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マイコン製品出荷時に実施されているテスト内容ハイレベルマイコン講座【出荷テスト編】(2)(2/5 ページ)

» 2021年03月10日 10時00分 公開

2.DCテスト

 DC特性には、(1)汎用I/Oのリーク電流、(2)汎用I/Oの出力特性、(3)汎用I/Oの入力特性、(4)消費電流、などがあるが、ここで行うのは(1)(2)で、(3)はファンクションテスト、(4)は電源関連のテストでそれぞれ行う。

(1)汎用I/Oのリーク電流

 図3に、再びSTM8AFシリーズの汎用I/Oのブロック図を引用する。

図3:汎用I/Oのリーク電流のテスト

 図3中、ピンク色の丸で囲われている部分が出力バッファのMOSであり、VDD側がPMOS、VSS側がNMOSである。一方、青色の丸で囲われている部分がプルアップ抵抗を形成するMOSである。これらすべてのMOSをオフすると、汎用I/Oはハイインピーダンスになる。この状態で端子に所定の電圧を印加し、流れる電流を検知する。正常ならば、非常に微小な規定以内のリーク電流(図4参照)しか流れないが、VSS側に短絡故障が潜在している場合は端子に規定以上の電流が流れ込む。また、端子にVSSと同じ電圧の0Vを印加する場合は、端子から既定の電流以上の電流が流れ出て、VDD側の短絡故障を検知できる。

図4:汎用I/Oの電気的特性出典:STM8AF6246のデータシート

(2)汎用I/Oの出力特性

 図4の表中にVOHとVOLの規格を示す。データシートに記載されているVOHとVOLの定義は「マイコン講座 データシートの読み方編(3):データシートの勝手な解釈は禁物! いま一度、数字の意味を考えよう」を参照してほしい。

 VOHは「VDD=5.0V, I=3mA」と「VDD=3.0V, I=1.5mA」で規定されている。また、VOLは「VDD=5.0V, I=8mA」、「VDD=5.0V, I=3mA」、および「VDD=3.0V, I=1.5mA」で規定されている。したがって、この条件で、ISVMにより電圧を確認すれば良い。

 図5(a)はVOHをテストする回路を示した図である。出力バッファのPMOSをオン、NMOSとプルアップ抵抗のMOSはオフする。そして、VDDを5Vまたは3Vに設定し、端子から3mAまたは1.5mAの電流を流し、この時の端子の電圧を測定する。VOHの規定は「VDD -0.5V」または「VDD -0.4V」で規定されているので、VDDにそれぞれ5Vと3Vを代入した計算結果と、測定値を比較して良否を判断する。

図5:汎用I/Oの出力特性(VOH/VOL)のテスト

 図5(b)はVOLのテスト回路を示した図である。出力バッファのNMOSをオン、PMOSとプルアップ抵抗のMOSはオフする。VDDを5Vまたは3Vに設定し、端子から8mA、3mA、1.5mAいずれかの電流を流し、この時の端子の電圧を測定する。VOLの規定は計算式ではなく、直接数値で規定されているので、それらの数値と、測定値を比較して良否を判断する。

 今回例に挙げたSTM8AF6246には、プルアップ抵抗が内蔵されている。プルアップ抵抗のテストもDC特性のテストで行う(図6参照)

図6:汎用I/Oのプルアップ抵抗のテスト

 出力バッファのPMOSとNMOSをオフ、プルアップ抵抗のMOSのみをオンし、端子に所定の電流を流して電圧を測定する。電流と電圧が分かれば、オームの法則(抵抗=電圧÷電流)から抵抗値を求めることができる。

 どちらのテストにおいても、実際に流す電流値と判定する電圧値は、データシートに記載されている値よりも少し厳しくする。具体的な値は、設計値に基づいて決定されるが、もちろんこれは設計部外秘である。

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