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» 2020年09月29日 10時00分 公開

不断の研究開発が支える:電源業界の“不変の課題”、高電力密度をかなえる4つのイノベーション

電源において、常に最も重要な課題の一つとなっているのが電力密度だ。電力密度の向上は、電源サイズの縮小、部品点数の減少、システムコストの削減など、多くのメリットに直結している。Texas Insrtuments(TI)は、4つの主要分野において、電力密度の向上におけるイノベーションをけん引している。

[PR/EDN Japan]
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Kilby Labs Power, Isolation and Motors部門マネジャーのJeffrey Morroni氏

 半導体の成長率は、人口の増加率より高く、電子機器の増加に伴い、より高い電力密度の継続的な必要性が高まっている。より多くの電力を、いかにより少ないスペースで実現するか――。電力密度の向上は、あらゆるアプリケーションで求められる“不変の課題”といっても過言ではない。

 Texas Instruments(TI)が米国テキサス州ダラスに所有する研究所「Kilby Labs(キルビーラボ)」のPower, Isolation and Motors部門でマネジャーを務めるJeffrey Morroni氏は、「電力密度の改善とは、より少ないシステムコストで、システムの機能を拡張する、ということだ。われわれの顧客は常に、より高い電力密度を求めていて、TIはそれに応えるべく尽力している」と語る。

 だが、電力密度の向上は決して簡単ではない。Morroni氏は、電力密度の向上を制限している要因として、「コンバータの電力損失」と「システムの放熱性能」を挙げる。

 コンバータの電力損失は、主にスイッチング損失と伝導損失の組み合わせに起因する。電源では、コンバータICのスイッチング周波数を高くし、小型の受動部品を使えるようにすることで電源サイズの縮小を図ってきた。だが高速なスイッチングによってスイッチング損失が増大し、発熱してエネルギーが失われてしまう。

 システムの放熱性能は、DC/DCコンバータICのパッケージの放熱性能とも言い換えられる。パッケージの放熱性能が優れていれば、極端な温度上昇は抑えられる。だが、パッケージが小型化すればするほど、一般的に放熱特性は悪化する。

 スイッチング周波数の高速化もパッケージの小型化も、電源では重要なトレンドだが、電力密度の点ではトレードオフとなり得るのだ。Morroni氏は、これらの要素がトレードオフとはならないような、電力密度向上の技術を開発することが重要だと説明する。「つまり、DC-DCコンバータICにおいていかに熱を抑えるか、そしていかにパッケージから放熱させるか、この2つが鍵となる」(同氏)

 これらを踏まえ、TIは「スイッチング損失の低減」「パッケージの放熱性能の向上」に加え、「トポロジーの革新」「統合の強化」を加えた4つの主要分野を柱に、電力密度向上に向けた技術開発に取り組み続けている。

新プロセスと新素材で、スイッチング損失を低減

 TIは、新しい電源プロセスの開発と、GaNパワーデバイスの開発という2つの方向から、スイッチング損失の低減に取り組んでいる。

 スイッチングFoM(性能指数)を改善した新しい電源プロセスを用いた「TPS62088」は、前世代の電源プロセスを用いた「TPS54319」に比べて、変換効率を維持したまま2倍のスイッチング周波数を実現している。スイッチング損失を増加させることなく、外部インダクタのサイズを半分にすることが可能だ。

 本質的に低損失を実現できる新しい素材でパワーデバイスを開発することも、大きな効果がある。その一つがGaNパワーデバイスだ。TIがここ10年、イノベーションの最前線で投資を強化してきた分野である。オン抵抗が低い、出力電荷が小さい、逆回復時間がゼロといったGaNが本質的に持っている特性により、GaNパワーデバイスを用いたパワー・コンバータは、Siより高いスイッチング周波数でも、発熱を低く抑えられる。「GaNパワーデバイスは、SiCパワーデバイスに比べて2分の1、Siに比べると10分の1にスイッチング損失を低減できる」(Morroni氏)

400Vバスから電力を受け取る際の損失の比較。TIのGaN-FET(耐圧600V)を、業界で最高クラスのSiC-MOSFET、スーパージャンクションSi-MOSFETと比較すると、TIのGaNが突出して低損失であることが分かる

フリップチップや大型バンプでパッケージの放熱特性を上げる

標準的なQFNパッケージ(a)と「HotRod」(b)

 標準的なQFNパッケージでは、ボンディングワイヤを用いてダイとリードフレームを接続する。TIが開発した「HotRod」は、ダイとリードフレームの間に、銅ピラーとフリップチップインターコネクトを配置することで、ボンディングワイヤを取り除く。「これによって、ボンディングワイヤからの寄生インダクタンスによる損失を低減できる」(Morroni氏)

