メディア
連載
» 2021年06月01日 11時00分 公開

電気二重層キャパシター(3) ―― 電解液の性能指数/主な製造工程中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(54)(1/2 ページ)

電解液について説明するとともに、EDLCの製造の流れについて説明していきます。

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]

 前回は電気2重層(EDLC)キャパシターの構造の概要について説明をしましたが活性炭電極の重要性についてご理解いただけたかと思います。今回は前回説明しなかった電解液について説明するとともに、EDLCの製造の流れについて説明していきます。

電解液の性能指数

 電解液に求められる特性は前回説明した適度な粘性、浸透性、温度特性、電気伝導率、低液漏れ性、部品への耐食安定性、電気化学的安定性などがあります。その中でも特にEDLCとしての性能を向上させる次の特性が重要視されます。

1)高い定格電圧
 キャパシターに蓄積される静電エネルギーEJは1式で表されます。
 ここでC:静電容量(F)、V:充電電圧(V)です。

1式

 1式から充電電圧が2倍になれば静電エネルギーは4倍になりますので高い定格電圧を持つ電解液が好ましいのは自明です。逆に言えば定格電圧が半減するような電解液を選択するなら4倍の静電容量が得られるような性能が必要ということになりますがこの選択は現実的ではありません。

2)電気化学的安定性
 EDLCにおいては明確な電気絶縁層が存在しません。このため電解液と分極性電極の接触界面(電気二重層)には外部印加電圧に相当する電圧が印加され、この電圧が分解電圧を超えると陰極側の界面ではイオンの還元や陽イオンの吸着が起こり、陽極側の界面ではイオンの酸化やOHイオンの吸着、陽極金属の溶出が起こります。正負にわたる分解電圧の範囲を電位窓といいますが広い電圧窓を持つ電解液が定格電圧を高くするために必要になります。

 表1によく使われる有機系電解液の溶媒(主剤)と溶質(溶けている物質)を挙げます。
(酸:水溶時にH+イオンを出し自身は陰イオンになるもの / 塩基:水溶時にOHイオンを出し自身は陽イオンになるもの)

表1:有機系電解液の成分例
  主として使われる成分
ベースとなる液体(溶媒) プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などのカーボネート系、アセトニトリル(AN)/ジメチルホルムアミド/スルフォラン(SFL)/ニトロメタン/γブチルラクトン(GBL)/エチレングリコールなど
溶けている
物質(溶質)
アニオン
(酸:陰イオン)
カルボン酸/リン酸/モノまたはジアルキルリン酸エステル/フタル酸/マレイン酸/四フッ化ホウ酸イオン(BF4-)/ヘキサフルオロリン酸塩(PF6-)/過塩素酸イオン(ClO4-**/スルホン酸など
カチオン
(塩基:陽イオン)
第4級アンモニウム塩***第4級ホスホニウム塩/ピリジニウム塩/環状アミジニウム塩など
アニオン(An-ion) :Anode(陽極)に向かうイオン
カチオン(Cat-ion):Cathode(陰極)に向かうイオン
注)電解液の注意点としては水分を含まないようにする点があります。この観点から活性炭電極の真空乾燥やセル組立の際の湿気管理は重要です。
*:アセトニトリルは燃焼すると有毒ガスを発生する懸念があります
**:ClO4-新しい環境汚染物質として検討中
***:テトラエチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなど
その他:酸だけでは電極箔が侵されますので電解液のpHを調整して酸化膜を安定化させるために塩基(カチオン)を混入します。4級アンモニウム塩系もアミジン塩系も電解質濃度を高くすることで電解液の抵抗を下げ、コンデンサーを低抵抗化できますが低温で溶質が析出しやすくなります。
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.