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» 2020年06月03日 10時00分 公開

アナログ回路設計講座(35):フォトカプラ不要の600V入力絶縁型フライバックコントローラの電源電圧を800V以上に拡張

今回は、最大定格600V入力で動作するように設定されているフォトカプラ不要の絶縁型フライバックコントローラの電源電圧値を800V以上に高めて使用する方法を紹介しよう。

[PR/EDN Japan]
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 従来の絶縁型高電圧フライバックコンバータでは、フォトカプラを使用して2次側のリファレンス回路から1次側へレギュレーション情報を転送することにより、厳密なレギュレーションを実現していました。この際の問題は、フォトカプラを使用するために絶縁設計が複雑になることです。フォトカプラには伝搬遅延、経年変化、ゲイン変動などがあり、これらすべてが電源ループの補償を複雑なものにし、信頼性を低下させる可能性があります。さらに、起動時にはICに電力供給するためにブリーダ抵抗か高電圧起動回路が必要になります。起動部品に高電圧MOSFETを追加しない限り、ブリーダ抵抗は不要な電力損失を発生させます。

 LT8316はマイクロパワーの高電圧フライバックコントローラで、フォトカプラや複雑な2次側リファレンス回路、あるいは追加の起動部品を必要としません。

電源電圧の拡張

 LT8316は熱強化型の20ピンTSSOPパッケージを採用しており、高電圧のピン間隔を確保するために4本のピンを除去しています。また、3次巻線から絶縁出力電圧をサンプリングしているので、レギュレーションにフォトカプラを使用する必要はありません。出力電圧は2個の外付け抵抗と、もう1つの温度補償抵抗(オプション)によって設定します。準共振境界モードの動作は、優れた負荷レギュレーション、小さいトランスサイズおよび低スイッチング損失を実現する助けとなりますが、これは高い入力電圧において特に有用です。出力電圧は2次電流がほぼゼロのときに検出されるので、負荷補償用の外付け抵抗やコンデンサは必要ありません。結果としてLT8316ソリューションは部品数が少なく、絶縁型フライバックコンバータの設計を大幅に簡素化します(図1を参照)

図1:20V〜800Vの広い入力範囲を持ち、最小起動電圧が260Vの12V絶縁型フライバックコンバータの全体図

 LT8316の定格は最大600VのVINで動作するように設定されていますが、この値は、VINピンにツェナーダイオードを直列に接続することによって拡張できます。この場合、ツェナーダイオードにおける電圧降下によってチップに加わる電圧が低下するので、600Vを超える電源電圧値にすることも可能です。

 18V〜800Vという広い入力範囲を持つフライバックコンバータの全体回路図を図1に示します。部品選定のための詳しいガイドラインは、LT8316のデータシートに記載されています。220VのツェナーダイオードをVINピンと直列に配置した場合、起動のための最小電源電圧は、ツェナーダイオードの電圧許容誤差を考慮して約260Vです。ただし、起動後のLT8316は、260V未満の電源電圧で正常に動作します。

 さまざまな入力電圧に対する効率を図2に示します。フライバックコンバータが91%のピーク効率を実現することが分かります。図3に示すように、フォトカプラを使用しなくても、さまざまな入力電圧において負荷レギュレーションは高い精度を保っています。

【左図】図2:図1に示すフライバックコンバータの効率
【右図】図3:図1に示すフライバックコンバータの負荷およびラインレギュレーション

低起動電圧設計

 前述のソリューションは入力電圧を800Vまで拡張しますが、ツェナーダイオードによって最小起動電圧が260Vまで上がってしまいます。この場合の課題は、一部のアプリケーションでは高い入力電圧と低い起動電圧の両方が求められることです。

 最大入力電圧を800Vとした、もう1つのソリューションを図4に示します。この回路は、ツェナーダイオードとトランジスタを使って電圧レギュレータを構成しています。この回路では、VINピンを約560Vにレギュレーションしながら、入力電圧を安全に800Vまで上げることができます。この回路の利点は、より低い電源電圧でLT8316を起動できることです。

図4:絶縁型フライバックコンバータの回路図。20V〜800V入力、12V出力、低起動電圧

非絶縁型降圧コンバータ

 LT8316の高電圧入力能力は、絶縁型トランスを必要としないシンプルな非絶縁型降圧コンバータに簡単に応用できます。磁気部品には、比較的安価な既製品のインダクタを使用します。

 非絶縁型降圧アプリケーションの場合は、電圧が変化する降圧トポロジのスイッチノードにLT8316のグラウンドピンを接続します。LT8316は独自の検出方式を採用しており、スイッチノードがグラウンドに接続されたときだけ電圧が出力されるので、降圧回路が簡素化されます。

 フライバックコンバータ同様、降圧コンバータの電源電圧も拡張することができます。入力電圧800Vの降圧コンバータの回路図を図5に示します。220Vのツェナーダイオードが、電源電圧とLT8316のVINピンの間に配置されています。ツェナーダイオードの許容誤差を考慮した最小起動電源電圧は260Vです。起動後のLT8316は、これより低い電源電圧で正常に動作します。さまざまな入力電圧に対する効率を図6に示します。降圧コンバータが91%のピーク効率を実現することが分かります。図7には、負荷およびラインレギュレーションを示します。

図5:最大電源電圧800Vの非絶縁型降圧コンバータの回路図
【左図】図6:図1に示すフライバックコンバータの効率
【右図】図7:図5に示す降圧コンバータの負荷およびラインレギュレーション

 図4のフライバックコンバータ同様、電源電圧とVINピンの間に電圧レギュレータを追加して、降圧コンバータの起動電圧を低く抑えることができます。GNDピンとVINピンの間にはボディダイオードがあり、これがトランジスタのエミッタ電圧を上昇させて、ベース−エミッタ間にブレークダウンを発生させる点に留意する必要があります。これを防ぐには、2個のダイオードを追加してトランジスタを保護します。この低起動電圧ソリューションを図8に示します。

図8:低起動電圧の800VIN非絶縁型降圧コンバータの回路図

まとめ

 LT8316は準共振境界モードで動作し、フォトカプラなしでも優れたレギュレーションを行うことができます。また、低リップルのBurst Mode動作、ソフトスタート、プログラマブル電流制限値、低電圧ロックアウト、温度補償、低静止電流などの豊富な機能と特長を備えています。その高い集積度は、バッテリ電源システムから自動車、工業、医療、電気通信用の電源、さらには絶縁型補助電源や家庭用電源に至るまでの幅広いアプリケーションにおいて、部品数の少ない高効率のソリューションの設計を容易にします。

著者プロフィール

Yuchen Yang

 Yuchen Yangは、アナログ・デバイセズのシニアエンジニアで、絶縁型/非絶縁型コンバーターのパワー製品アプリケーションの責任者を務めています。

 Tsinghua University(清華大学)で学士号を、米国バージニア工科大学で電気工学の修士号および博士号を取得しました。2018年にAnalog Devicesに入社。

William Xiong

 William Xiongは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアです。2017年7月から、フライバック・コンバータ、フォワード・コンバータなどの絶縁型/昇降圧型トポロジの製品を担当しています。

 2017年にカリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校で電気工学の学士号を取得しています。


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提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年7月2日











































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