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» 2021年06月28日 10時00分 公開

電気二重層キャパシター(4) ―― 主な特性と使用上の注意点、寿命計算中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(55)(3/3 ページ)

[加藤博二(Sifoen),EDN Japan]
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寿命計算

 EDLCに充電すると正極・陰極の電気二重層の電位分担は正極側の電位分担が大きくなる現象があり電解液の分解電圧を超えると顕著になります。このことにより電解液が電気分解され活性炭の端面に堆積物として堆積したり、活性炭の細孔からガスや水分が放出されたり、活性炭の構造が破壊される現象を生じます。
 また同時に電解液の過電圧により正極側活性炭内部の水分が電解液中に放出され水分濃度が上昇します。特に有機系電解液は水分によって特性が劣化します。このようにしてEDLCの容量は減少していくと考えられます。

 EDLCは電解液を使用しますので電解液の寿命に基づく有限寿命部品ですが、容量を直接測定することが困難なので容量低減率などの値で規定することは困難です。基本的にはセットでの使われ方(バックアップ時間など)の減少の様子から寿命を規定します。
 主要因が電解液の減少だから10℃2倍則を適用できるとしているメーカーは数多くあり、ここでは一例としてバックアップ寿命の計算例を示します。

基本寿命   :70℃1000時間保証品
セット使用条件:30℃で使用
判定条件   :容量減少率Δ30%、内部抵抗RXの増加率+400% どちらか早い方
10℃2倍則   :ΔT/10=4 1000Hr×24=16000Hr=1.83年

実際のバックアップ時間の変化から求めた予測寿命
実力寿命データ:1.5(F)品70℃2000Hrで容量C:Δ32%、ESR:120Ωです。

バックアップ時間の計算例
V0=5.5V、V1=2.0V

C×ΔV=I×Tの関係から

5式

 この値は70℃、2000Hr後の値ですから、30℃環境では3.65年後に79Hrのバックアップが可能であることに相当します。
 基本的には湿式アルミ電解コンデンサーと同様に、寿命による特性劣化を見込んで初期の設計値に余裕を持たせ、特性劣化後でも規定時間(特性)を満たすように設計をする必要があります。また、必要に応じてプリント基板の表面抵抗の影響も考慮してください。

EDLCのディレーティング項目

 EDLCの特性劣化を抑え、寿命を延ばす条件として次のような項目が考えられます。

①使用温度(周囲温度)を下げる
 先に述べたように一般的にEDLCの特性変化は10℃2倍則が成り立ちます。温度を10℃下げることによって期待寿命は2倍になります。レイアウトや換気の配慮でEDLCの周囲温度を低減してください。
 また、周囲温度は年間平均温度だけではなく季節的な変動を考慮した最高使用温度も遵守してください。

②85℃保証品を使用する
 同一温度で使用した場合期待寿命は70℃保証品の約2.8倍になります。

③EDLCへの印加電圧(充電電圧)を下げる
 EDLCの特性変化は印加電圧の影響を受けるようです。電圧加速式は確定した式がありませんので各社からの保証値を参考にしてください、一例では、
 5.5V品を5.0Vで使用した場合:約1.3倍
 5.5V品を4.0Vで使用した場合:約3.0倍
程度が期待できます。

④間欠的な充放電を行い、充電時間を短くする
 EDLCの特性変化は充放電サイクル数ではなく、電圧が印加されている時間に影響されます。そのため常時充電状態で使用するより必要時に充電し放電するように設計を行うと、充電されていない時間分だけ特性変化を抑えることができます。

図:EDLCの寿命特性の一例
出典:パナソニック AIS社キャパシタ事業部 Technical Guide of Electric Double Layer Capacitors TGGC-J7.7

【参考規格】
IEC62391-1 電気・電子機器に使用される固定電気二重層キャパシタ - Part 1: 一般仕様
IEC62576 :2018 ハイブリッド電気自動車に使用される電気二重層キャパシタ-電気的特性の試験方法
JEITA RCR2370C 電気二重層コンデンサ(EDLC)の安全アプリケーションガイド
JIS C 5160-1:2018 電気及び電子機器用固定電気二重層コンデンサ− 第1部:品目別通則


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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