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» 2019年12月04日 11時00分 公開

デジタルオシロスコープの基礎知識(1):デジタルオシロスコープの歴史や種類 (1/5)

電子回路技術者にとって日々使う道具である「オシロスコープ」。原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。今回の連載では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガ機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。

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 本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。

はじめに

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 オシロスコープは、電子回路技術者にとって日々使う道具である。オシロスコープの原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって、高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。

 現在、市場で多く使われているデジタルオシロスコープは1970年代初めに原型が作られて、高速A/D変換器の進歩によって広帯域化が進んでいった。最近では、GHz帯域の信号を12ビットの分解能で波形観測できるオシロスコープも各社から登場してきた。

 また、デジタル半導体の高集積化や低価格化が進んだため、ベーシックなオシロスコープは個人が電子工作のために購入できる価格となった。

 今回の記事では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガー機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。

 紙面の都合があるため、下記に示す全ての種類のオシロスコープについて解説ができないが、よく使われているベンチトップ型のオシロスコープを使うための必要な基礎知識を解説する。

図1:さまざまなオシロスコープ

 今回の記事執筆には、長年オシロスコープを開発して、グローバルにビジネスを展開しているテクトロニクスの協力を得た。

歴史の長いオシロスコープ

 オシロスコープは長い歴史を持つため、世代交代をしながら発展してきた。ここでは歴史を追って世代交代の流れを説明する。

アナログオシロスコープ

 アナログオシロスコープは、Ferdinand Braunが陰極線管(ブラウン管)を発明して、1897年に電気現象の変化を陰極線管に表示したのが起源となっているが、使い易いオシロスコープではなかった。下記の図は、当時の電気現象を観測する実験を行うための教育用の実験装置の図である。

図2:1900年代初めに販売された教育用陰極線管

 1931年に、米国のGeneral Radioが本体とディスプレイが分離された強制同期式オシロスコープ「535-A」を開発した。その後、同社は1934年に本体とディスプレイを一体にしたオシロスコープを発表した。1932年には、英国のA.C.Cossorからも強制同期式オシロスコープが発売された。日本でも1937年、逓信省電気試験所(現在の産業技術総合研究所の一部)の笠井完氏が「陰極線オシログラフ」という解説書を執筆している。日本では第二次世界大戦前に、東京電気(現在の東芝)や松下無線(現在のパナソニック)などが強制同期式オシロスコープを販売していた。

 強制同期式オシロスコープは、入力周波数に掃引周波数を手動で合わせる方式のため、連続する安定した波形の観測しかできなかった。

図3:強制同期式オシロスコープのブロック図

 第二次世界大戦後の1947年に、テクトロニクスがトリガー掃引式オシロスコープを製品化した。これにより、掃引開始点をトリガー回路によって作り出すことができるようになった。現在使われているオシロスコープは、トリガー回路を持っている。

図4:トリガー掃引式オシロスコープ

 アナログオシロスコープは、広帯域化と小型化が進み、エレクトロニクスエンジニアにとって必須のツールとなった。1984年に発売されたテクトロニクスの4チャンネルのアナログオシロスコープ2465は、完成度の高いオシロスコープであり、当時のベストセラー機であった。2465の上位機種にあたる2467は、ブラウン管に暗視カメラなどで使われているマイクロチャンネルプレートを組み込んだオシロスコープであり、広帯域の波形を明るく見ることができた。このため、高速波形の観測が必要なデジタル回路の評価などに役立った。

図5:アナログオシロスコープ 2465 提供:テクトロニクス

 一般のアナログオシロスコープは繰り返し現象を観測するために使われたが、1960年代初頭に登場した残光時間の長いCRTを使ったストレージオシロスコープは、単発現象を管面に一時的に保持できるものであった。電源の突入電流波形やデジタル信号のグリッジ波形の観測などに利用された。

 アナログオシロスコープは2000年初頭まで販売されていたが、デジタルオシロスコープの価格が安くなったこと、デジタルオシロスコープの画面更新レートが高速化したことなど、アナログオシロスコープの優位性が失われ、現在ではあまり利用されなくなってきた。

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