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» 2021年04月27日 11時17分 公開

電気二重層キャパシター(2) ―― 主な材料中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(53)(2/2 ページ)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]
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バインダーと導電補助材

[バインダー(5-20Wt%)]
 活性炭はそのままでは微粒子、あるいは微繊維上ですから集電極に塗ることができません。カーボンブラックなどの導電補助材と混合された活性炭に粘性を与え、塗布ができるようにするための材料がバインダーです。バインダーは大きくは水系と有機系に分けられ、次のような特徴があります。
 水系バインダー:スチレン・ブタジエンゴム系の材料が主です。高い粘性があり柔軟性の高い電極シートに向いています。その他にはフッ素樹脂系のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがあります。

 有機系バインダー:主としてポリフッ化ビリニデン(PDVF)が有機溶剤とともに使われます。スラリー(泥状)にするのは水系よりも簡便ですがアルミとの粘着性は高くありません。有機溶媒の環境負荷の面から最近は減少傾向です。


[導電補助材(5〜10Wt%)]
 カーボンブラックやカーボンナノチューブのような黒鉛(グラファイト)の微粒子(微細繊維)、さらに高導電性のアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを添加する場合があります。

 このような混練物(スラリー)を集電用電極上に塗る手法として、

  1. 乾式:混合物を塗りプレス圧力を加える
  2. 湿式:混合物を溶剤に溶かしてペースト状のものを塗付して加熱し定着させる

の2つの手法があります。

セパレーター

 セパレーターは+−電極間のショートを防止し、電解液を保持し、かつ電解液中のイオンを透過する構造を有しています。
 従来の抄紙法で製造されたセルロース系のセパレーター以外にも多孔性有機フィルムセパレーターの一例としてPPS繊維(65Wt%)+アラミドパルプ(30Wt%)+PVA繊維(5Wt%)を混抄して、厚さ200μm程度に仕上げたものもあります。またセパレーターの厚みはEDLCの内部抵抗に影響し、さらに厚みにバラツキがあると電極間距離のバラツキから漏れ電流のバラツキにも関係しますので均一な厚みが要求されます。

 セパレーター材料としては次のような特性に着目して選定されます。

  • 電気的な絶縁性
  • イオン透過性
  • 分極性電極の微小な剥がれ粉の透過阻止
  • 機械的強度と可撓性の両立
  • 電気化学的に安定、耐久性(電解液との相性)

電解液

 もともと純水のようにイオン成分を含んでいないものは電荷が移動できないために導電性ではありません。導電性を得るには何らかのイオンが溶けていないとダメなのです。例えば導電性である塩水にはNaClが溶けていますが、これらは(Na++OH-)と(H++Cl-)という塩基と酸の組み合わせが水中に溶けていて各イオンが導電性を与えています。

 EDLC用の電解液はその溶媒(ベースになる液体)によって表1に示すように水系と非水系の2種類に分けることができます。

表1:電解液の比較
非水系(有機系) 水系
概要 有機系電解液が主体ですが、カチオンとアニオンといったイオンのみから成るイオン性液体も研究されています 一般に硫酸水溶液が用いられます。
開発中の電解液としては水酸化カリウム系水溶液があります
特徴 キャパシターの定格電圧は水の理論分解電圧の制限を受けず、高い分解電圧を持つことができます。ただし、イオン伝導率や熱安定性を向上させれば、安定的な定格電圧は3V以下が上限になります 広い電位範囲で酸化および還元を受けず、また長期における化学的な劣化を生じません。
しかし、常温における水の理論分解電圧が1.23Vであるため、硫酸水溶液を用いたEDLCの定格電圧は最大で約1Vです
安全性 可燃性 不燃性
分解電圧 高い(約2.5V) 低い(約1V)
使用温度範囲 広い 狭い
エネルギー密度 高くしやすい(J=1/2×C×V2で有利) 非水系に対して不利
内部抵抗 高い 低い
構成部材との相性 構成材料に安価な金属を使用できる 腐食性が強く他の構成部材の選択に制限がある
水分の影響 大気中の湿気の遮断に密閉構造が必要 水分の影響を無視できるため密閉構造は不要
価格 高価 安価
*:(H+イオンを持たない非プロトン性の有機溶媒)+(H+イオンを付加した有機オニウム塩)の組み合わせなど

電解液の要求機能

 ピット内の酸化膜から信号を取り出す電解液として求められる機能は、

  1. セパレーターに保持される適度な粘性、
  2. 活性炭の表面やセパレーターの内部によく浸透すること
  3. 低温で氷結や溶質の凝固がなく、また高温で特性が低下しない幅広い温度特性、
  4. 取り出された信号をロスなく伝える高い電気伝導率
  5. 溶媒、溶質は電気化学的安定性が定格電圧に対して十分な余裕、安定性を持つこと
    (電気化学的な酸化および還元といった反応を生じない)
  6. 封口ゴムから蒸発しにくく、カシメ部から漏れ出さない低液漏れ性
  7. 接触する部品を侵さない安定性
                                などです。

 次回は電解液についてもう少し詳しく説明するとともにEDLCの製造工程や主要特性について説明をしたいと思います。


1)WikiPedia 電気二重層コンデンサ 2020年8月25日 (火) 19:53


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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