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共振子(1) ―― 水晶デバイスとは中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(57)(2/2 ページ)

» 2021年08月25日 11時00分 公開
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水晶振動子の構造

 リード型水晶振動子は図4の構造図に示す次のような部品から成っています。

図4 リード型振動子の構造図[1]
  • 水晶チップは導電性の洋白(銅、亜鉛、ニッケルの合金、ニッケル黄銅とも)やステンレスなどでできた金属サポート(バネ)のスリットに保持されます。
  • この金属バネは薄く(0.1mm以下)てもバネ性があり、バネから水晶チップに加わる熱応力やリード線からの機械的ストレスを緩和、遮断するようになっています。
  • 水晶チップとバネはエポキシやポリイミド系の導電性接着剤で固定されており、固定とともに電極のコンタクト部とバネ間の導通を取ります。
  • 金属ベースは鉄や熱膨張率が常温付近で低いコバール(鉄、ニッケル、コバルト合金)などでできており、ガラス・ハーメチック・シール材によってリード線引出し部の機密性を確保しています。
  • バネとリード線とは抵抗溶接によって接合されています。
  • ケースはニッケルシルバーなどでできており、金属ベースとは溶接によって封止されています。この容器内は真空または窒素ガスが充填(じゅうてん)されていて気密性は一定値以下に管理されています。

水晶振動子の振動モード

 現在、多く使われている2つのカットモードの概略は表2のようになります。時計用の+1°Xカットは図2に示すように、X軸を中心にXY平面を反時計方向へ1°回転させた面から切り出したものです。0〜2°偏角のカットが主に用いられます。

表2:主な振動モード

[4]特許4219737
[5]日本時計学会誌 No150(1994) 時計用振動子の現状と展望から筆者編集

 次回は水晶共振子を発振回路に用いた場合の注意点などについて説明をしたいと思います。


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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