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DC-DCアプリケーションの考え方(3)コンバーターの直列接続や絶縁の強化DC-DCコンバーター活用講座(42)(2/2 ページ)

» 2021年01月21日 10時00分 公開
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絶縁の強化

 DC-DCコンバーターをカスケード接続して、絶縁を強化することもできます。コンバーターの両端の電圧ストレスが均一に分配されるようにするには、バランス抵抗が必要です。そのため、この回路は安全性重視のアプリケーションには使えません。

図3:絶縁を強化するカスケード接続したコンバーター

 非常に高い絶縁性能を必要とするアプリケーションの例は、高真空ポンプの監視回路です。高真空は、最高7kVdcに達する動作電圧を使用するイオンポンプを使ってはじめて到達することができます。10kVdcの絶縁定格のDC-DCコンバーターは適していません。この絶縁電圧定格は1秒間に対してだけ規定されているからです。コンバーターの両端に連続的に7kVdcが加わる場合、1秒間に14kVdcの定格が必要になるでしょうし、このようなコンバーターは入手が困難で、価格も特別なものになるでしょう。

 しかしながら、図3に示すように、定格が10kVdc/秒の低価格のコンバーターを2個デイジーチェーン接続することができます。これらのコンバーターの絶縁バリア抵抗は10GΩオームなので、電圧バランス抵抗はこの値の100分の1以下にします。

5Vレールのクリーンアップ

 アナログ回路とデジタル回路が5V電源レールを共有しているとき、デジタルICからアナログICへの高周波干渉が問題になることがあります。オーディオやビデオのアプリケーションでは、デジタルノイズがアナログ信号に重なって画像にノイズが入ったり、オーディオで望ましくないヒス音が聞こえたりすることがあるので、特に注意が必要です。

 図4は一見意味のない回路、つまり5V入力で5V出力の非絶縁型コンバーターを示しています。この回路に実際意味があることは、DC-DCコンバーターの仕様を見れば分かります。

 このコンバーターの入力範囲は5V ±10%、出力は5V ±5%なので、5V入力の小さな変動を除去します。

 オーディオ回路やビデオ回路が同じ電源を共有している場合、普通は共通グランド接続が必要です。

図4:5Vから5Vへの非絶縁型コンバーター

 これに似た別の例は、図5に示す非常にクリーンな5V電源です。この場合、リニアレギュレーターを使って、非常に低ノイズの出力レールを供給します。リニアレギュレーターは5V入力に単純に直列接続することはできません。低ドロップアウト(LDO)レギュレーターであっても、数百ミリボルトのヘッドルームが必要です。

 このアプリケーション例では、デュアルの3.3V出力のSMD DC-DCコンバーターを使って6.6Vを供給し、それを適切な低ノイズのリニアレギュレーターによって5Vに安定化することができます。デュアル出力のDC-DCコンバーターの共通ピンは、使用しないのであれば(NC)オープンのままにしておきます。適切な部品選択により、この回路を使って出力ノイズレベルを5µVp-p以下にすることができます。

図5:非常にノイズの低い5V電源

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執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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