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AUTOSAR Classic Platformの概要と導入初期にありがちな問題点AUTOSAR Classic Platform導入の手引き(2/3 ページ)

» 2020年06月01日 11時00分 公開

AUTOSAR CPで定義されているソフトウェアアーキテクチャ

 AUTOSAR CPで定義されているソフトウェアアーキテクチャは、図2に示す3層構造になっている。上からApplication Layer、Runtime Environment(RTE)、Basic Software(BSW)と呼ばれる。

図2:AUTOSAR CPのソフトウェアアーキテクチャ構成 (クリックで拡大)
出典:AUTOSAR CP R4.4.0 EXP Layered Software Architecture

 最上位層であるApplication Layerは、SW-Cの集合体が置かれる階層である。

 上から2層目の層であるRTEは、SW-C間の通信インタフェースおよび、BSWがSW-Cに提供するシステムサービス(後述)へのAPIである、AUTOSAR Interfaceを提供している。RTEはSW-Cおよび、BSWの実行環境として、実行制御や排他制御も提供している。

 RTEが再利用性の向上に大きく寄与しているポイントとして、通信相手のSW-Cが同じECUに存在する場合も、離れたECUに存在する場合も、呼び出すAPI(AUTOSAR Interface)が変わらないという点がある。同じECU内と離れたECU間では異なる通信経路を、RTEが切り替えている。これによりSW-Cは、特定のECUに置くという制約がなくなり、システム構成の変更があっても再利用しやすくなる。

 3層目のBSWは、ECUで一般的に使われる機能を提供する層である。

 BSWのうち、ハードウェア依存層はMCAL(Microcontroller Abstraction Layer)と呼ばれる。また、ハードウェア非依存層のうちシステムサービスは、通信、メモリ、セキュリティなどに関するサービスを、RTEおよび、AUTOSAR Interfaceを通じてSW-Cに提供する。

 MCALは、一般にデバイスドライバと呼ばれるものに相当する。MCALのAPI仕様は、AUTOSAR CPにて規格化されている。これにより上位層は、異なるハードウェアを常に同じAPIで扱え、再利用可能な構造にしやすくなる。

 BSWは、自動車メーカーやサプライヤーが自ら開発するのではなく、一般的にソフトウェアベンダーから提供されるものを使用する。これも標準化がもたらす自動車業界全体にわたるソフトウェア再利用の1つである。

AUTOSAR Interface

 AUTOSAR CPでは、SW-CとRTEをつなぐためのインタフェースをAUTOSAR Interfaceと呼ぶ。

図3:AUTOSAR Interface 出典:eSOL(イーソル)

 SW-Cが他のSW-Cと通信をするとき、またSW-CがBSWのシステムサービスを利用するとき、どのECUに配置されても常に同じAUTOSAR Interfaceを使用する。通信する相手になる他のSW-CやBSWが同じECU内にあれば、RTEがその処理経路を切り替える。通信相手が異なるECUにあるときは、RTEはBSWの通信サービスを経由し、CAN、LINなどのバスを通って相手方のECUと通信する。SW-Cを任意のECUに割り付けることが出来るため、SW-Cの再利用が促進される。

 このような仕組みにより、今まで各メーカー、サプライヤーがばらばらに行ってきたソフトウェアの再利用を、AUTOSARは自動車業界全体にわたるものに広げられる。欧州では、ソフトウェア再利用などの効果が認められ、すでにほとんどの新規開発にてAUTOSARが採用されている。国内でも、本格的に採用が進み、これからも採用の増加が見込まれる。

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