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「O-RAN」の相互運用性がもたらすテストの課題キーサイトが解説(2/2 ページ)

» 2021年07月26日 11時00分 公開
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O-DUテストの課題

 全てのO-RANコンポーネントに相互運用性テストが必要ですが、この観点からDUには大きな課題があります。まず、管理プレーン(M-plane)の実装が引き起こす問題が挙げられます。DUはM-planeの実装時に特定のパラメーターを予期し、条件が満たされないと動作を停止するためです。無線ユニットの管理に役立つYANGモデルには、6000を超えるパラメーターがありますが、そのうち必須なのは3%以下であり、ネットワークベンダーもカスタムプロトコルを実装しているため、これは重大な課題になり得ます。

 ブリングアップシーケンス(起動シーケンス)のO-RAN仕様には、大きな柔軟性があります。RUの動作が予想と異なる場合、一部のDUは取得プロセスをスキップするか動作を停止します。

 DUユニットは、特定のプロトコルオプションがない場合にも、動作を停止できます。例えば、一部のDUはダイナミックホスト構成プロトコル(DHCP)オプションが予期したものと正確に一致しない場合に動作を停止します。

 O-RAN仕様には、コントロールプレーン(C-plane)やユーザープレーン(U-plane)の多くの実装が含まれていて、これらのプレーンのマッピングは、使用するRUのタイプによって異なります。DUは、特定のRUタイプ、ビームフォーミング、モデルおよび圧縮率で動作するよう設計されています。DUは通常、非プリコーディング無線ユニットである「カテゴリA」のO-RU、または変調圧縮をサポートするプリコーディングユニットである「カテゴリB」のO-RUのいずれかをサポートしています。また、通常は1つのビームフォーミングモデル(事前定義、重量ベース、属性またはチャネルなど)のみをサポートし、各モデルには特定の方法とオプションがあります。

 こうしたオプションは、イノベーションのためには素晴らしいものですが、テストの観点から見れば、プロトコル実装の多様性は大きな課題となるのも事実です。

 さらに、フロントホールのタイミング検証も重要です。O-RUは、TDD(時分割複信)、MIMO、マルチRUキャリアアグリゲーションなどの機能で、DUとの厳密な同期が必要になります。

 マルチユーザーMIMO(MU-MIMO)では、O-DUベンダーとの密接な協力体制が不可欠です。O-RAN Allianceでは、O-RANインタフェース全体で通信を標準化していますが、SRS(Sounding Reference Signal)とビームウェイトの使用はベンダーごとに異なります。

O-RANテストソリューションとユースケース

 これらの課題を解決するためには、さまざまなベンダーのRUをカバーできる幅広い機能を備えたテストソリューションが必要となります。M-planeが柔軟性を備えていることから、異なるRUからの複数の動作のシミュレーションが必要です。テストソリューションでは、フロントホールの同期を検証できるように、「O-RAN.WG4.CUS.0-v05.00」仕様に従い、カテゴリAとB両方のO-RUと同期プレーン(S-plane)機能もサポートする必要があります。特定の実装に合わせるためには、ビームフォーミングとMU-MIMOのサポートが必要となります。

 図2に、実際のEPC(Evolved Packet Core)ネットワークを使った、5G NSA(Non-Stand Alone) O-DUテストの構成例を示します。

図2:RUシミュレーターとトラフィックジェネレーターで、5G NSA O-DUテストが行える

 この構成では、RUシミュレーターはフロントホールeCPRI(Evolved CPRI)インタフェースを介してO-DUに接続され、X2インタフェース上のLTEアンカーを使用してO-CUに接続されています。さらに、S1-APインタフェースでコアネットワークに接続されています。トラフィックジェネレータは、ネットワークの負荷を提供します。

 5G SA(Stand Alone)のテストでは、RUシミュレーターはeNBをエミュレートする必要がないため、構成ははるかにシンプルになります(図3)。RUシミュレーターを、eCPRIインタフェースでO-DUに接続するだけです。

図3:5G SAのテストでは、よりシンプルな構成になる

 ただし、完全なO-DUテストにはラップアラウンドテストが必要です。図4に、5G NSAコンテキストでEPCをシミュレートしたO-DUラップアラウンドテストの構成例を示します。

図4:RUシミュレーターをコアネットワークシミュレーターに接続し、5G NSA環境でO-DUラップアラウンドテストを行う

 RUシミュレーターは、eCPRIインタフェースを介してO-DUに、X2インタフェース上のLTEアンカーを介してO-CUに接続し、S1-APインタフェースを使用してコアネットワークシミュレーターに接続します。

 図5は、シミュレートされた5Gコアネットワークを使用した、5G SAのセットアップを示しています。図2のように、RUシミュレーターはeCPRIインタフェースでO-DUに接続しますが、シミュレーターは、5Gコアネットワークをシミュレートします。

図5:RUシミュレーターとコアネットワークシミュレーターで、5G SA環境でのO-DUテストを行う


 O-RANの動きは勢いを増しています。O-RANでは、異なるベンダーから提供されたコンポーネントがシームレスに連携することが最優先事項になっています。相互運用性テストは、特にDUの場合、プロトコルの実装における柔軟性が高く、RUとの緊密な同期が必要なため、困難な場合もあります。複数のベンダーのRUをカバーする幅広い機能を提供するテストソリューションは、O-DUの相互運用性テストを正しく行うために、重要になるのです。

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