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LEDの特性(1)定電流でLEDをドライブDC-DCコンバーター活用講座(35)(2/2 ページ)

» 2020年06月18日 11時00分 公開
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定電流でLEDをドライブ

 順方向電圧VFのばらつきに関するこの問題の解決策は、一定電圧ではなく一定電流でLEDをドライブすることです。

 LEDドライバは出力電圧を自動的に調整して出力電流を一定に保つので、光出力も一定に保たれます。これは、1個のLEDでも、直列に接続したLEDストリングチェーンでも同じです。LEDに流れる電流が同じであれば、各LEDのVFが違ってもその明るさは同じになります(図4参照)

 LEDの温度が動作によって上昇すると、定電流ドライバは自動的にドライブ電圧を下げてLEDに流れる電流を一定に保つので、LEDの明るさは動作温度にも影響されません。

 もう1つの大きな利点は、定電流ドライバではチェーン内のいずれか1つのLEDがオーバードライブ状態になることがないので、LEDの寿命を長く保てることです。いずれかのLEDが短絡故障を起こしても、残りのLEDは正しい電流値で動作を続けます。

図4:LEDストリング 出典:RECOM

DC定電流源の例

 最も単純な定電流源は、抵抗経由でLEDをドライブする定電圧電源です。抵抗両端での電圧降下がLEDの順方向電圧とほぼ同じであれば、VFが10%変化した場合はLED電流も同じ量だけ変化します(これを図2の曲線と比較する。図2では、VFが10%変化するとLED電流は約50%変化する)。このソリューションは非常に安価ですが電流レギュレーション機能に劣り、電力の無駄が多くなります。低電圧ハロゲンランプの交換用として提供されている低コストのクラスタタイプLEDランプは、この方法を使用しています。言うまでもなく、いずれかのLEDが短絡故障すると抵抗に過大な負荷がかかり、通常は比較的短時間で焼き切れてしまいます。従って、これらのクラスタLEDランプの寿命は比較的短いものとなっています。

 その次に単純な定電流源が、リニア電流レギュレーターです。市場にはこの方法を使用した低コストLEDドライバがいくつかあります。あるいは、標準的なリニア電圧レギュレーターを定電流モードで使用することができます。内部帰還電流が電流を約±5%以内に維持しますが、余分な電力を熱として放出しなければならないので、レギュレーターには適切なヒートシンクが必要です。このソリューションの欠点は効率が悪いことで、どちらかといえば、高効率SSLデバイスという概念に反しています。

 最良の定電流源はスイッチングレギュレーターです。このドライバは他のソリューションより高価ですが、出力電流の精度は広いLED負荷範囲にわたって±3%であり、96%という高い変換効率を備えています。つまり、熱として無駄になるエネルギーは4%にすぎず、高い周囲温度の下でも使用できます。

図5:単純な抵抗:低コストだが精度が低く効率が悪い 出典:RECOM
図6:リニアレギュレーター:低コストで精度も高いが効率が悪い 出典:RECOM
図7:スイッチングレギュレーター:高価だが精度が高く効率も良い 出典:RECOM

 上に示した各オプションの重要な違いの1つが、入力および出力電圧の範囲です。

 DC-DCスイッチングレギュレーターは広い入力電圧範囲と出力電圧範囲を持ち、その全範囲にわたって良好な定電流レギュレーション機能を発揮します(例えばRCD-24-0.35の動作範囲は5V〜36Vdcで、出力電圧範囲は2〜34Vdcです)。広い出力電圧範囲はさまざまなLEDストリング長の組み合わせを可能にするだけでなく、調光範囲も広く取ることができます。

 上に示すほかの2つのオプションでは、必要なLEDが1個だけの場合に消費電力に関する問題が生じます。これは、抵抗やリニアレギュレーターは電圧降下が大きく、これによって消費電力損失が大きくなるためです。同じ理由で、入力電圧範囲も制限する必要があります。


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執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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