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高電力PoE「802.3bt」について知っておきたいこと供給電力が増加した新規格(2/3 ページ)

» 2021年01月12日 11時00分 公開

Autoclass機能

 802.3btのセクション145.8.8.2には、Autoclass(自動分類)と呼ばれる、物理層を分類するオプションの拡張機能があります。この機能をイネーブルにすると、PSEは接続されたPDが実際に消費する最大電力を決定します。Autoclassは、シングルシグネチャPDに対してのみ定義されます(シングルシグネチャの定義については次のセクションを参照)。

 PSEがAutoclassを実装している場合、pd_autoclassがTRUEの間にPOWER_ONになると、PAutoclassを測定します。本稿の「802.2btのワーストケース例」というタイトルのセクションを参照してください。これはPDに送出する電力が所望のフルパワーに達しない場合について説明しています。Autoclassがイネーブルの場合、この状況を修正できます。

シングルシグネチャ/デュアルシグネチャ

 802.3btには、シングルシグネチャとデュアルシグネチャと呼ばれる2種類の新しいPDトポロジーが導入されています。シングルシグネチャPDは両ペア間で同じ分類シグネチャMaintain Power Signature(MPS:電力維持シグネチャ)と検出シグネチャを備えています。デュアルシグネチャPDは両ペアで独立した異なるシグネチャを備えています。802.3bt規格では、新しく追加されたConnection Check(接続チェック)機能により、シングルシグネチャPDおよびデュアルシグネチャPD接続の違いを認識する機能を実現しています。

 このトポロジーでは2つの異なるペアが必要なため、デュアルシグネチャPDには、2つの並列のPDインタフェースが必要となります。各PSEからの電力は、各PDインタフェースの後で合計されます。ただしこれは、よりコストがかかるソリューションで、シングルシグネチャ・ソリューションを選択すれば、コストは半分に抑えられます。デュアルシグネチャPDの例としては、片方のペアはカメラに、別のペアがヒーターやズーム用モーターに接続されている監視カメラが考えられます。

 PD側には通常、PSEからの各データペアにトランス(ギガビットイーサネットについては図1を参照。Vpd,Bは10/100Base-T用でも可能)、アクティブブリッジ整流器、802.3bt PDインタフェースコントローラーおよび、DC-DCコンバーターが必要です。ショットキーダイオード、抵抗、コンデンサーも、PDに追加する場合があります。

図1:オン・セミコンダクターのブリッジ整流器「FDMQ8205A」とIEEE 802.3bt対応PoE-PDインタフェースコントローラー「NCP1096」を使用した、802.3btのPD側アプリケーションの回路図 (クリックで拡大)

 図2はタイプ4、クラス8のPDが71.3Wという最大電力を消費する可能性があることを示しています。PSEの許容最低電圧52Vでサポートできるワーストケースチャンネル抵抗である6.25Ωの場合、1.73Aの電流がケーブルに流れます。

図2:71.3Wの一定電力(クラス8)を消費する負荷となる6.25Ωのワーストケースチャンネル抵抗。1.73Aすなわち導体(銅線)1本当たり0.433Aの電流は、規格に準拠したシステムに流すことができる最大公称電流となる (クリックで拡大)

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