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スペクトラムアナライザーの概要と種類スペクトラムアナライザーの基礎知識(1)(1/5 ページ)

今回は、無線通信機などの高周波を取り扱う機器の開発、生産、保守の現場では必須の測定器、スペクトラムアナライザーについて解説を行う。

» 2021年08月17日 10時00分 公開
[TechEyesOnline]
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 本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。

はじめに

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 無線通信機などの高周波を取り扱う機器の開発、生産、保守の現場では周波数軸で測定することが要求されるためスペクトラムアナライザーは必須の測定器となっている。その他にも発振器や周波数フィルターなどの特性評価や、高周波ノイズ測定を行う際もスペクトラムアナライザーが使われる。

 高周波信号を時間軸で観測するのはオシロスコープであり、周波数軸で観測するのはスペクトラムアナライザーである。それぞれの関係は図1に示すようになっている。オシロスコープで取り込んだ信号をFFT演算によって周波数軸に変換することができるが、スペクトラムアナライザーに表示される周波数軸の観測結果には位相情報がないため時間軸表示に変換することはできない。

図1:オシロスコープとスペクトラムアナライザーの違い

 スペクトラムアナライザーは測定器としてではなく、電波探査を行うための装置として第二次大戦中に軍事目的で使われた。第二次大戦後にこの技術が民間でも使われるようになり、アマチュア無線などの分野でも電波を発している無線局を探すために使われた。下記の写真の白い受信機の上に載っている黒い箱(商品名:SP-44 Skyrider)の装置がスペクトラムアナライザーの原型となった電波探査装置である。この当時の電波探査装置の詳細は、米国のオハイオ大学のHPに詳しく書かれている。

図2:第二次大戦後にアマチュア無線家が使った電波探査装置 出典:米国のRadio News Magazine(1947年3月号)の表紙

 1960年代中頃になると電波探査装置は測定器として進化し、現在のスペクトラムアナライザーの原点となる851A/8551AがHewlett-Packardから発売された。

 電波はさまざまな通信用途に使われており、現在は周波数の空きが少なくなっている。正しく電波を利用しないと通信障害が生じるため、スペクトラムアナライザーによる電波環境の監視の重要性は高まっている。

 また、新しい通信方式の携帯電話やIoT(モノのインターネット)で使われる新しいさまざまな通信方式が登場してきているので、製品開発に使われるスペクトラムアナライザーの重要性は高まっている。

図3:周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴 出典:周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴(総務省 電波利用HP)

 この記事の執筆にあたっては、長年に亘ってスペクトラムアナライザーの開発を行ってきたアンリツからの協力を得た。

スペクトラムアナライザーの概要と主な利用分野

高周波周波数分析器の方式による分類

 高周波の信号を周波数軸で観測する測定器は図4に示すようにいくつか存在する。周波数を掃引しながら信号の大きさを観測する掃引式アナライザーと、現象の同時性を重視して信号を観測するリアルタイムアナライザーに大別される。周波数分析器には分類されないが、手動で周波数を決めて信号の大きさを測定する選択レベル計が存在する。

図4:さまざまな高周波周波数分析装置

スペクトラムアナライザーの主な利用分野

 スペクトラムアナライザーは表1に示すような用途で使われる。多くは無線通信やテレビ/ラジオ放送に関わる分野だが、ノイズの観測や電子回路の評価といった分野でも使われるため、多くの技術者がスペクトラムアナライザーを使っている。

表1:スペクトラムアナライザーの主な用途と利用者
無線通信運用事業者 通信設備保守事業者 通信機器製造事業者 無線用部品製造事業者 電子機器製造事業者 規格適合認証機関 電波監視行政機関
無線設備の設置/維持          
違法な無線機の探査
無線機器の設計/生産  
ノイズの測定  
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