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「Bluetooth 5.2」、3つの新機能を理解する注目される「アイソクロナスチャネル」など(2/2 ページ)

» 2021年03月11日 11時00分 公開
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アイソクロナスチャネルのサポート

 今回お伝えしたいBluetooth 5.2の最も重要な新機能は、アイソクロナスチャネルのサポートです。“アイソクロナス”という言葉の意味を調べると、「等時生」を意味しており、オーディオでは、「決められた時間内に一定のデータ送信を行い、複数の受信者間で同じタイミングで聞こえるということ」を意味しています。

 アイソクロナスチャネルは、次世代BluetoothオーディオであるLE Audioの基盤として機能します。LE Audioは、LEアイソクロナスチャネルと呼ばれる新しい物理チャネルをBLEに取り入れています。これは、1Mbp PHY、2Mbp PHYや、s=2、s=8といったCoded PHYでも使用できます。

 アイソクロナスチャネルは、接続型の通信とブロードキャストのような非接続型通信の両方でサポートされています。

 接続型のストリームは、「CIS(コネクテッド アイソクロナス ストリーム)」と呼ばれます。左右のイヤフォンに別々に送信する場合などは、2つのCISを同期させる必要があります。これらは、「CIG(コネクテッド アイソクロナス グループ)」と呼ばれ、複数のCISで構成されます。同じCIG内のCISはタイミング参照データを共有するため、複数のレシーバーで同期して聞く場合に必要となります。CIGを使用すると、マイクを含むイヤフォンなどの双方向データ転送も可能になり、音を送信する機器に対して制御データを送信することもできるというメリットがあります。

図2:接続型のストリーム (クリックで拡大)

 デバイスはブロードキャストなどの非接続型通信用に複数のCIGを作成し、同期ストリームのグループを使用して、単一の機器(音源)から複数の機器(聴衆)にデータを同期配信できることも重要なポイントです。各ストリームは「BIS(ブロードキャスト アイソクロナス ストリーム)」と呼ばれており、複数のBISで構成されたものは「BIG(ブロードキャスト アイソクロナス グループ)」と呼ばれます。複数の聴衆にオーディオ データをストリーミングするTVの例で見てみましょう(図3)。CIGの場合と同様に、デバイスは複数のBIGを構築することができます。

図3:非接続型の通信 (クリックで拡大)

 アイソクロナスチャネルで最も重要なパラメーターは、イベントが発生する間隔を定義するISOインターバルです。各イベントは複数のサブイベントに分割され、ISOインターバルの間隔は5ミリ秒〜4秒の範囲です。ISOインターバルは接続型通信で使用され、各サブイベントで、マスターはパケットをスレーブに送信し、スレーブはパケットで応答します。

 非接続型通信では、マスターが各サブイベントでパケットを送信するのみです。そしてこの場合、これらのパケットはアイソクロナス データまたはブロードキャスト制御情報データのいずれかです。

 アイソクロナスチャネルはデータの再送信もサポートしますが、接続型通信と非接続型通信では再送の取り扱いが異なります。ブロードキャストではスレーブからの影響を受けずにマスターが送信します。接続型通信ではスレーブのACK(確認)をマスターが受信しなかった場合に再送が行われます。また、パケットの損失や破損のリスクを軽減するために、再送信は元のパケットとは異なるチャネルで送信されることは重要なポイントです。

 セキュリティ面については、LEアイソクロナスを用いて転送される情報は、暗号化と認証が必要な場合と必要でない場合があります。全てのCISは、標準の非同期コネクションレスリンク(ACL)と関連付けられている必要があり、既存のセキュリティ要件にほぼ準拠していますが、いくつかの難しい違いがあります。BISの場合は、LEセキュリティモード3と呼ばれる新しいセキュリティモードが導入されています。このモードでは、認証と暗号化の入力としてブロードキャストコード(ユーザーには「Bluetoothプライバシーコード」と呼ばれます)が使用されます。

LE Audioの基盤となるアイソクロナスチャネル

 LE Audioは、現在のほとんどのオーディオアプリケーションにある従来のBluetooth Classic(BR/EDR)ではなく、BLEで動作します。文頭で紹介した通りアイソクロナス チャネルは、LEオーディオと呼ばれる次世代のBluetoothオーディオの基盤といえる要素です。

 LE Audioは、Bluetooth Classicと同じ機能をサポートするだけでなく、いくつかの新機能と拡張機能も導入しており、LC3と呼ばれる新しい高品質で効率的なコーデックが導入されています。LC3は「Low Complexity Communications Codec」(低複雑性コミ ュニケーションコーデック)の略で、2020年10月に仕様書が公開されました。

 また、左右のオーディオストリームを個別に送信したり、複数の言語でストリームを送信したりするなど、マルチストリーム機能も導入されています。その他の機能には、強化されたBluetooth補聴器のサポート、無制限でリスナーへのIO共有、そしてオーディオブロードキャストのサポートが含まれます。

著:Ellisys / ガイロジック株式会社

 Ellisysは2001年、スイスに設立された、USBやBluetoothプロトコルテストシステムの専業メーカーです。Ellisys Bluetoothアナライザ(BV1: Bluetooth Vanguard、BTR1: Bluetooth Tracker、BEX400: Bluetooth Explorer 400)はBluetooth 5.2の解析に対応しており、主力製品であるBV1はBluetooth 5.2アイソクロナス通信の事後複合化に対応しています。

 ガイロジックは2002年に設立され、2007年よりEllisysの日本総代理店として販売とサポートを行っています。

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