなどの「切った、貼った」で何とか解決できた。

SiC/GaNの採用でトラブル頻発

 ところが最近になって、電源回路設計を取り巻く環境が変化しつつある。そのキッカケになったのは、SiC(炭化ケイ素)材料やGaN(窒化ガリウム)材料を使ったパワーデバイスの実用化である。

 SiCパワーデバイスやGaNパワーデバイスは、既存のSi(シリコン)パワーデバイスに比べて、材料特性が極めて高い。このため、変換効率を低下させることなく、スイッチング周波数を大幅に高められる。さらに、スイッチング波形の立ち上がり時間や立ち下がり時間が非常に短い。例えば、SiCパワーMOSFETには、立ち上がり時間が約20ナノ秒と短い製品もある。

 この立ち上がり波形には、500MHzを超える周波数成分が含まれている。500MHzといえば、高周波(RF)回路の設計で対象となる周波数である。RF回路設計では、設計作業に着手する前にシミュレーションを実行することが当たり前だ(図1)。そのRF回路設計で扱うような周波数を、電源回路設計でも考慮しなければならなくなったことになる。

図1:シミュレーションを活用すれば、設計の手戻りを少なくできる

 これだけ高い周波数成分を扱うのである。実際に電源回路設計の現場では、トラブルが頻発しているようだ。例えば、高い周波数成分を含むスイッチング波形がパワーデバイス自体やプリント基板の寄生成分の影響を受けることで、極めて大きなオーバーシュートが発生したり、誤点弧が起きて大電流が流れたりするなどのトラブルである。

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