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セラミックキャパシター(5) ―― 高誘電率系キャパシターの温度特性中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(49)(2/3 ページ)

» 2020年11月27日 09時00分 公開

JIS規格による種類2キャパシターの表記方法

 JIS-C-5101-9:2018 種類2では3桁の文字・数字コードを使います(IEC/EN60384-9:2015相当)。

表2:JIS-C-5101-9:2018の表2 キャパシター温度特性の推奨値
サブ
クラス
記号
電圧印加なしの20℃の静電容量に対するカテゴリ温度範囲内の直流電圧印加あり・なしの静電容量の最大変化率(%) カテゴリ温度範囲及びその数字記号
電圧印加 -55℃/
+125℃
-55℃/
+85℃
-40℃/
+85℃
-25℃/
+85℃
+10℃/
+85℃
なし ありa) 1 2 3 4 6
2B ±10 個別規格の規定による -- --
2C ±20 -- --
2D +20/-30 -- -- -- --
2E +22/-56 --
2F +30/-80 --
2R ±15 -- -- -- --
2X ±15 +15/-25 -- -- -- --
注  表中の〇は適用を示し、"--"は不適用を示す
注a) 印加電圧は直流定格電圧又は個別規格に規定された電圧とする

 また、表面実装用のチップセラミックキャパシターの特性はJIS-C-5101-22:2014で次のように規定されています。大きくはカテゴリ「0」が追加されていますが、加えてサブクラスの減少や適用カテゴリの変更などがありますのでリード付き品とは別物と考えた方がよいでしょう。表3に関係するJISの表を示しますが同じ分類記号であれば一般品、表面実装品ともに同じ規格であることが分かります。

表3:JIS-C-5101-22:2014の表3 キャパシター温度特性の推奨値
サブ
クラス
記号
電圧印加なしの20℃の静電容量値に対するカテゴリ温度範囲内の直流電圧印加あり・なしの静電容量の最大変化率(%) カテゴリ温度範囲および、その数字記号
電圧印加 -55℃/
+150℃
-55℃/
+125℃
-55℃/
+85℃
-40℃/
+85℃
-25℃/
+85℃
+10℃/
+85℃
なし あり注1) 0 1 2 3 4 6
2B ±10 個別規格の規定による -- -- --
2C ±20 -- -- --
2D +20/-30 -- -- -- --
2E +22/-56 -- --
2F +30/-80 -- --
2R ±15 -- --
注1:直流電圧は定格電圧または個別規格に規定の電圧とする
注2:表中の〇は適用を示し、"--"は不適用を示す
注3:カテゴリ上限温度が125℃を超える場合は直流電圧印加あり・なしの両方について、静電容量の最大変化率を個別規格に規定することが望ましい

 例えば2C1特性はカテゴリ温度−55℃〜+125℃で±20%の容量変化を意味します。
 また以前の呼称法で用いられていたB特性、F特性などは表4の特性ですから表3の特別な場合の呼称法だということが分かります。

表4:JIS呼称法比較
旧呼称 変化幅 温度範囲 基準温度 1/2定格印加時 JIS新呼称
B特性 ±10% -25〜+85℃ 20℃ +10/-30%以内 2B4
R特性 ±15% -55〜+125℃ 20℃ +15/-40%以内 2R1
F特性 +30%, -80% -25〜+85℃ 20℃ +30〜−95%以内 2F4

容量の電圧依存性

 種類2の誘電体は強誘電体ですので図2に示すように誘電分極Pと電界Eとの間でヒステリシス曲線を描きますが、セラミックキャパシターの第2回で説明したようにこの曲線の局所的な傾きが1式のように比誘電率に関係します。

図2:誘電体のヒステリシス曲線
出典:https://hr-inoue.net/zscience/topics/dielectric2/dielectric2.html

 誘電分極Pは分極率χ(=εr−1)を用いて表すとP=ε0χEから局所比誘電率εrLは、

です。したがって図2の曲線で言えば、

  • 電場(電界)が0に近い中心領域では曲線が垂直に近いのでεrLは大きくなり(カタログ値)、
  • 直流電圧による電界Eが強くなる(曲線左右端)と曲線が寝てくるのでεrLは低下します。

 一般に高誘電率系のセラミックキャパシターの電圧依存性はこのようなヒステリシス特性に起因します。加えて強誘電体の単位ドメイン(単位領域)が反転するのに一定のエネルギーや時間が必要ですので高周波域でヒステリシス曲線は丸く広がります。
 種類1の常誘電体にはないこの現象によって種類2の誘電体は高周波域で比誘電率εrが低下したりtanδが増加したりします。このため種類2のセラミックキャパシターに過大な高周波リップル電流を流すと自己発熱増→温度上昇→tanδ増加→自己発熱増、といった熱的正帰還が発生します。ですので高周波リップル電流は保証値以下になるように厳重に管理されなければなりません。詳細は仕様書によりますが一般には他からの温度の影響を除いて自己温度上昇(ΔT)だけで5℃以下です。発熱量が微少なので測定には細心の注意が必要です。

図3:種類2セラミックキャパシターの各種依存性
出典:Wikipedia Ceramic Capacitor

 この温度特性の測定基準はJISでは表5のように定められていて定格電圧の有無も含めて測定されます。

表5:JIS/IEC温度特性手順書
手順1 手順2 手順3 手順4 手順5 手順6 手順7 手順8
電圧印加
なし
定格電圧
印加
電圧印加
なし
Ta=20±2℃ カテゴリ
下限±3℃
Ta=20±2℃ カテゴリ
上限±2℃
Ta=20±2℃ カテゴリ
下限±3℃
Ta=20±2℃

 前回と合わせて種類1、2のセラミックキャパシターの温度特性について説明をしてきました。特に種類2は複雑な温度特性を描くので、設計にあたっては想定される部品温度でどのような容量変化になるのかを考慮することがポイントになります。
 次回はセラミックキャパシターの新しい技術や使用にあたっての注意事項を説明したいと思います。

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