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» 2021年02月24日 10時00分 公開

ASIL-D準拠のワイヤレスBMSが実現可能に、緻密な電源監視技術がかなえるEVのバッテリ管理は大きく変わる

電気自動車やハイブリッド自動車で注目度が高まっているワイヤレスBMS(Battery Management System)。Texas Instruments(TI)は、同社が強みとする高精度な電源制御技術とワイヤレスマイコンを組み合わせた、最新のワイヤレスBMSソリューションを発表した。TÜV SÜDの安全性評価に準拠した、ASIL-Dのシステムを「業界として初めて」(TI)実現した。

[PR/EDN Japan]
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「ワイヤレス」への移行が始まったBMS

 自動車の電動化が進む中、ワイヤレスBMS(Battery Management System)への注目が高まっている。電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)にはリチウムイオンバッテリが搭載されているが、充電1回当たりの走行距離を伸ばすには、バッテリの性能をいかに最大限に引き出し、効率的にエネルギーを使用できるかが重要になる。そのために不可欠なのがBMSだ。BMSが、バッテリセルやバッテリパックの充放電状態やセルバランスを厳密にモニタリングし、制御できれば、走行距離を伸ばせるだけでなく、バッテリの使用効率が向上し、バッテリそのものの寿命を伸ばすことにもつながる。

 現在のBMSアーキテクチャは有線が主流だ。ケーブルを使ってバッテリセルをデイジーチェーン構成で接続し、セルの状態や充放電のモニタリング/制御に関するデータをやりとりしている。堅ろうで安全性が高い方法だが、大きな課題がある。構成が複雑な上に、ケーブルが非常に重くなるのだ。ケーブルのコストがかかるだけでなく、クルマが重くなるので走行距離も短くなり、ケーブルによる不具合が発生するケースもある。バッテリセルやケーブルの交換が必要になれば、メンテナンスも重労働だ。

TI ワールドワイド・オートモーティブ・パワートレイン部門でゼネラルマネージャを務めるKarl-Heinz Steinmetz氏

 そのため、ケーブルを取り除くことができるワイヤレスBMSに対するニーズが高まっている。ワイヤレスに移行することで、軽量化やケーブル由来の不具合を低減できる他、電圧と温度を時間同期させて測定しやすくなる、実装面積が小さいので設計がシンプルで配置も簡単になるといったメリットも生まれる。

 Texas Instruments(TI)のオートモーティブ・システム事業でワールドワイド・オートモーティブ・パワートレイン部門 ゼネラルマネージャを務めるKarl-Heinz Steinmetz(カール・ハインツ・スタインメッツ)氏は「現在のEVに求められる要件は、充電1回当たりの走行距離、高い性能、メンテナンスのしやすさ、そして機能安全だ。こうした要件に応える上で大きな役割を果たすのがワイヤレスBMSだ」と語る。

電圧を高精度で測定する最新のバッテリモニター/バランサー

 TIは2021年1月、EV/HEV向けの最新のワイヤレスBMSソリューションを相次いで発表した。高精度バッテリモニター/バランサー「BQ79616-Q1」と2.4GHz対応のワイヤレスマイコン「SimpleLink CC2662R-Q1」(以下、CC2662R-Q1)だ。CC2662R-Q1は、「Arm Cortex-M4」コアを搭載したマイコンで、AEC-Q100に準拠している。

 BQ79616-Q1は、最大16セルのバッテリモジュールの電圧と温度を測定する。具体的には、800Vまでのシステムの電圧を、高精度かつ200ミリ秒未満で測定することが可能だ。TIのバッテリモニター/バランサーのファミリーとしては初めて、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)などさまざまな種類のバッテリのモニタリングに対応し、チップレベルでASIL-Dに準拠していることも特長だ。

 デジタルローパスフィルタとA/Dコンバータを内蔵していることから、あらかじめフィルタ処理を行った電圧を測定できるので、誤差が2mV未満と非常に高い精度でセル電圧を測定することができる。

 さらに、バッテリに不具合が発生した際に、SPI/UART通信インタフェースICである「BQ79600-Q1」を介してメインマイコンをウェイクアップする「フォルト時ウェイクアップ機能」を搭載。特許を取得している同技術を活用することで、駐車している間や、クルマの電源がオフになった時に、システムを完全にシャットダウンできるので、バッテリ電力の節約にも貢献する。

 このBQ79616-Q1は、有線BMSも構築できるが、ワイヤレスマイコンのCC2662R-Q1と組み合わせることで、容易にワイヤレスBMSを実現することが可能になる。TIは、車載用のワイヤレスBMSに特化したワイヤレスプロトコルを開発。CC2662R-Q1は、このプロトコルを使うことで、BQ79616-Q1とホストシステム間で堅ろうかつ安全な通信を実現する。

