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» 2019年10月31日 11時00分 公開

アナログ設計のきほん【ADCとノイズ】(8):デルタ−シグマADCでの電圧リファレンスノイズの影響 (1/3)

さまざまなノイズ源が高精度デルタ−シグマADCに与える影響をより深く理解するために、電圧リファレンスノイズについて取り上げます。

[Sam Jaffe(Texas Instruments),EDN]
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 業務用オーブンの温度を管理する高精度温度測定ユニットのような高分解能センサー測定システムを設計することになったと想定してみてください。このようなシステムを作成するためには、温度計測用の熱電対をオーブンに取り付け、熱電対のリード線を測定システムに接続します。すると、A/Dコンバーター(以下、ADC)からデジタルコードが出力されます。では、このコードに対応する実際の温度をどうやって判断するのでしょうか。

 アナログ回路設計ではベースラインとして電圧リファレンスを使用し、このベースラインを基準にアナログ測定が行われます。この例では、リファレンスの公称電圧により出力コードが確定し、このコードは決まった温度に対応しています。リファレンスの電圧を変更すると、出力コードも同様に上下することになりますが、測定温度は変わりません。

 出力コードは電圧リファレンスの値に直接関連しているので、ノイズが多かったり精度が低かったりする電圧リファレンスからは、同じように信頼性の低い測定結果しか得られません。そのため高分解能システムでは、適切な電圧リファレンスを選ぶことが、高精度ADCを選ぶことと同じくらい重要になります。

 連載第8回の今回は、さまざまなノイズ源が高精度デルタ−シグマADCに与える影響をより深く理解するために、電圧リファレンスノイズに関連する次のトピックを取り上げます。

  • リファレンスノイズとADCノイズ
  • ゲインがリファレンスノイズに与える影響

 なお、次回、第9回では、今回の観察結果を検証し、リファレンスノイズを低減させる方法をいくつか紹介します。同時に、リファレンスノイズが低分解能および高分解能ADCに与える影響も詳しく検討します。

リファレンスノイズとADCノイズ

 本連載の第2回で、ADCのノイズ特性を判断するのに使われる2種類の測定方法である正弦波入力と入力短絡について説明しました。正弦波入力方法は、名前から分かるように、ある特定の振幅と周波数を持つ正弦波を入力し、この信号がADCでどのように量子化されるかの特性を明確にします。一方、入力短絡方法は、デバイスの入力を短絡させて、熱ノイズによる出力コードのわずかな変動を測定することで、DCでのADC性能を判断します。図1は、これらのノイズ測定方法を示したものです。

図1:正弦波入力テスト構成(左)と入力短絡テスト構成(右)

 式1に示すように、ADCの出力コードは、ADCの入力信号の振幅(VIN)をADCのリファレンス電圧(VREF)で割ったものに比例します。

式1

 正弦波入力方法のように、ADCの特性を明確するためにゼロ以外の入力信号を使用するとき、その出力コードにはリファレンスノイズがいくらか含まれます。目的はADCノイズのみの特性を明確にすることですが、このリファレンスノイズは例外なく、信号対雑音比(SNR)や信号対雑音比+歪み(SINAD)などの、ADCのデータシートに示されるノイズパラメーターの一部として含まれます。

 したがって、正弦波入力方法で特性判断されるデバイスでは、ADCのテスト構成と類似したシステムを使用することで、データシートに示された特性と同等のADCノイズ特性を実現できます。

 一方、入力短絡方法では、0Vの入力信号を使用して、信号が存在しないときのADCの出力コードの変動を測定します。この場合、式1の比は常に0Vと等しいため、出力にリファレンスノイズは現れません。ADCの固有ノイズ(=本連載第1回で説明)より小さい入力を確実に測定することは期待できないので、入力短絡方法によりADC分解能の絶対限度が規定されます。入力を短絡した結果として、入力換算ノイズや有効分解能などのデータシートのノイズパラメーターには、リファレンスノイズの影響は含まれません。この種のADCでゼロ以外の入力信号を測定したい場合は、それまでは現れなかった電圧リファレンスノイズにより、出力で現れる総ノイズがADCのデータシートに記載される以上に増加すると考えておかなければなりません。

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