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静電容量タッチキーコントローラーの原理Q&Aで学ぶマイコン講座(61)(2/3 ページ)

» 2021年05月10日 10時00分 公開

タッチパネルの種類

 タッチパネルには、抵抗膜方式、静電容量式、光学式、超音波表面弾性方式、電磁誘導方式など、さまざまなものがあります。このうち、一般的に使われていて、マイコンで制御できるタッチパネルは抵抗膜方式と静電容量方式の2つです。

 抵抗膜方式の場合、A-Dコンバーターと汎用IOが搭載されているマイコンで制御できます。

 抵抗膜式のパネルの最上層は柔らかい素材で構成され、表面が押されたときに、その下の2層の透明な導電膜が接触し、導電膜の電極を介して電流が流れるようになっています。その際に発生する電圧値をA-Dコンバーターでモニターすることでタッチを検出します。

 A-Dコンバーターと汎用IOは、ほとんどのマイコンに搭載されているため、タッチパネル用の特別なハードウェアは不要です。

 抵抗膜方式については、EDN Japanの記事「タッチパネルの原理」を参照してください。

 静電容量方式のタッチパネルにはタッチキーが設けられ、タッチキーの持つ寄生容量を利用して、タッチを検知します。タッチパネルの表面にはボタンやスライダー、ホイールなどのイメージが印刷されたシート、または透明で下の柄が見えるシートがあります。そのシートとタッチキーの間は、ガラスやプラスチックフィルムなどで構成されます。

 タッチパネルを操作する時に、指先が直接タッチキーに触れるわけではありませんが、本記事では指先がタッチキーの表面のシートを触ることを「タッチキーに触れる」と表現します。

静電容量方式の動作原理

 基本的な動作については図1で既に解説したので、ここからはマイコンの内部構造と動作原理について詳しく解説します。

 図2に、図1中のアナログスイッチをMOSFETに置き換えたマイコンの内部回路を示します。

図2:静電容量タッチキーコントローラーの内部回路

指先がタッチキーに触れる前

 最初に、初期化のためにCxとCsを放電して、残留電荷をゼロにします。放電にはPin2の汎用IOの出力バッファのMOS(S3)を使います。また、Cxの充電には、Pin2の汎用IOの出力バッファのMOS(S2)を利用します。Cxにたまった電荷をCsに移動させるには、スイッチMOS(S1)を設けます。Pin2の電位を検知する比較器には、汎用IOの入力バッファを利用します。したがって、しきい値(Vth)は、入力バッファのしきい値になります。

 これらの中で、静電容量タッチキーのために新設した回路はスイッチMOS(S1)だけなので、回路の増加はわずかで、マイコンのコストに影響することはありません。

 基本動作を大きく分けると、次の3つのステップで構成されます。

  • ステップ1:CxとCsを初期化(残留電荷を放電)するためにS1とS3をONして、すべての電荷をVssに放電(この時、S2はOFF)
  • ステップ2:S2をONし、S1とS3をOFFして、S2経由でCxを充電
  • ステップ3:Cxの充電が完了したら、S2をOFFし、S1をONしてCxの電荷をS1経由でCsに移動

 以降は、Pin2の電位が汎用IOの入力バッファのしきい値を超えるまで、ステップ2とステップ3を繰り返します。これらの動作と並行して、マイコンの内蔵タイマーを使ってステップ1の初期化からCsの充電時間を測定し、RAMなどの内蔵メモリに記憶しておきます。

指先がタッチキーに触れた後

 指先がタッチキーに触れると、指先の持つ寄生容量(Ch)がCxに加わるため、ステップ2でCxを充電する際にChも充電されます。そして、Csに移動される電荷はChとCxに溜まった電荷の総量になります。

 そのため、1回の電荷移動でCsに溜まる電荷の量が、指先がタッチキーに触れる前と比べて多くなり、Pin2の電位の増加分が大きくなります。

 結果的に、指先がタッチキーに触れるとCsの充電時間が短くなり、この時間の差分を検出することで、タッチを検知できます。

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