 Steinmetz氏は、「ワイヤレスBMSにおいては、ネットワーク可用性が非常に重要な要素になるが、TIの独自プロトコルにより、99.999%以上のネットワーク可用性を実現できた。ネットワーク再起動時間も300ミリ秒と非常に速い。これは、EV/HEVのエンジンをかけると、即座に各バッテリモジュールがネットワークに接続され、バッテリの状態をモニタリングしたり制御したりできるということだ」と説明する。さらに、ネットワークのパケットエラー率は10−7未満を実現。「これは、業界のベンチマークの値だ」とSteinmetz氏は語る。

 もう一つ、ワイヤレスBMSにおいて最も重要な要素がセキュリティだ。有線BMSは閉じたシステムなのでセキュアな通信が可能だが、ワイヤレスではセキュリティ関連の設計を怠るとシステムに侵入される危険性が高くなってしまう。TIのワイヤレスBMSソリューションでは、キーの受け渡し/更新、固有デバイス認証、デバッグセキュリティ、JTAGロックによるソフトウェアIP(Intellectual Property)の保護、AES 128ビット暗号アクセラレーター、メッセージ整合性のチェックなど、TIが提供するあらゆるセキュリティソリューションを実装している。これにより、ネットワークセキュリティの脅威を軽減することが可能だ。

TI独自のプロトコルにより、99.999%以上のネットワーク可用性と、300ミリ秒という高速再起動を実現した

 スケーラビリティも大きな特長だ。1個のCC2662R-Q1と、1個または複数のBQ79616-Q1で、16セル、32セル、64セルといった異なる構成のシステムに対応したバッテリモジュールを構築できる。最大100ノードまで対応することができ、遅延は1ノード当たり2ミリ秒以下を実現している。これら全てのノードで、時間を同期させて電圧や温度を測定できる。

TIのワイヤレスBMSソリューションは、スケーラビリティも備えている

 Steinmetz氏によれば、標準的なEV1台につき、CC2662R-Q1が8〜9個必要になるという。「マスターノード用に1個、そしてバッテリモジュールごとに1個ずつ必要だ。現在、EVには平均8個のバッテリモジュールが搭載されているので、少なくとも9個(1+8個)は必要だろう」(同氏)

TÜV SÜDによる評価で「ASIL-D」に準拠

 TIの最新のBMSソリューションは、ASIL-Dを実現するためのTÜV SÜDの安全性評価に準拠している。「これは業界で初めてだ」とSteinmetz氏は述べる。「機能安全は最も重要な要件の一つだ。BMSにも厳しい要求が課せられるようになってきており、昨今の流れとしてはASIL Dに準拠することが求められるようになっている」(同氏)

ワイヤレスBMSソリューションは、ASIL-Dにシステムレベルで準拠する。TÜV SÜDによる評価レポートも提供が可能だ

 有線BMSからワイヤレスBMSに切り替えることで削減できるコストは、自動車に採用されているアーキテクチャ次第ではあるが、Steinmetz氏は「BOM(Bill of Material)は確実に少なくなる。さらに、ケーブルがないので製造や組み立てが容易になるというメリットもある」と語る。

 さらにSteinmetz氏は、バッテリがEoL(End of Life)を迎えた後も中古市場で販売できるようになるとも語った。BQ79616-Q1によって高精度で電圧と温度が測定できるということは、バッテリ状態が、より正確に分かるということだ。「ワイヤレスBMSによりバッテリ状態のデータを保存し続けることができれば、従来のようにバッテリの化学物質を再利用するだけでなく、EoLを迎えたバッテリそのものを再利用できるようになる」(Steinmetz氏)

 BQ79616-Q1は10mm角の64ピンHTQFPで提供され、1000個購入時の単価は6.90米ドル。CC2662R-Q1は7mm角の48ピンQFN WF(ウェッタブル・フランク)パッケージで、1000個購入時の単価は2.79米ドルとなっている。無償で提供される「SimpleLink ワイヤレスBMSソフトウェア開発キット」や、999米ドルのSimpleLink ワイヤレスBMS開発キット「CC2662R-Q1-EVM-WBMS」をダウンロードすることで、迅速に設計を開始できる。

 EV/HEVに特化したTIのワイヤレスBMSソリューションにより、高性能かつセキュアなワイヤレスBMSの構築が、従来よりも格段に容易になる。「TIが提供する画期的なワイヤレスBMSソリューションによって、EVの性能向上と需要拡大が一段と加速すると確信している」(Steinmetz氏)

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2021年3月23日

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