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» 2019年10月29日 11時00分 公開

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(36):アルミ電解コンデンサー(3)―― 化成処理と巻回 (1/3)

アルミ電解コンデンサーの主要部材であるアルミ箔。今回は、エッチングされた箔の表面に施す化成処理について詳しく説明していきます。

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

 前回はアルミ電解コンデンサーの主要部材であるアルミ箔のエッチングについて説明しました。今回はエッチングされた箔の表面に施す化成処理についてもう少し詳しく説明していきます。なお、これまでに説明したアルミ電解コンデンサーの製造工程や各部の機能については、必要に応じて該当の稿を参照してください。

化成工程(陽極酸化)

 アルミ、タンタル、亜鉛、チタンなどある種の金属はその性質によって古くはバルブ(弁)金属とも呼ばれ、適切な条件下で金属表面に作られた強固な酸化膜が整流作用と同時に耐腐食性を持つ不働(動)態*1になることが知られています。既に説明したようにアルミ電解コンデンサーはこの不働態の酸化アルミニウムの膜を利用したものです。
*1:不働態:耐腐食性の酸化膜を生じた状態

 アルミ電解コンデンサーの定格電圧*2に対応した酸化膜を生成する工程は化成工程、あるいは陽極酸化工程とも呼ばれ、実際のコンデンサーの特性を形成する基盤になる重要な工程ですが、後から分析しても作り方の詳細はよく分からないので箔を製造しているメーカーにとってはノウハウのかたまり、ブラックボックスとも言えます。
 それゆえ、この化成工程について説明している詳しい資料は容易には入手できず、特許などの公開文献で得られた内容に基づいて説明します。また、ここで説明に用いる数値や薬剤名はメーカーによって大きく変わります。理解するための一例と考えてください。
*2:酸化膜の耐電圧がアルミ電解コンデンサーの定格電圧になります。このためにアルミ電解コンデンサーの定格電圧は最大で800V程度になります。

図1:高圧箔化成工程概略図

 図1(a)に高圧箔の工程外略図を、図1(b)に各電解槽の電位関係を示します。図1(b)から分かるようにアルミ箔を共通電位にしますので電解液中の陰極電位を変えて箔への印加電圧を変化させます。

 この工程では定格電圧の140〜160%の電圧でアルミ箔に陽極酸化が行われ、低圧箔では1段酸化、高圧箔では複数段に分けて順次陽極酸化電圧を上げていく多段式で酸化膜が生成されます。
 また、高圧箔では化成工程の効率化のために純水中で箔を煮沸して水和皮膜をつける前処理が行われます。この工程の概略を表したのが図1です。

 次に各工程を簡単に説明しますが、エッチング工程で巻き取られた箔は給電ローラを介して工程に投入され順次、各工程を通って仕上げられていきます。

【1】純水ボイル槽(高圧箔時)
 化成処理効率化のために純水(50〜95℃)に1〜10分間浸漬させ、表面に水酸化アルミ[Al(OH3)]を0.01〜1mg/cm2成長させます。ただし、この(水和)皮膜が厚くなりすぎると化成後の漏れ電流が増大します。(純水以外ではエチルアミン水溶(0.01mol/l、98℃)、NaOH水溶液(0.1〜0.5wt%、60℃)などが使われます)

【2】イオン除去用前処理槽(任意)
 陽極酸化を行うと、酸化膜中に電解液中のイオンが入り込み、酸化膜の結晶性が乱れます。そのための前処理ですが詳細は後述します。

【3】化成槽
 20〜50mA/cm2の定電圧定電流電源を用いて設定電圧に達した後10〜30分間化成処理を行い、酸化膜を成長させます。保持される設定電圧が箔の耐圧実力になります。
ホウ酸(70g/l)+アンモニア水(1ml/l、85℃)、アジピン酸アンモニウム水溶液(5〜7wt%、あるいは10g/l、70〜85℃)などが用いられますが、電解液の成分や化成電圧・電流は多種多様であり一概に表記できません。一部ではホウ酸系の処理法では欠陥密度が他の処理に比べて低いと言われていますが、水和劣化と呼ばれる現象ではリン酸系処理法より劣ります。
注:硫酸系の電解液を使用すると多孔質な“アルマイト”と呼ばれる膜になりますが多孔質ですからコンデンサーの用途には用いられません。

【4】給電槽
 電解液を介してアルミニウム箔に間接的に給電します。エッチング箔との機械的な接触がないため箔の溶断がない、など連続化成処理方法として標準的に採用されています。ただし図1(b)から分かるように電流の流れが化成槽と逆になっていることに注意が必要です。
 飽和ジカルボン酸アンモニウム塩の水溶液などが電解液として用いられます。

図2:ピットの断面図

【5】電解洗浄槽(任意)
 【2】の前処理槽と同様に、酸化膜中に入り込んだイオンの除去を行います。機能については後述します。

【6〜7】化成槽
 第2化成槽です。内容は3とほぼ同じですが進行状態にあわせて順次、化成条件は変更され、この工程の最終化成電圧が電解コンデンサーのサージ定格電圧になります。第2化成処理を施すと欠陥が半減しますし、第1化成液と種類を変えると水和劣化の少ない高品質な膜が得られます。
 また、この化成槽の工程は箔の耐圧に応じて増減されます。

【8】洗浄槽
 化学洗浄と純水洗浄を組み合わせて洗浄を行います。

 このようにして作られたピットの断面図を図2に示します。

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