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電気二重層キャパシター(4) ―― 主な特性と使用上の注意点、寿命計算中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(55)(2/3 ページ)

» 2021年06月28日 10時00分 公開

電気二重層キャパシター使用上の注意

 電気二重層キャパシターを使う上で市場不良を未然に防止するために設計者が配慮しなければならない事項をまとめてみました。アルミ電解キャパシター類としての注意事項と併せて設計時に配慮してください。

1. 電源部の平滑用には使用しない

 電気二重層キャパシターは内部抵抗が大きいので電源部の平滑用に使用しますと発熱が高くなり寿命が短くなったり、電解液の液漏れや開弁動作が起きる場合があります。
(湿式アルミ電解の場合の陰極化成と異なりジュール損です)


2. 充放電回路での使用

 急激な充放電を頻繁に繰り返すような回路では発熱が高くなる場合がありますので、表面温度を確認して下さい。必要に応じて低RAC品、あるいは低RDC品を選択してください。
 基本的には電気二重層キャパシターは正負同じ電極構造をしていますので内部逆電圧に対しては問題ありませんがエージングなどで極性を付けていますので逆電圧を印加すると予想外の不具合が起こる可能性があります。


3. 使用温度について

 定格温度を超えて使用した場合、電解液の蒸気圧の上昇や電気化学反応により、内圧が上昇し液漏れや破損等が起きる場合があります。


4. バックアップ時の電気二重層キャパシターの電圧降下について

 瞬間的な大電流や放電電流が大きい場合、直流内部抵抗によって電圧降下が大きくなり、動作しなくなる場合があります。


5. はんだ付け

 EDLCは熱の影響を受けます。対応はんだ付け工法やプリヒートも含めて部品本体温度が指定値を超えないように管理して下さい。


6. 漏れ電流の実測は測定困難

 電圧印加後30分〜1時間でも回路電流として数十マイクロアンペアの電流が確認できます。これは充電電流がバラツキのある充電回路の電流を合計したものに起因します。時定数のバラツキによって実用充電電圧には短時間で到達しますが、100%充電は時間単位になります。このことから真の漏れ電流(数マイクロアンペア)を仕様書で規定することは困難です。


7. 放電特性

 放電回路の時定数が大小両極端の場合は自己放電電流や内部抵抗による初期の電圧降下を考慮に入れる必要があります。


8. EDLCを直列接続する場合

 EDLCを直列接続する場合、漏れ電流のアンバランスに起因する電圧不平衡により一部のセルに過電圧がかかる恐れがあります。直列接続使用時にはメーカー指定の計算式により電圧バランス用の抵抗を付加してください。


9. 巻回型の場合

 巻回型は湿式アルミ電解コンデンサーの注意事項も参考にしてください。
(例)キャパシター本体を基板に密着させない/部品本体の直下にパターンを設けない/缶の電位は電解液の電位/防爆弁の位置関係など。

放電時間の計算方法

①定電流放電の場合
  t={C×(V0−V1)}/I         …1式

②定電力負荷放電の場合
  t=0.5×C×(V02−V12)/P      …2式

③定抵抗(負荷)放電の場合
  t=−C×R×ln(V1/V0)       …3式

④公称電池容量に換算する場合
  Ah=0.5×C×V02/(3600×Vb)    …4式

   T :放電時間(sec.)
   V0 :充電電圧(V)
   I  :放電(負荷)電流(A)
   C :コンデンサー容量(F)
   V1 :放電後電圧(V)
   R :放電抵抗(負荷)(Ω)
   P :出力(W)
   Vb :公称電池電圧(V)

※大電流放電の場合、コンデンサーの内部抵抗(直流抵抗)と放電電流の積により放電初期に発生するIRドロップを考慮する必要があります。また微少電流放電の場合、コンデンサーの漏れ電流(自己放電)を考慮する必要があります(5式)。

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