メディア
連載
» 2021年04月27日 11時17分 公開

電気二重層キャパシター(2) ―― 主な材料中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(53)(1/2 ページ)

前回は、電気二重層(EDLC)キャパシターの概要について説明をしました。大容量を生み出す源が電気二重層というエネルギーギャップにあることを理解いただけたでしょうか? 今回はそのようなEDLCがどのように作られているか、主な材料を紹介しながら説明していきます。

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

 前回は電気二重層(EDLC)キャパシターの概要について説明をしました。大容量を生み出す源が電気二重層というエネルギーギャップにあることを理解いただけたでしょうか? 今回はそのようなEDLCがどのように作られているかを中心に説明していきます。

*EDLC:Electrical Double Layer Capacitor 電気二重層キャパシター

EDLCの主要材料

 前回説明しました内部構造図を図1に再掲します。
 図1の構造図には強度を保つ導電性の金属などの薄板状の集電用電極、活性炭などから成るキャパシタ機能を分担する分極性電極、導電性の電解液、正負極分離用のセパレーターが図示されています。

図1:電気二重層キャパシターの内部構造1)

集電用電極(集電極)

 実際に電気二重層を生成する部分の電極を分極性電極と呼びますがこの分極性電極は活性炭などで構成されているために機械的強度が弱く、電流引き出し用のリード取り付け時などのストレスで形状を維持することができません。このため、実際のEDLCでは機械的強度に優れた集電用の集電極を設けてこの集電極表面に分極性電極を設けています。

 この集電極に要求される特性として次の特性が挙げられます。

  1. 電解液中で安定であること
  2. 充放電過程によって電極が劣化しないこと

 EDLCの全体構成や用いられる電解液の種類によって集電極の形状や材料は金属系と導電性樹脂系のものが使い分けられます。

  1. 電極基材としてのアルミニウム箔
  2. 導電性ゴム材料または導電性カーボンペースト
  3. 特別なケースとしてアルミニウムやチタン、白金などから作られた箔、金属繊維、あるいはメッシュ材料なども用いられる場合があります

分極性電極

 この電極は実際に電気二重層を生成しますので次のような特性が要求されます。

  1. 大容量化のために表面積が大きいこと
  2. 効率良く充放電電流を流すために高伝導性であること
  3. 電解液に対して不活性であること(安定性が高い)
  4. 製品化のためには安価であること

などです。これらの要求を満たす材料として炭素系材料、特に次に示す材料から作られる活性炭が主に用いられています。

  1. おがくず、ヤシ殻などの天然物
  2. ピッチ、コークスといった石炭石油などの鉱物
  3. フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロースなどの合成樹脂

 これらの材料から生産された活性炭をカーボンブラックなどの補助材料、粘性を与えるバインダーなどと混練し、乾燥、あるいは焼結して電極を構成します。なお、多くの活性炭の比表面積は1000〜3000m2/g程度ですが実際のEDLCでは安定性や入手性などの面から1500〜2500m2/g程度の特性の材料を10μm以下の粒経に粉砕して使われます。

 またこれらの活性炭は電解液によっても使い分けられ、一例として、

  • 水系電解液用活性炭電極としてはフェノール系の樹脂を接着剤として粉末活性炭をプレスしその後、炭化させたものがあります。
  • 有機系電解液用電極としてはPTFE(例テフロン)をバインダーとして加えて粉末活性炭をシート状にしたものがあります。

 活性炭には上記の要求特性の他、次の項目によっても使い分けられます。

  • 細孔径分布
    • 電解液イオンの直径は0.4〜0.6nmであり、電気二重層を形成して効率よく二重層容量を活用するには2nm以上の直径を有する細孔(メソ孔)を多く有すること。
  • 表面酸素濃度
    • 活性炭は主として炭素から成り、化学的に安定であり、耐熱性に優れますが結晶を構成する末端(端面)の炭素原子は活性が高く、酸素やさまざまな原子と結合することで表面に酸化物やその他の化合物を形成します。
       これらの化合物の中には酸素官能基(カルボキシル基、カルボニル基、水酸基など)が含まれる場合があり、疎水性である活性炭の表面特性を親水性に変える作用を持ちます。活性炭表面が親水性を持つと触れ合う電解液と電気化学的に反応し電解液を分解することがあります。ですのでEDLCの信頼性を高めるには酸素官能基はできる限り減らしておく必要があります。
  • 灰分
    • コークス系以外の活性炭は有機物を炭化(燃焼)させて作るためどうしても灰成分が残ります。この灰成分に含まれる微量金属(Na、K、Si、Al、Ca、Mg、Fe、Zn、Cu、Ni、Mn、Pb、Asなど)が電極の性能や寿命に影響を及ぼす場合があります。
  • 表面物理構造
    • 活性炭はその表面にグラファイト層が形成されます。このグラファイト層の並びが表面に垂直なもの(プリズム面)は平行なもの(基底面)よりも二重層容量が大きくなると言われていて、炭化前の原材料の選択や炭化方法の選択がEDLCの特性を左右します。
  • かさ密度(充填密度)
    • 小型で大容量のEDLCを得るためには、キャパシター体積あたりの表面積が大きい分極性電極が必要になります。すなわち、「活性炭をいかに多く充填(じゅうてん)するか?」が重要になります。しかしながら一般に活性炭は比表面積(m2/g)が大きくなると、充填密度が極端に小さくなる傾向があります。そのため比表面積を大きくすると結果として電極の密度が低下してしまう傾向にあり、両者のバランスを考慮する必要があります。
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.