 改善されたパッケージの熱に対する顧客の高まる要求に応えるために、TIは最近、既存のHotRodパッケージをベースにしたEnhanced HotRod QFNテクノロジーを開発。「一定の顧客がQFNパッケージを好む理由は、放熱を改善するダイ接続パッド(DAP)のためだ」(Morroni氏)

 そこでTIは、「拡張型HotRodテクノロジー」として、大型のDAPを取り付けたHotRodを開発。従来のHotRodに比べ、温度上昇において約15%の改善を実現した。

(a)大型DAPを採用した拡張型HotRod/(b)は従来のHotRodの放熱特性で、(c)は拡張型HotRodの放熱特性。拡張型HotRodは、明らかに温度が低い

 さらにTIは、WCSP(Wafer Chip Scale Package)のバンプ面積を広げた「PowerCSP」も開発した。標準的なWCSPの円形バンプの一部を、より面積の広いはんだバーに置き換えたパッケージだ。WCSPでは、バンプ面積が大きいほど放熱特性が改善される。TPS62088には、標準のWCSPの他にPowerCSPを用いたバージョンがあり、両者を比較すると温度上昇は約5%減少している。

 「顧客の要求に合わせて、QFNのような標準的なパッケージの他、HotRod QFN、拡張型HotRodやPowerCSPを適用した製品ポートフォリオも拡充していく」とMorroni氏は述べる。

新しいトポロジーの採用

 ゲートドライバー技術のような回路設計や新しいトポロジーの採用も、電力密度の向上につながる。

GaNスイッチを使用するFC4Lコンバータトポロジー

 例えば、再生エネルギー向けのグリッド・タイ・インバーターでは、FC4L(flying capacitor four-level)コンバータトポロジーを用いることで、電力密度が2倍に向上した。「変換効率は、5kWシステムで99.2%を達成した」(Morroni氏)。FC4Lコンバータトポロジーでは、FC4Lコンデンサに電荷をためておく。これによって受動部品のサイズが低減でき、電力密度を上げることができる。

 このトポロジーとGaNパワーデバイスを使うことで、1200Vの高電圧領域もサポートできるようになる。「TIのGaNパワーデバイスは耐圧600Vだが、FC4Lコンバータトポロジーを用いることで、空冷のみで耐圧1200Vのシステムをサポートすることが可能だ。1200VアプリケーションはGaNに適していないという考えもあるが、適切なトポロジーと組み合わせることで、GaNは1200Vでも最高の電力密度を実現できると考えている」(Morroni氏)

進化する統合技術

 電力密度を高める4つ目の注力分野が、統合だ。TIは、マルチチップ・モジュール(MCM)の統合、受動部品をICパッケージ内に統合すること、複数の部品を同一パッケージ内に3D(3次元)積層して統合すること、という3つの方法を提供する。

 一般的に、顧客にとって統合の主な利点は使いやすさだ。ただし、統合はコストの増加を伴う場合がある。TIにおいて、自社製造と先進的なテクノロジーによる統合は、電力密度を向上するための重要な要素となっている。サイズと容積を削減することで、システムコストと電力密度の両方の改善につながるからだ。

 一例として、TIは2020年2月にトランスが統合されたUCC12050 DC/DCコンバータを発表。トランス、シリコン、パッケージの全てを最適化して統合することにより、ディスクリートソリューションと比較し、容積を最大80%削減。それにより、材料費が大幅に削減され、システムコストも大幅に改善された。

 もう一つの例として、「LMG3410」は、GaN FETとゲートドライバーを統合したパワーステージだ。ゲートドライバーにGaN FETを統合することで、スイッチングゲートドライブのループインダクタンスが低下し、スイッチング速度の上昇や動作の信頼性向上、部品点数の減少につながる。

TPS82671

 一般的に、統合することによりコストが高くなる可能性がある。だが、Morroni氏は、「TIは、電力密度の進化と自社製造を組み合わせることにより、ソリューション・サイズを大幅に小さくしつつ、システムコストも低減できる」と述べる。

 過去4〜5年間で、TIはパワー・コンバータの電力密度を2倍にすることに成功した。だが、「その成功は、1つの技術によってなし得たものではない」とMorroni氏は強調する。スイッチング損失の低減、パッケージの放熱特性の向上、トポロジーや回路設計の改善、そして統合技術の開発。これら4つのそれぞれにおいて着実かつ地道な技術開発を続けることで、TIはトレードオフを跳ね返し、顧客の高電力密度化を後押しし続けている。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年10月28日

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