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絶縁シートの熱履歴が物語る、電源の不良原因Wired, Weird(2/3 ページ)

DC12V出力のスイッチング電源の修理依頼があった。症状には『DC12V電源が安定しない。電圧が降下する。内部に焼けた痕跡がある』と記載されていた。非常に珍しい部品が焼けたために、不良部品がすぐに特定でき、電源を修理することができた。今回は、電源の絶縁シートの熱履歴で不良箇所を特定できた修理例を紹介する。

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チョークコイルが高熱になり、絶縁シートが変色

 図2の右下の絶縁シートが黒く変色しているが、この上にはAC電源のチョークコイルがある。つまりチョークコイルが高熱になって絶縁シートが変色していた。正常な電源ではAC電源のチョークコイルの温度はあまり高くならない。それはチョークコイルに流れる電流は整流用の電解コンデンサーを充電する低周波の電流だからだ。一般的なスイッチング電源の動作中の入力電圧と電流波形を図3に示す。


図3:入力電圧/電流波形のイメージ

 図3の太い線が電流波形、細い線が電圧波形である。チョークコイルには電源の周波数の倍周期の電流が流れる。その電流の周波数は100〜120Hzと低周波でありチョークコイルはあまり発熱しない。電源投入時には電解コンデンサーに電荷がないため大きな突入電流が流れる。しかし、通常時は電解コンデンサーには充電された電圧があり、チョークコイルに流れる電流は電解コンデンサーから放電されたDC出力の電力に相当する電流だけであり、大きな電流は流れない。

チョークコイルに高周波が流れたから

 図2の絶縁シートの変色でチョークコイルが過熱していることが分かる。過熱するということは、チョークコイルに流れた電流が図3のような低周波の電流ではなく、もっと高周波の電流が流れたということになる。スイッチング電源で高周波といえばトランスのスイッチング周波数だ。もし一次側の電解コンデンサーの容量がゼロに近くなると10k〜100kHz程度のスイッチング周波数の高周波電流がチョークコイルに流れる。チョークコイルのインピーダンスは周波数に比例して大きくなり、抵抗が大きくなってチョークコイルが加熱されたと推定される。この推定が正しいかどうかを確認するため一次整流のコンデンサーを外し、その容量を測定してみた。図4に示す。


図4:一次整流のコンデンサーの容量を測定すると「12.82nF」しかなかった

 実装されていた電解コンデンサーには「400V 100μF」と表示されていたが、単品で測定したら1μF未満の12.82nFでほとんど容量がなくなっていた。これで不具合の原因を確定できた。

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