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5G時代をリードする『コイル一体型DC/DCコンバーター』に負電圧出力タイプが登場高速大容量通信用光トランシーバー向け

EDN Japan主催のオンラインセミナー「次世代デバイスのための電源」での講演「小型・低ノイズ及び高速光通信用DC/DCコンバーター電源モジュール」を振り返る。

» 2020年06月29日 10時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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光トランシーバーモジュール用電源の定番「XCLシリーズ」

 トレックス・セミコンダクターの事業本部で汎用製品ビジネスユニット副参事を務める藤井和幸氏は、EDN Japan主催のオンラインセミナー「次世代デバイスのための電源」で、「小型・低ノイズ及び高速光通信用DC/DCコンバーター電源モジュール」について講演した。

 電子回路設計において、技術者が苦労してきた課題がいくつかある。例えば、「高効率で安定した電力の供給を可能にする電源回路の設計」や、「誤動作を防ぐためのノイズ対策」などである。

 5G(第5世代移動通信)の商用サービス開始やIoT(モノのインターネット)機器の需要拡大などにより、電源回路はより複雑となり、小型化にも対応しなければならない。電源としての性能や信頼性の向上はもとより、放熱対策を含め高密度実装への要求にも応えていく必要があるからだ。これらの要件をクリアするため、回路設計者の負荷も大きくなり、電源設計のハードルはますます高くなる。

 こうした市場の要求に応える電源製品が、トレックス・セミコンダクターより供給されている。コイル一体型DC/DCコンバーター(micro DC/DC)電源モジュール「XCLシリーズ」である。コイルやコンデンサーなどの受動部品と電源ICを1パッケージにした製品で、電源設計に対する設計者の悩みや負荷を軽減することができる。

 周辺回路を取り込んだ電源モジュールは今や、複数の電源ICメーカーから供給され、需要が拡大している。技術者がディスクリート部品を用いて回路設計した場合に比べて、「電源回路の省スペース化」「電源回路設計の負荷軽減」「EMIノイズの低減」といった恩恵を享受できるからだ。

 こうした中で、トレックス・セミコンダクターのXCLシリーズは、光トランシーバーモジュール用電源などの用途で注目を集めている。独自のモジュール構造を採用していることが高く評価されているようだ。

さまざまなパッケージタイプがそろうXCLシリーズ。写真は「ポケットタイプ」

 同社はXCLシリーズとして4種類のパッケージ品を用意している。通常の電源ICパッケージ上に、「ポケットコイル」と呼ぶ逆凹型のコイルを覆いかぶせて一体化した「ポケットタイプ」の他、「スタックタイプ」や「マルチプルタイプ」「クールポストタイプ」がある。用途に合わせ、高効率で高信頼の電源モジュールを選択できる。

高い変換効率と低ノイズ、さらに小型で低自己消費電力

 オンラインセミナーではまず、DC/DCコンバーターから発生するスイッチングノイズとその対策について簡単に説明。その上で、トレックス・セミコンダクターが提供しているDC/DCコンバーター電源モジュール「XCLシリーズ」の特長や、高速光通信機器に向けた新製品の概要などを紹介した。

 DC/DCコンバーターのスイッチングノイズを小さく抑える方法として、藤井氏は3項目を挙げた。「電流経路の面積を最小化するために、入力コンデンサーを電源ICの近くに配置する」「DC/DCコンバーターの出力電流を極力抑える」「DC/DCコンバーターの動作周波数を低くする」ことである。

 これらの課題を解決するために用意された製品がXCLシリーズである。ショットキーバリアダイオード(SBD)やMOSFET、コイル、制御ICといった主要部品を1パッケージに収めた。XCLシリーズを用いると、入力用と出力用に2個のコンデンサーを追加すれば、DC/DCコンバーターを実現することができる。

DC/DCコンバーターに必要な主要部品を1パッケージ化した「XCLシリーズ」

 具体的には、電源ICの直近に入力コンデンサーを配置することで、電流経路の寄生インダクタンスを低減でき、ノイズの発生量を抑えることが可能となる。単体のDC/DCコンバーターに比べ、輻射ノイズを大幅に抑えることに成功した。これは、独自のパッケージ構造により部品点数を削減したことが大きく寄与しているという。近傍磁界も低減した。近くにノイズの影響を受けやすいセンサーやGPSなどを配置しても誤動作を起こしにくいという。実装面積は、単体DC/DCコンバーターを用いた場合に比べ、約75%も削減することが可能となった。

図:「XCLシリーズ」の特長

 XCLシリーズは2009年に製品化。それ以降は昇圧タイプや降圧タイプ、負電圧タイプなど、さまざまな出力/パッケージ仕様の製品をそろえてきた。光トランシーバーモジュール用の電源もその1つである。

 データセンターなどで用いられる装置間やボード間などで光信号を伝送する光インターコネクトは、より高速で大容量化が進む。対応する電源ICには、高い変換効率や低ノイズといった基本要件に加え、小型化や低い自己消費電力などが求められる。XCLシリーズが、光トランシーバーモジュール市場で高く評価され、採用件数を伸ばしている理由もそこにある。

 2019年11月には、高速大容量通信用光トランシーバーに向けた、負電圧出力の「XCL303/XCL304」シリーズを新たに追加した。藤井氏は「負電圧出力対応のDC/DCコンバーター電源モジュール製品は世界でも初めて」と話す。

 XCL303シリーズは、PWM制御で低ノイズを重視する用途に適している。一方、XCL304シリーズは、重負荷時に低ノイズを重視し、軽負荷時は高い効率を実現できるようPWM制御とPFM制御を自動で切り替えることができる製品である。

XCL303/XCL304シリーズの製品仕様

 入力電圧範囲は2.7〜5.5V、出力電圧は外付け抵抗により−1.2〜−6.0Vの範囲で調整できる。スイッチング周波数は2.5MHzで、最大出力電流は300mA(入力電圧:3.3V、出力電圧:−3.0V時)である。動作温度範囲も−40〜105℃と広い。パッケージは外形寸法が2.5×2.0×1.0mmのCL-2025-02で供給する。

 コイル一体型構造としたことで、14.06mm2(3.8×3.7mm)という実装面積を実現した。負電圧出力DC/DCコンバーターとしては世界最小クラスで、一般的な負電圧製品の実装面積(65.25mm2)と比べ、約5分の1という小ささである。

 XCL303/XCL304シリーズは、近傍磁界や輻射ノイズが小さく、周辺デバイスが磁界や輻射ノイズで誤動作を起こす心配もほとんどない。

図:XCL303/XCL304シリーズと、一般的なDC/DCコンバーターでの性能、サイズ比較

 この他、高速大容量通信機器向けXCLシリーズは、出力電流によって5シリーズを用意している。最大出力電流が2000mAの「XCL211/XCL212」、同1500mAの「XCL213/XCL214」、同1000mAの「XCL219/XCL220」、同400mAの「XCL201/XCL202」および、同700mAの「XCL223/XCL224」である。

 藤井氏は、「XCLシリーズは、電子機器の小型化、高速通信に対応できるコイル一体型DC/DCコンバーター電源モジュールである。最新の5G通信機器やIoT機器、M2M機器などに欠かせないデバイス」と述べ、講演を締めくくった。

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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年7月28日

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