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LEDの特性(2)LED調光DC-DCコンバーター活用講座(37)(3/3 ページ)

» 2020年08月31日 11時00分 公開
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視覚的輝度

 これで、LED調光に完璧な方法はないということが分かりましたが、もう1つ、人間の目に関する問題があります。明るさに対する人間の視覚は非線形です。照明レベルが低いと人間の虹彩は自動的に開き、より多くの光を取り込もうとします。そのため、簡単な照度計が示す明るさよりもLEDが明るいと感じます。視覚的輝度と測定輝度の関係を算出するには、正規化した測定光の平方根を求めます。例えば、公称LED電流の1/4(0.25)に調光したLEDは、人間の目には√0.25=0.5、つまり半分の輝度に感じられます。

 ほとんどのLEDメーカーは、その調光機能をできるだけ線形に、なおかつ数学的にできるだけ正確に動作させることに取り組んでいますが、人間の目は本質的に白熱灯の非線形曲線を好みます。これは、非線形曲線の方が、LEDの線形応答よりもはるかに人間の明るさの感覚に合っているからです。現時点では、LED照明市場では自然さよりも線形性が求められています。これは、その方がさまざまな照明の組み合わせが容易になるからですが、将来的に市場が成熟し、より自然な調光への需要が増えるにつれて、この傾向は変わってくるでしょう。

図6:人間の視覚

調光のまとめ

 多くのバラストサプライヤーはLED調光を「既に完成した技術」として提供しており、出力精度が±5%(1:20)程度であっても1:1000の調光比といった仕様を自信満々でデータシートに記載していますが、数千種類に及ぶ調光機能付きLEDドライバが市場に出回っているにもかかわらず、正確かつ線形でフリッカのないLED調光はいまだに保証されていません。これは上記の簡単な検討でも分かると思います。しかし、LED技術は常に進歩を続け、より少ない電流でより多くの光を発生できるようになっています。

 今後、ユーザーの興味はどれだけの照明出力を使用できるかではなく、その出力をどのように制御できるかに移っていくと予想されます。従って、特にエネルギー効率指令などの新しい要素によって、消費電力削減のために調光可能な照明が求められるようになるにつれて、調光可能LEDは普通の存在になっていくものと思われます。


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執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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