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» 2020年05月27日 13時00分 公開

WBGパワー半導体を使う:SiCスイッチの特性と設計上の注意点 (1/2)

年々注目度が増すワイドバンドギャップ(WBG)半導体。その中で、現在最もシェアが高いのはSiC(炭化ケイ素)だ。SiCスイッチの特性と、同素子を使う際の設計上の注意点を説明する。

[TME(Transfer Multisort Elektronik),EDN Japan]

 年々注目度が増すワイドバンドギャップ(WBG)半導体。“次世代技術”という位置付けから、主要な市場セクターへと堅調に移行する中、市場年平均成長率は33.4%、市場規模は2024年までの次の5年間で18億2000万米ドルに達すると予測されています(参照)。

 WBG半導体の材料には、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)材料などがありますが、現在最もシェアが高いのはSiCです。Yole Développmentによると2018年のシェアは約98%がSiCとなっています。同社によれば、WBG素子市場の主要な原動力となるのは輸送用機器であり、SiCは2024年に半導体電源スイッチの約50%を占めると予測しています。

 ここで、WBG半導体について簡単に触れておきます。バンドギャップとは、電子が価電子帯から伝導帯に遷移するために必要なエネルギーのこと。このエネルギーが高い半導体素子が、WBG半導体です。例えばシリコン(Si)のバンドギャップは1.1eV、SiCは3.26eVであり、GaNは3.4eVとなっています。WBGは飽和速度も速く、SiCは熱伝導率にも非常に優れていて、図1でSiと比較されている上記の点およびその他の差異は、いくつかの項目においてWBG半導体の大きな利点を示しています。

図1:SiCとGaNおよびSiの材料特性比較

 図1に見られるように、SiCを使用した素子はある厚さにおいて、約10倍のブレークダウン定格電圧を持っており、例えばSiCを使用すると、10分の1のドリフト層で10倍のドーピング濃度を保つことができます。これにより、同じ耐圧でもSiよりオン抵抗がはるかに低くなり、同じダイサイズでの消費電力がSiと比較して低くなります。SiCのダイは、その非常に高い熱伝導率により、パッケージから効果的に放熱し、最小限のスペースで高電力を実現することができます。リーク電流も、特に高温下での高いブレークダウン電圧特性の結果として低くなります。

 WBG半導体では静電容量が小さくなります。スイッチング用途では、サイクルごとに静電容量を充電および放電する必要があります。これは循環電流と消費電力を意味し、この点でもSiCとGaNはSiに対して大きなアドバンテージを持っています。

 例えば、ゲート電荷はゲート-ソース間およびゲート-ドレイン間電圧により、Si-IGBTでは数マイクロクーロン、Si-MOSFETでは数百ナノクーロン、SiC素子では数十ナノクーロンになり、一例を挙げると、Infineon Technologiesの1200V/25A SiCモジュール「FF45MR12W1M1_B11」のような大電流素子でも同じです。これは、高速のスイッチングを支えるだけでなく、ゲート駆動電力を抑えることになります。通常、大型IGBTはゲート駆動に数ワットを必要としますが、SiCおよびGaNの場合は数ミリワットに抑えることが可能になります。

図2:Infineon Technologiesの1200V/25A SiCモジュール「FF45MR12W1M1_B11」。総ゲート電荷はわずか62nCである

 SiCやGaNは、Siよりも高い接合部温度で動作することも特長です。500℃以上で動作することも確認されていますが、実際には、パッケージの形状や材質によりSiと同等の動作温度に抑えられてしまうことも少なくありません。ですが、こうした高い動作温度は、WBG半導体の過渡熱条件に大きなマージンを与えるもので、オン抵抗やゲートリーク電流といった重要な温度に関わる特性の変化は、Siと比較してSiCの方がはるかに低くなっています。

 WBG半導体を採用する主な理由は、スイッチング損失が少ないことです。現在、サーバ電源などの用途における効率目標は98%を超えていますが、このような数字はSiCやGaN技術でしか達成できません。

 ただし、Siパワー半導体を単純にSiCに置き換えるだけで、それが最適なソリューションになるわけではありません。例えば、素子の損失は減少し、スイッチング速度は速くなるものの、EMIもかなり高くなり、余分なスナバとフィルターが必要になるため、低損失が相殺されてしまいます。

 最大効率を得るには、スイッチング損失を減少させたまま、磁性部品(動作周波数の増加に伴いサイズとコストは低減する)などの周辺部品においても、削減につながるよう、動作周波数を増加させるゼロからの再設計が必要になります。より高い動作周波数では、基板レイアウトも重要になります。

 また、最適なソリューションかどうかは、コスト、サイズ、重量にも依存します。例えば自動車の電気モーター駆動用途では、走行距離を増大させる効率性、サイズ、重量が重要視されます。産業用の駆動装置では、重量はそれほど問題にならないかもしれませんが、より多くの装置を設置すべく、サイズが重要になります。

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