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» 2019年10月30日 11時00分 公開

ハイレベルマイコン講座【EMS対策】(1):どのノイズ対策が最も効果的か? よくあるEMS対策を比較する【準備編】 (2/3)

[STマイクロエレクトロニクス,EDN Japan]

EMSノイズの侵入経路

 そもそもノイズとは「電磁波」であり、言い換えれば「電波」と同じだ。アンテナを介し、各家庭でラジオやテレビの電波を受信する仕組みを考えると、比較的理解しやすいだろう。

 すなわち、マイコンを使った電子回路においても、「アンテナ」がなければ「電波」=「ノイズ」を受けることがない(または少ない)。

 プリント基板上で、マイコンの端子には他のICや抵抗、コンデンサーなどの負荷が接続されている。マイコンにおいては、これらの負荷までの配線、すなわち電子回路の配線がノイズを受ける「アンテナ」となってしまう。

 加えてマイコンの内部にはメタルの配線層があり、プリント基板上の配線に比べてはるかに短いものの、これらの配線も「アンテナ」になり得る。

 そのため、マイコンでは「アンテナ」を完全になくすことはできない。しかし、プリント基板上の配線はマイコン内のメタル配線と比べて圧倒的に長く、ノイズを受けやすいため、ここに対策を施すことで受信するノイズを最小限に抑えることができる(図2

図2:ノイズの受信部(アンテナ)

 また電子回路にとって、「共振」もノイズの要因になるパラメーターだ。ラジオやテレビのアンテナは、共振を利用して効率よく電波を受信するように設計されているのだが(例えば、ダイポールアンテナは、波長の2分の1の長さにして高電界を発生させ、電波を効率良く受信できるように設計されている)、マイコンの場合も同じように、ノイズの持つ高調波成分と配線長が共振すると、ノイズが効率良く受信されてしまう。共振は配線が短くても、ノイズの持つ波長に依存するため注意が必要だ(図3

図3:配線とノイズの共振

 具体的な対策としては、コンデンサーやチョークコイルを使って、共振点をずらす方法がある。

EMSノイズの対策

 一般的な対策としては、次のような手法がある。

(1)シールド

 安定した電位(GNDなど)で電子機器を囲い、ノイズを受信しないようにする方法であり、フェライトシート(磁気シート)や金属板を用いて電子機器全体または一部に適用する。費用が掛かるためコスト優先の用途には適さないが、その分効果は高い。配線だけにシールド線を使い、コストを抑えつつノイズ体制を大きく改善する手段もあるが、単線や撚線(よりせん)に比べるとやはり高コストとなる。比較的コストを抑えつつノイズを抑えるには、撚線が効果的である。

 今回の実験では、マイコンのシールドも行うが、コスト面を考慮して撚線と単線の場合のノイズ耐性改善効果も確認する。

 また、シールドとは異なるものの、マイコンが受けるノイズを減少させるという意味では、配線長を最短に、すなわちアンテナ効果を最小限にしてもノイズ耐性改善効果を期待できる。

(2)ノイズのバイパス

 ノイズが逃げる経路を作ることで、マイコンにノイズが到達しないようにする方法。バイパスコンデンサーやLCフィルターがこの方法にあたる。主に電源ラインで使われる手段だが、配線にも有効だ。

 今回の実験では、配線にコンデンサーやチョークコイルを挿入し、そのノイズ耐性改善効果を確認する。ノイズの経路が特定できない場合には、電源ラインのデカップリングコンデンサーを強化し、電源ライン経由でノイズを逃がす方法もある。

 バイパスコンデンサーやフィルター以外でも、バリスタやツェナーダイオードを用いる場合もあるが、コストが高い。また、これらは振幅の大きい電圧に対しては抵抗値が低くなるためノイズを別の経路に逃がす役割を果たすが、振幅の小さいノイズにはあまり効果がないので、今回の実験では使用しない。

(3)吸収

 抵抗やフェライトコアを使って、ノイズを熱エネルギーや磁気損失(ヒステリシス損)に変換し、ノイズのエネルギーを吸収したり、高インピーダンスでノイズを反射させたりして遮断する方法。

 抵抗を用いる場合は、その両端で電圧降下が起きて電気的特性が変わるため、今回はフェライトコアで配線を覆い、そのノイズ耐性改善効果を確認する。

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