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» 2020年03月23日 11時00分 公開

中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(41):アルミ電解コンデンサー(8)―― 市場不良と四級塩問題 (2/4)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

四級塩問題

四級塩問題とは

 電解液の主成分に四級塩と呼ばれる化合物を使用した低ESRの電解コンデンサーを四級塩コンデンサーと呼び、1987年ぐらいから製造が開始されたこの種のコンデンサーが市場に出荷後4〜5年で液漏れを起こして基板を腐食させた事象を指して「四級塩問題」と呼んでいます。

 しかし、Wikipediaの「不良電解コンデンサ問題」の記事や巷(ちまた)で言われている四級塩問題と言えば、

1980年代後期、第四級アンモニウム塩(四級塩電解液)を用いた低ESR品と呼ばれるタイプにおいて、電解コンデンサから液漏れを起こし、基板のパターンをショートさせ回路を故障させるという事故が多発した。これは四級塩が強アルカリ性で腐食性がありシールが難しく、電極のリード線や封口のゴムを侵し液漏れを起こすというものであった。これに対し日本のメーカーは対策して克服し、国内メーカーが得意とする製品になった(2019年11月19日(火)13:55)
(下線は筆者加筆)

という内容が主流であり、他のWebサイト上の記事にも同様な内容のものが多く見られます。ですから事情を知らない第三者がインターネット検索を通じてこの種の記事を読み、

…四級塩が強アルカリ性で腐食性があり…
   ⇒ アルミ缶が腐食すれば当然、液漏れするだろう

…電極のリード線や封口のゴムを侵し…
   ⇒ 強アルカリではリード線や封口ゴムが侵され、グズグズになるだろう

…国内メーカーが得意とする製品になった…
   ⇒ 今では四級塩が一般的?

という印象を持ったとしてもやむを得ませんが、これらはいずれも実際の現象と合致していません。

 実際の「四級塩問題の液漏れ」と言えば、
『通電の有無にかかわらず負極端子部のみに液漏れが発生する』
という現象なのですが上記のWikipediaの記事には原因のメカニズムについての詳しい説明がなく、あるのは誤った現象の説明や印象の文言のみです。また記事の引用資料[4]に記載されているキーワード、「陰極付近」も削除され、さらには電解液が酸で中和されていることすら忘れられています。

 そのため従来のアミジン塩も強塩基なのですが「四級塩=強アルカリ」という語句のみがWeb上で広がったまま現在に至っていますし、「アルカリ」という語句も正しい使い方なのか?という疑問も残ったままです。
 さらには表1に示すように明らかに異なる原因と考えられる問題もこの種の情報に触発されてか、四級塩に起因するという記事さえ見かけることがありますがせめて現象ぐらい正しく伝えてほしいものです。

四級塩問題を考える

 一方、なぜこのような致命的な欠陥を持つコンデンサーがメーカーの評価試験をパスして量産出荷されたのか?という疑問点もWikipediaの記事からでは分かりません。

 筆者はこの評価試験をパスした背景には信頼性試験における液漏れ現象の温度加速性に問題があったと考えています。
 コンデンサーメーカーでは当然、製品開発時に数年間の信頼性試験を行いますが液漏れに関しては温度の加速性が低かったので試験期間(数年)中には現象が発現しなかったのではないでしょうか?

図1:評価治具のイメージ

 そして副次的な要因として、試験中に設備への脱着を容易にするための治具の形状の問題もあったのではないでしょうか?
 実際の評価に当っては個別測定ができる評価基板を使用する以外にもコンデンサーのリード線を評価基板にはんだ付けをせず、図1に示すようなクリップなどで試験設備に接続する場合が時としてあります。そのため封口部が上向きのケースでは電解液が滴下することがなく、また封口部が下向きの場合でもコンデンサー下部にできた空間に漏れ出た電解液が蒸発して液漏れの発見が遅れたことも十分に考えられます。

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