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プログラマブル直流安定化電源の市場動向や種類プログラマブル直流安定化電源の基礎知識(1)(5/5 ページ)

» 2019年09月20日 11時00分 公開
[TechEyesOnline]
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突入電流

 一般的なスイッチング方式直流電源はコンデンサーインプット型となっているため、電源オン時に入力平滑コンデンサーを充電するための大きな電流が流れる。大きな突入電流はスイッチやリレーなどの接点の溶着を生じる恐れがある。

 なお、突入電流は数ミリ秒と短い時間であるが、ブレーカーの動作特性によっては突入電流によりブレーカーが動作することがあるので、低速型または遅延型を選ぶ必要がある。

 突入電流を軽減するために、スイッチング方式の直流電源には突入電流防止回路が組み込まれている。

図14: 突入電流防止回路が組み込まれた入力回路

 菊水電子工業のスイッチング方式の直流電源の突入電流は下記のようになる。

シリーズ 突入電流
スイッチング方式 PWR-01 400Wモデル  25Apeak以下
800Wモデル  50Apeak以下
1200Wモデル 75Apeak以下
2000Wモデル 125Apeak以下
PWR 400Wモデル  35Apeak以下
800Wモデル  70Apeak以下
1200Wモデル 140Apeak以下
PAV 200Wモデル:AC100V入力時 15〜25A以下(機種により異なる)
200Wモデル:AC200V入力時 25〜30A以下(機種により異なる)
400Wモデル:AC100V入力時 25A以下
400Wモデル:AC200V入力時 25A以下
600Wモデル:AC100V入力時 30A以下
600Wモデル:AC200V入力時 30A以下
PAT-T 4kWモデル 50Apeak以下
8kWモデル 100Apeak以下
PWX 750Wモデル  70Apeak以下
1500Wモデル  70Apeak以下
PAG 750Wモデル  25A以下
1500Wモデル 50A以下
2400Wモデル 50A以下
3300Wモデル:単相または三相200V時 50A以下
3300Wモデル:三相400V時 20A以下
5000Wモデル:三相200V時 50A以下
5000Wモデル:三相400V時 20A以下
表5:菊水電子工業のスイッチング方式の突入電流仕様※PWRシリーズは生産終了となっている

リップル

 スイッチング方式の直流電源は、内部で高速に電流のオンとオフを繰り返しているために高周波ノイズが発生する。直流電源の出力波形には、下記のようなノイズが直流電圧に重畳している。これをリップルという。

図15:リップルノイズ波形。A:リップルノイズ B:リップル C:ノイズ D:スイッチングリップル E:ACリップル

 リップルノイズの測定法は、電子情報技術産業協会(JEITA)が定めた「スイッチング電源試験方法(RC-9131C)」に記載されている。ここではオシロスコープを使って測定する方法が示されているが、画面から測定結果を読み取るのは手間が掛かる。なお、高い周波数成分を含むリップルノイズ電圧の測定を過去の測定結果と互換性を保つには、オシロスコープの周波数帯域を100MHzに固定するのが望ましい。リップルノイズを測定する専用機「リップルノイズメーター」を利用すれば、簡単に測定できる。

図16:リップルノイズメーター(RM-103) 提供:計測技術研究所

 リップルの測定条件はメーカーによって独自に定めている場合があるので、製品を比較する場合は注意が必要である。

 スイッチング方式直流電源を長期間使用すると、内部にあるアルミ電解コンデンサーが劣化してリップル電圧が増加するため、劣化を診断する指標になっている。

温度係数

 エージング試験や耐久試験のように長時間連続して利用する場合は、温度変化によって直流電源の内部にある基準電圧が変動して影響が出力に現れるので、利用する前に直流電源の仕様を確認する必要がある。定電圧動作時と定電流動作時では温度係数が異なる場合があるので注意が必要である。

過渡応答時間

 負荷状態の急変時、出力電圧が設定値の規定した範囲内に復帰するまでの応答時間という。負荷変動が大きな対象物に接続して利用する場合は、直流電源の仕様を確認しておくことが必要である。ただし、過渡応答時間は定電圧電源として利用した場合の仕様値である。 過渡応答時間は過渡回復時間と表現しているメーカーもある。

安全

 直流電源はエネルギーを供給する装置であるため、安全に配慮された設計になっている。電源装置を選定する場合は「電気計測器の製品安全の国際規格IEC 61010-1(EN 61010-1、JIS C1010)」に適合していることが望ましい。

 また、実際に直流電源を利用する場合は、対象物への接続は取扱説明書の書かれた手順で行い、安全のために金属端子には樹脂カバーを付けて利用する。

図17:出力端子にカバーを取り付け(PWR-01の400Wモデルでの事例) 提供:菊水電子工業

利用者支援

 最近の直流電源は高機能であるため、取扱い説明書を読んでも使い方が理解できないことがある。使い方が分からない時の電話やメールによる相談窓口が用意されていることや、HPに技術情報が掲載されているメーカーの製品は安心して利用できる。

 また、電源装置の故障や点検に迅速な対応ができるかも重要な視点である。


転載元「TechEyesOnline」紹介

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